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住空間PJ 平井副主査(4/4)

2011.03.20掲載

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ここからは、以上のような活動を通じて得た、モチベーション×環境・機会が大事だというUDプラスの仮説の検証を、早稲田大学・渡辺仁史先生の研究室との共同研究というかたちで進めてきた実証実験についてご紹介させていただきます。
実験の目的は、特別な施設や建築といった、特殊な条件下ではなく、一般的な住空間での日常生活の場面において、空間や仕掛けによる、モチベーションの心理効果や、その変化を実験的に明らかにすることでした。

実験は、2010年3月に、新宿にある積水ハウス様の展示場にて、20~50代の男女16名で実施しました。
実験方法は、被験者に実験行動である「階段の昇降」を5回行ってもらいます。
5回の実験行動を行う前後、また実験行動毎にアンケートに答えてもらい、被験者の内観をはかりました。そして、実験行動に対するモチベーションが、仕掛けの有無によって異なることを明らかにするため、実験空間の空間性の違いや、モチベーションを高めるための仕掛けの有無による実験パターンを用意して実験を実施しました。こちらが実験パターンになります。

実験パターン

空間の仕掛けとしては「開放的空間」であるか「閉鎖的空間」であるかどうか、の違いを用意しました。モチベーションに対する仕掛けとしては、階段を登って金魚に餌をやる、洗濯物を干す、窓を開ける、電灯を点ける、植栽に水をやる、といった仕掛けを用意しました。

実験行動に対する心理評価についての実験結果です。これらのグラフは階段の昇降行動の印象に関して、行動評価アンケートを用い、5段階で評価してもらったものです。

結果1
結果1詳細

具体的には、実験行動の日常性、複雑さ、楽しさ、継続性、達成感、精神的苦痛の6要素を問う質問をし、「楽しさ」の場合ですと「この行動はあなたにとって楽しいと感じられましたか? 」という質問に対し、楽しくないを1、非常に楽しいを5というふうに、5段階で評価し、グラフの一番外側が5ということで、グラフが外側に膨れるほど、仕掛けの効果が高いということを示すグラフになっています。
ということで各グラフを見ていただくと、開放的な空間、閉鎖的な空間のどちらの場合でも仕掛けがある場合に、グラフの、特に「楽しさ」や「達成感」を感じる部分での評価が大きくなっており、UDプラスの効果がみられたということになります。つまり、モチベーションが高まる仕掛けがあれば、デライトやアクティビティが増加し、その結果アビリティが増大する可能性があることを示しています。

こちらも同じく、実験行動に対する心理評価の結果です。

結果2

概ね、閉鎖的な空間のほうが開放的な空間よりもUDプラスの仕掛けの効果が高くなるという結果が出ました。このことは、空間的魅力が低い空間のほうがモチベーションが高まる仕掛けの効果が高くなる可能性があることを示しています。

次に示すのは、POMS(Profile of Mood States)という、質問紙法を用いて実験行動前後の気分を評価したものです。

結果3

ここでは、「開放的」な空間において仕掛けがある場合、身体的な負荷の条件は同じにもかかわらず、他の条件とくらべて「疲労」を感じにくいという結果が出ました。このことは、モチベーションが高まる仕掛けがあることで、身体的な負荷を苦にすることなく、行動できるようになる可能性があることを示しています。

実験結果をまとめました。

  1. 「開放的」「閉鎖的」空間ともに、仕掛けがある場合に明確に「仕掛け」の効果がみられる。
  2. 「仕掛け」の効果は、概ね「閉鎖的」空間のほうが「開放的」空間よりも効果が高くでる。
  3. 開放的空間で仕掛けがある場合、他の条件とくらべて「疲労度」が増えにくい。

といった結果から、私達は今回のUDプラスの仮説検証実験で、特別な施設や建築物といった特殊解でなく、一般的な住環境においても空間や仕掛けの作用で、行動するための達成感や楽しさが増大する効果が確認できた、と考えています。

今回の実証実験では行動を誘発する仕掛けがある場合、そして開放的な空間といった組み合わせで私達の考えるUDプラス的な効果があるということが実証できました。これにより、冒頭でも述べた、モチベーションに環境・機会をかけあわせることでUDプラス的な効用が得られるということ、すなわちデライトや活動量が増加することが、アビリティの増加をもたらす可能性があるという、私達の仮説が明らかになったと考えています。

考察

今後、私たちは『UDプラスとは、モチベーション に 環境・機会(キッカケ)をかけあわせたもの』であるという仮説の検証をさらに深めてまいります。さらには、UDプラスの住まいの評価軸やガイドラインなど 「客観的な指標」 を見つけ出し、使うことで「鍛えることができる」、「楽しい」というUDの新たな視点を様々な場面で紹介・発信するとともに、次年度以降は住空間以外の分野との連携もはかっていきたいと考えています。
具体的にはほかの研究と一緒に連携しながら、取り組めるようなUDプラス的なテーマなどを探っているところです。ぜひとも興味を持たれた方は、住空間プロジェクトメンバーにお声かけいただければと思います。発表は以上です。 ありがとうございました。


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