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IAUD国際デザイン賞2024 応募要項
2024.02.29
IAUD国際デザイン賞2023表彰式/プレゼンテーション開催報告
2024.02.20
2022.01.28掲載
IAUD国際デザイン賞は、ユニヴァーサルデザインに対する唯一の国際的なデザイン賞で、2010年に初めて開催されて以降、長年にわたってその認知度を高めてきました。今年は、世界中が様々な課題に直面し続けている状況の中で、これまで以上にこの賞がいかに重要か実感された年でした。それは、この賞が実生活のソリューションに焦点を当てており、将来に希望を与えるからです。ユニヴァーサルデザインは、平等、多様性、包括性の中心であり、持続可能性の3つの柱である社会、経済、環境への全体的なアプローチの基本の核の部分です。昨年は、私たちにとって困難な年でした。今現在も終りの見えないパンデミックに直面し、気候変動による複数の大災害と危機に直面しました。そして、障害、人種、年齢、性別、文化的背景、および宗教の違いによる政治的混乱と差別および排除も存在しています。
最も弱い立場で疎外された人々が苦しむようなこの状況下で差し迫った課題に取り組むには、ユニヴァーサルデザインとインクルーシブの実践が不可欠です。
毎年、この賞の受賞作品はこれらの課題を解決するための不可欠なツールとして、製品、サービス、および環境の開発に対する持続可能で包括的なデザインアプローチの価値を示してくれています。多様な人々と連携して行う持続可能なデザインアプローチは、今まで隠れていたニーズを明らかにし、環境問題に取り組み、政府、コミュニティ、自然、ビジネス、そして個人にも利益をもたらす実行可能な解決策をもたらすことができると示しています。今年は、ジェンダーやアイデンティティ、排除されたグループ、官・民・地域のコラボレーションなどに取り組むユニヴァーサルデザイン思考と実践の新しく独創的な応募作品が多数ありました。
日本は長い間、ユニヴァーサルデザインの分野での先駆者であり、日本の文化的背景と哲学の原則に基づいたコミュニティ全体のアプローチを開発してきました。
日本では、行政や地方自治体のイニシアチブにより民間企業において特に産業技術の面でユニヴァーサルデザインの考えが確立されています。IAUD国際デザイン賞自体が、世界でも有数の影響力のある家庭用品メーカーやテクノロジー企業との共同イニシアチブの結果であるという事実は私にとって大きな感動であり、みなさんにとってもそうであると信じています。ユニヴァーサルデザインは持続可能なイノベーションの推進力であり、ビジネス戦略の中心的な部分です。様々な分野で応用できる成功へのレシピであり、これまでの受賞者も今回の受賞者もそのいい例です。
今年の二つの大賞受賞作品は、ユニヴァーサルデザインのスコープと多様性を示しています。これはすべての分野に応用できます。三菱電機株式会社と兼松コミュニケーションズ株式会社による直感的なコミュニケーションアプリ「しゃべり描き®アプリ」は、パンデミック時に理想的な物理的な距離を確保しながら包括的コミュニケーションを可能にする、徹底的なユーザー研究に基づいて開発されました。これは、ユーザーとの連携がいかに重要であるかを示す好例です。もうひとつの大賞受賞作品であるノルウェーのフィレスダル・コムーンによるハマレンアクティビティパークの場合にも同様のことが言えます。開発にすべての関係者、子供、ティーンエイジャー、高齢者など、地域コミュニティの方が携わり、ありのままの自然風景の中で、身体活動と幸福感を高めることができるみんなのための素晴らしい自然公園ができました。
今年、新しく二つのカテゴリーを創設しました。「未来への提案」と「学生デザインチャレンジ」です。「未来の提案」は、包括的なデザインプロセスに基づいて考えられているが、まだ実行されていないプロジェクトや作品を応募することができます。「学生デザインチャレンジ」は、学生が実際のプロジェクトでユーザーに関わることにより人(ユーザー)を中心とした研究と包括的なデザインプロセスを採用することを奨励しています。こうして実践し学ぶことは、将来、より経験豊富なユニヴァーサルデザインの実践者の育成につながると信じています。
これから応募するかもしれない方々にお伝えしたことがあります。あなたのすばらしいプロジェクトと成果を世界に紹介できるこの絶好の機会を逃さないでください。社会のさまざまな分野への持続可能な人(ユーザー)中心の開発の普及を加速するだけではなく、自分自身に名誉と認知をもたらし、世界中の仲間や同僚にインスピレーションを与え、すべての年齢の人やさまざまな能力の人々に利益を与えることもできます。世界はこれまで以上につながっています。IAUD国際デザイン賞を通じてお互いに情報や知識を共有し学ぶことで、国境を越えて能力と知識を一緒に構築し、より包摂的で公平なグローバル社会に導くことができます。
IAUD国際デザイン賞2021 大賞(2件)
IAUD国際デザイン賞2021 金賞(9件)
IAUD国際デザイン賞2021 銀賞(18件)
IAUD国際デザイン賞2021 銅賞(10件)
IAUD国際デザイン賞2021 学生デザインチャレンジ優秀賞(1件)
IAUD国際デザイン賞2021 学生デザインチャレンジ賞(7件)
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「ユニヴァーサルデザイン(UD)の理念を掲げ、その成果として優れた活動が提案、または遂行されていること」を主たる選考理念とし、理念実践とその成果である活動行為の両面で審査し、総合的に評価しました。なお、応募要項に記載されている審査基準および本質的目標も重視されました。
審査委員長: | オンニ・エイクハウグ(EIDDデザインフォーオール・ヨーロッパ理事・前会長) |
副委員長: | 益田文和(株式会社オープンハウス代表取締役/名古屋学芸大学客員教授) |
審査顧問: | ロジャー・コールマン(英国王立芸術大学院名誉教授) |
審査委員: | フランセスク・アラガイ(スペイン デザインフォーオール財団代表) |
同: | トーマス・バーデ(ドイツ IUDユニヴァーサルデザイン研究所 CEO) |
同: | ヴァレリー・フレッチャー(米国人間中心デザイン研究所所長) |
同: | ラーマ・ギーラオ(英国王立芸術大学院ヘレンハムリンセンター所長) |
同: | アンティカ・サワスリ (タイ モンクット王工科大学建築学部長・教授) |
同: | 川原啓嗣(名古屋学芸大学大学院教授/一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会専務理事) |
UDの基本理念である包摂性(inclusivity)は「誰一人取り残さない」というSDGsの原則と一致します。つまり、UDとSDGsとは連動していると言えます。そのことを、より分かりやすくするために各受賞作品と関係の深いSDGsの目標を表示しています。
「しゃべり描き®アプリ」は、聴覚障害者や外国人訪問者との言語の壁を越えたスムーズなコミュニケーションを可能にするために2019年に最初にリリースされました。人が話した言葉は、その人の指でなぞられた道筋に沿って画面に表示されます。その後、機能はより改善され、複数の端末間で画面を共有しながら、また同時に物理的な距離を保ちながらコミュニケーションができるようになりました。新型コロナウィルス感染拡大の影響で、人々はマスク着用がエチケットとなり、聴覚障害者は話している人の唇の動きや表情を見ることができなくなりました。このことで聴覚障害者は、話している人が何を言っているのか理解しづらくなってしまいました。また、会話の際に距離を保たなくてはいけないとう懸念が高まり、安心・安全な距離を置いた会話方法へのニーズが高まりました。
このアプリケーションはパンデミックの間、三菱電機から期間限定で政府官公庁、教育機関、高齢施設や聴覚障害のある方などが利用する施設などに無償で提供されました。
このアプリケーションは物理的な距離を保てるよう最新のテクノロジーを活用し、簡単で包摂的なコミュニケーションを可能にする、とても便利で実用的なアプリケーションです。直感的なインターフェースと画面共有機能によって、現在のパンデミックの状況化での教育、政府、行政におけるコミュニケーションの課題に対しての解決手段としてだけではなく、幅広い可能性を備えた印象的なツールとなっています。異文化コミュニケーション機能は国際的という意味で、とくに日本への訪問者にとってとても役に立ちます。
新しいバージョンは、新たな課題やニーズを見出すために、さまざまなユーザーグループとの協議を重ね、包摂的なデザインプロセスに基づいてつくられています。「しゃべり描き®アプリ」は、言語の壁や聴覚能力に関係なく、人々の間のリアルタイムのコミュニケーションを促進する重要なツールです。
ハマレン アクティビティ パークは、すばらしい景観にめぐまれたフィレダル・コムーンの中心部のアクセスしやすいところにあります。この公園は、健康と幸せのための自然の中での活動を推奨しています。周辺住民すべて、そしてビジターにとっても憩いの場となっています。
この公園開発におけるキーワードは、地域との連携です。高齢者、子を持つ親世代、幼児、学校をはじめ、若者グループやスポーツ、リクリエーションの団体、地域の工事業者や企業などを巻き込んだ共創のプロセスを経て完成しました。その結果、以前までは行くことができなかったエリアにユニヴァーサルデザインの歩道ができました。他にもさまざまな特徴のある場所があります。座ってアウトドアクッキングできる場所、BMX用の小道、小さなスリーピングキャビンなどがあります。ユニヴァーサルデザインは、計画戦略の段階から重要な要素です。それは、すべての人がアクセスできる壮大な樹上散歩道を含む将来の開発についても引き続きそうあり続けるでしょう。
ハマレン アクティビティ パークは、最初から共創というプロセスを踏み、地域コミュニティや多様なユーザーグループ、利害関係者と連携して開発を進めた優れた例です。この公園は、身体的にも精神的にも自然がいかに大切か、そして、そのありのままの荒々しい自然の景観を全ての人にアクセス可能にすることの重要性を教えてくれます。その結果、子供たち、10代の若者、高齢者、能力が限られている人々などの、さまざまなニーズが満たされ、それぞれの人たちに幅広い活動を提供する包摂的な公園が生まれました。地元のコミュニティが公園を所有し、積極的に関わることでより魅力的な観光スポットになっています。
ヴィズ・アビリティは、視覚に基づく体験や認識を基本とする世界で、訪問者に違った見方をするように促すことを目的とした展示会です。デザイナー、大学の研究者、地域の障害者専門家の知識を活用して、多感覚の包摂的な体験を促進する革新的な技術を通じて、ユニヴァーサルデザインの境界を押し広げます。目的は、オーストラリア全土および世界中の国立、州立、大学、地域の博物館やギャラリーに採用されるような多感覚な体験の調査を通して革新的なユニヴァーサルデザインの実践モデルを作成することでした。
オーストラリアにおける機能障害の人々と健常者の人々との相互理解を深め、他の芸術機関にインスピレーションを与える可能性のある、魅力的で感動的なプロジェクトだと高く評価します。この多感覚博物館は、力強い研究と共創デザインに基づき、従来の方法を越え、包摂的な手段で視覚芸術をどのように体験させるかについて挑戦し、疑問を投げかけています。テクノロジーと触覚ソリューションおよび現場での経験を組み合わせることはとても効果的ですが、弱視を理解するためのシミュレーションに重きを置くのは少々ありきたりになってきているとの指摘もありました。
このカードリーダーは、個別アクセスカードと顔認証により、シンプルで迅速かつ確実な身分証明(個人認証)を可能にします。厚生労働省で採用されているAIベースの顔認証技術を採用し、1秒以内の顔認証を実現することで、医療スタッフと患者の双方にメリットを提供し、すべての人へのシンプルでスマートな医療サービスの提供をサポートします。また、確実な情報入力と非接触型コミュニケーションにより、医療スタッフの作業負担の軽減と感染リスクの低減を可能にします。
このパンデミックの時期には特に、医療の効率的なサービスがこれまで以上に必要とされています。このカードリーダーは、迅速で非接触型の個人認証を確実なものにし、ユニヴァーサルデザインの特徴を集めたすばらしい実例です。ボタンの明確なレイアウトと配置は審査員から高く評価されましたが、肌の色が濃い人の顔認証や弱視者のタッチスクリーンの使い勝手については、いくつか懸念が挙げられましたので、対策をご検討頂けるとよいでしょう。
御幣島ビルは、障害者を雇用するために建てられました。ユニヴァーサルデザインの精神のもと、すべての年齢層のどんな能力を持った従業員にとっても安心、安全で快適な職場を作ることが目標でした。インテリアは、働いている人が行動しやすいように設計されており、障害を持った従業員にとって理想的な職場となる多く機能が備えられています。この設計の重要なポイントは、建物の外周にある屋上から地面まで続く避難用スロープです。
このプロジェクトは、ユーザー参加に基づき、見事に実行されました。包摂性をメインの空間に構築する巧妙なアイデアを備えた革新的なデザインです。このアイデアは、他の設定にもうまく応用できるでしょう。開放的で光あふれる建築は、ユーザーの要望に応えていますが、従業員全てが障害をもっており、それぞれ隔離されたスペースで仕事をしているという点では、ユニヴァーサルデザイン、すべての人のためのデザインとは言えず、新たな課題が見えてきそうです。
富士通株式会社は、日常生活における環境音を収集、認識できる革新的なAIシステムを開発しました。これは、音声情報を視覚的に変換する情報端末に組み込まれ、聴覚障害者が日常生活を送ることを助け、コミュニケーションをサポートします。現時点では、認識できる音の種類は主な環境音に限られていますが、かなり高い可能性で、その範囲は広がっていきます。
環境音を収集し情報を共有することで、聴覚障害者や聴覚が弱くなった高齢者をサポートするというAIの活用方法はとても興味深いです。このすばらしいアプリケーションは、家庭で聴覚障害者の社会的環境への意識を高めてくれます。幅広い調整可能なオプションを備えており、フレキシブルに機能します。今後このシステムが実用化され、聴覚障碍者の日々の暮らしの中で評価されることを期待しています。
ソーシャルグッドロースターズは、コーヒービジネス分野で障害者に働く機会と彼らが自信と誇りを育む場を提供することを目指しています。一杯のコーヒーがお客様に喜びを与え、それが能力の異なる人々と一般の人々の接点となります。ソーシャルグッドロースターズは、福祉施設であり、焙煎所、コーヒーショップでもあります。得られた利益はコーヒー生産者を支え、またお客様と従業員にとっても社会的な関わりと喜びの場所であり、好循環を生み出しています。
ソーシャルグッドロースターズは、多様性と包摂性のある雇用をスマートにサポートするために再構築された人気のあるビジネスの説得力のあるビジネスモデルです。包摂的な職場を提供し、スキルを磨くことができるソーシャルデザインプロジェクトの成功例です。このプロジェクトによって、さまざまな能力を持つ人々の可能性についてのより深い理解を促進します。こういったプロジェクトが他にも出てくるといいと思います。ここで提供されるコーヒーは、きっとプロジェクト自体と同じくらい称賛に値するものでしょう。
東京都品川区にある 旧御殿山小学校跡地に建設されたこの施設は、日本では珍しい病院、老人介護保健施設、図書館の複合施設です。複合施設のメリットを活かし、医療・介護・在宅介護のシームレスなサービスを提供することで、総合的な都市型コミュニティケアの拠点を構築するとともに、図書館と隣接する小学校と連携して地域に貢献する施設づくりを目指しています。
官民の興味深いパートナーシッププロジェクトに複数の利害関係者を連携させた包摂的な建築設計プロセスのすばらしい成功例です。異なる世代間の相互作用に焦点をあて、そのようなリハビリテーション空間がどのようになるかを改めて考えることは非常に思慮深いことです。子供たちと高齢者という組み合わせは双方に豊かな社会的つながりを生み出すことができ、それぞれの楽しい想いとアイデアがこの建築に生命を吹き込んでいます。
芸術と文化は誰もが利用できるものでなければなりません。しかし現時点で博物館は、障害のある人々に十分な体験を提供できていません。メットマン ネアンデルタール博物館では、全体的なアプローチを図り、視覚障害のあるユーザーのニーズに合わせつつ、すべての人に楽しんで頂けるよう完全な博物館ツアーという形で、人類の400万年の歴史を遡るタイムトラベル体験を提供することで、他との違いを生み出しています。
包摂的なアプリ、多くの手で触れることできる展示、インタラクティブなゲームなどにより、訪問者は視覚障害者の視点からネアンデルタール人の歴史を体験することができます。
これは、アクセシビリティとユーザビリティの要素をまとめ、見事に実行されたアイデアであり、触覚展示の良い例です。経路の探索から展示体験において、多感覚を使う機会が豊富にあり、博物館のそれぞれの展示の楽しいデザインの明快さには説得力があります。もっと様々な訪問者を想定すると、触覚以外の多くの感覚を含めた多彩さがあれば、なお良いのではないかと感じました。
関西にある心斎橋パルコのリニューアルプランの一環として、パルコは新しくふたつのユニヴァーサルトイレエリアを作りました。3階の、お客様がリラックスできる光あふれる開放的な空間 「ヴェランダ」と5階の3つのオールジェンダー対応個室を備えた「Diverse Room」です。目的は、すべての年齢のさまざまな能力の人々に使って頂けるストレスフリーな複合トイレを目指し、現代のニーズに応える魅力的なジェンダーフリートイレをデザイン・構築することでした。
この取り組みは、今までのトイレのデザインの概念の枠を超えることによって、ジェンダー、多様性、包摂性の課題に取り組むユニヴァーサルデザインの重要な発展だと考えます。
インテリアデザインの美しさに重点を置き、たとえ複数のスペースに工夫を凝らすより、ひとつの個室にオールジェンダー機能を収めるという革新的な取り組みを行ったことを称賛します。
色の使い方にもっとコントラストをつけるとナビゲーションの役割をしてくれますし、ユーザーの意見を活用するとさらによいものになるでしょう。
タイには「障害者権利拡大法」という法律があり、企業は決められた比率で障害者を雇用しなければなりませんが、多くの企業にとってその基準を満たすことは困難な現状です。その代替策として、Thai President Foods Public Company Limited(TF)とWorkable Organization Limited(WO)は、共同で会社の従業員の中で、障害者の家族がいる従業員に対して持続可能なキャリアを促進するためのいくつかの革新的なプロジェクトを立ち上げました。これは、企業が代理人という形で要件を満たすための効果的な方法であるだけでなく、従業員にとっても、本人とその障害のある家族を障害者支援施設からの支援が必要な状態から解放できるので、直接的な利益をもたらしています。
地域の中小企業で障害者雇用の仕組みを作ろうとする興味深い試みです。他の多くの国々の障害者雇用事情と比べると、かなり状況は良好です。タイの現行の法律を遵守しながら、地域と社会のイノベーションを受け入れ、ユニヴァーサルデザインの概念を広めることができる革新的なモデルです。このプロジェクトは、発展途上国では雇用の公平性と柔軟性に基づいたUDのモデルとして機能しますが、労働統合が法律によって確立されている国では受け入れられないかもしれません。
「N-CHAT」は、コロナウイルスなどの感染症のクラスターの発生を早期発見し、対応することを目的とした、長崎県と富士通株式会社の共同開発による健康観察サービスです。N-CHATを使用すると、地方自治体や施設の管理者は、個人の健康観察データやグループの健康状態をすばやく把握できます。その結果、医療機関や地域の保健所と連携して円滑かつ効果的な行動をとることができます。
審査員は、このN-CHATを感染症の感染拡大に立ち向かう際のビックデータを効果的に管理するために役立つ実用的な自己健康管理ツールとして称賛しました。パンデミック期のクラスターの早期発見と早期対応を支援する能力を有しています。N-CHATは、現在長崎県内の組織や機関で活用されていますが、感染症対策において非常に多くの可能性を秘めており、よりパーソナライズしもっと幅広いアプリケーションを展開していける可能性があります。
フーズリングは、こぼれやすい食べ物をキッチンからテーブルへ運ぶことを容易にする、シンプルで使いやすい器具です。誰でも使えるものですが、パーキンソン病を患っている人を念頭に置いて開発されました。
学生プロジェクトの優れた提案です。パーキンソン病を患っている人々が直面している非常に現実的な問題に対応するためのものですが、すべての人のためのデザインとしても考案され開発されました。シンプルでスタイリッシュ、かつ安価に製造できる可能性があります。状況に応じてユーザーテストを行うと、より安全な使い方を実現するためのデザインの改良に役立つでしょう。
10年にわたる神経科学および行動神経学の概念に基づいたユーザーとの研究、リサーチ、実行されたプロジェクトおよび出版物は、特に子供、高齢者、知的発達障害や自閉症スペクトラムのある人々と環境の間に理想的な関係を提供するためのデザインをサポートします。
この応募者は、建築環境のデザイン、特に触覚と感覚を刺激する建築に関する重要な視点を提起しています。CEPAポズエロ教育センターと高齢者向けデイケアセンターのインテリアデザインが、いい例です。入口、玄関ホール、廊下は、視覚的に注意を引き、行く方向が分かりやすく、普遍的な魅力を備えています。
SOLITは、セミオーダーのファッションブランドです。「必要な人に、必要なものを、必要な分だけ」をモットーに、誰も取り残さないオール・インクルーシブな社会を目指しています。
ボディマッピングテクノロジーの可能性を活用して、オーダーメイドの衣服を手頃な価格で提供することで、すべての人にファッションを提供していることを高く評価します。SOLITは、新しいテクノロジーと、マグネットボタン、ショルダーシーム、アームホールなどの補完的なディテールを組み合わせることで、着脱を簡単にし、手頃な価格ですべての人のためのファッションの提供を実現しています。このプロジェクトには、大きな将来性があるかもしれませんが、それを判断するのにもう少し詳しい資料があったらよかったという意見が審査員からあがりました。
ダッハウ強制収容所は、ドイツ ナチズムの残酷さの象徴です。現在、ミュンヘン北西部の強制収容所跡地は記念碑および追悼の場として利用されています。恐怖の次元を理解できるようにするために、Inkl.Design GmbHは、1945年のダッハウ強制収容所と現在の記念碑のエリアを鮮やかに伝える触覚モデルを創作しました。
ユニヴァーサルデザインの原則を取り入れ、触覚という興味深いアプローチで、見事にデザインされた多感覚体験の成功例です。それぞれの要素と情報モジュールが適切に活用され、視覚障害を持つ人々だけでなく、すべての人に使いやすさをもたらしています。唯一残念な点として、プレゼンテーションが少しハードエッジでモノクロであるというコメントが審査員の中であがりました。
ユニヴァーサルデザイン(UD)の考え方は、普及を促進するための長年の努力にもかかわらず、特にUDが建築、プロダクトデザイン、サービスデザインなどの専門分野の観点から説明されている場合は、多くの人にはよく理解されていません。この残念な現実が、さまざまな分野でのユニヴァーサルデザインのより広範囲な普及を妨げています。太田幸夫氏は、言葉よりも画像やグラフィックを多数活用し、UDの実践事例をわかりやすく説得力のある方法で紹介する全5巻の本を作成しました。
ユニヴァーサルデザインをユーザー中心のアプローチで、説明的ではなくユニークに解釈し、表現しています。編集のコンセプトと説明はとても興味深く、UDをとりまく言語を変更し、一般の人々に分かりやすく意味のあるものにするための勇気ある試みです。審査員は、この書籍発行の裏にある大変な作業を称賛しました。デジタル版はなぜないのだろう?という声が審査員の中から上がりました。あったらなおよいでしょう。
2020年に新型コロナウイルスの流行が日本を襲いました。ピクトグラムは店舗での感染予防対策の表示として有効ですが、UDの観点からは考えられていないことがすぐに分かりました。この事実に気づいた株式会社電通と田代デザインスタジオは、取り組みを始めました。その結果、視覚障害者、高齢者、色覚異常者、外国人観光客、そして子供たちのニーズを考慮にいれた42種類のピクトグラムが完成し、自由に利用できるようになりました。
模範的なプロジェクトであり、すべての人にとって初めての経験という状況の中で、コミュニケーションの問題を解決するための寛大なアプローチです。重要なのは、来日する外国人にもこれらのピクトグラムの意味がすぐにわかるように、多様な文化的背景を意識してデザインされていることです。文化の違いによっては、解釈に差が出るものも中にはありますが、全体的に慎重に検討され製作された図記号の標準的なセットとなっています。
この製品は、学校で過ごす人々に快適さと安心を提供することを目的とした換気扇です。教室の室温を保ちながら換気を行い、省エネと快適さを実現させます。CO2濃度の表示により、換気の効果を可視化し、先生や生徒に安心を提供します。様々な教室に後付けできるようにデザインされており、工具なしでメンテナンスできます。
エネルギー回収を目的とした、強力で持続可能なユーザー中心のプロジェクトです。CO2濃度の表示と設置やメンテナンスの容易さは、現在進行中のパンデミックの状況と相まって、エネルギー消費の世界的な課題に対するとても関連性の高いソリューションになっています。
触覚矢印「DiGITS」は、非常時の避難経路案内を触覚的な矢印で行うというコンセプトの提案であり、視覚能力や国籍に関係なく、シンプルで直感的な触覚的壁面パネルで人々を安全に誘導します。避難者は、壁に手をあてて、非常口へと続く矢印に沿って進むことで避難することができます。
とても興味深いコンセプトです。プロトタイプは、外見的にも美しく、緊急事態での安全を確保することができます。視覚障害者だけでなく、外国人観光客を含むすべての人々のためにデザインされた、一見シンプルな触覚経路探索システムです。今後、さらなる開発やプロトタイプによるテストをし、他の用途での活用の可能性も模索すると良いでしょう。審査員の中から、パンデミック時においては、細菌やウィルスを媒介させてしまう危険性が潜んでいるという懸念がありましたが、これはすべての触覚標識に共通する問題であり、同様に明快な解決策が求められています。
このプロジェクトは、健康と自然の共生を重視した、穏やかな森の谷間にあるヘルスセンターの構想として成功しており、透析クリニック、糖尿病クリニック、フィットネスガーデン「めぐりの庭」で構成されています。植栽は周囲の山林と生態系のネットワークを形成し、患者や地域住民の生態系への関心を高めています。
このエントリーは、穏やかな森林に囲まれた環境でクリニックとガーデンスペースを統合することにより、「自然」と組み合わせたヘルスケアの可能性に焦点を当てています。ユニヴァーサルデザインのアプローチなしでは達成するのが難しい、エクステリアデザインとインテリアデザインのよく考えられた組み合わせによって治療上のメリットをどのように引き出すことができるかを示す印象的な共同イニシアチブです。ユーザーとの連携についての記載があれば、もっと良かったでしょう。
福祉が地域を発展させ、地域が福祉を発展させる。 この2つの知的障害者のグループホームは単一のユニットとしてではなく、複数の小さな建物にさまざまな機能を分散させることで、街並みに合ったデザインになっています。これらを連携して運営することで、高齢化した街を活性化し、住民を地域社会の参加者として効果的にまとめることができました。
知的障害のある人々を大きな「家」に隔離するのではなく、地域社会に溶け込ませることに焦点を当てた興味深い取り組みです。グループホームが一般的な国もあるかもしれませんが、このアプローチは革新的で、日本の状況下ではとても重要です。明るく大きな窓を設置することで、包摂性の考えをサポートし、周りの地域にオープンであるということを示しています。審査員の間では、スタッフだけではなく、居住者の意見がどのくらい反映されたのか懸念を示す声もありました。
「INCLSS」は、発達障害の子供たちのための成長記録や個別支援計画など福祉や教育の情報を一元管理し、共有化するシステムです。このプログラムは、日本の「発達障害者支援法」に基づき、行政機関が求める個々の子どもへの継続的な支援を具体的に実現します。
これは間違いなく、構造化された方法で重要な情報を提供・共有する方法や質を改善するデジタル管理システムです。プロセスをスピードアップさせ、子供のニーズをよりよく理解して対応できるようにしており、その意味で子供中心のシステムです。ユーザー評価があると、より良かったのですが、統合教育の実現という文脈の中で、子供たちの発達のニーズをサポートすることに焦点を当てた強力なプロジェクトです。
この業界で70年の歴史をもつ老舗メーカー製のとても使いやすいミシンです。このミシンは、操作が簡単で軽量であり、高齢の方や子供たちのニーズを念頭において、使う人が洋服や手作りアイテムを作ることを楽しめるようにという意図のもとにデザインされています。このミシンは、まさに人々が使いたくなるミシンです。
多くの人にとって重要な家庭用品を改良し、構造の簡素化を試みた良い例です。世代を超えたユーザーを取り込めるように既存のものを刷新し、鮮やかにその目的を成し遂げました。ユニヴァーサルデザインの考えに基づいたアプローチにより、このミシンは子供にとっても高齢者にとっても使いやすいものになっています。
これは、火災や地震など緊急時の避難誘導を放送する設備です。こういった人々の命を守る役割を担う放送設備は、消防法が定める全施設に設置義務があり、だれでも操作できるようにしなくてなりません。最新のモデルは、「安全操作」「簡単操作」「実際の使用での想定」という、大切な要件を満たしています。
この素晴らしい非常用放送設備に、改良が加えられたことをとても嬉しく思います。優れたユーザー調査により、様々なユーザー指向の改良がなされました。誰もが認識しやすいボタン色を採用、多言語対応機能の改良、操作しやすい配置、そして設置の負担軽減などです。
多言語アナウンスを簡単に再生できるタブレットアプリケーションです。情報格差をなくし、各施設やスタッフの負担を軽減し、持続可能な運用を可能にすることにより、施設・自治体のユニヴァーサルデザインの普及と支援を行うことを目的としています。インターフェースもユニヴァーサルデザインに配慮しています。
日本全国で次々と使用されており、外国人観光客にとっても欠かせないプロダクトとして成功しています。このアプリケーションは使い方がとても簡単です。デジタルネットワークから独立していて、とてもシンプルで道理にかなっているので、海外展開の可能性もあるという意見が審査員から出ました。ユニヴァーサルデザイン思考の良いアプリケーションです。プロセスの議論やユーザーテストについて言及されていたらもっとよかったでしょう。
Vippsは、消費者がオンラインで製品やサービスの支払い、友人や家族への支払い、さまざまなオンラインサイトへのログイン、友人間の費用の決済、請求書の支払いに使用できるモバイル決済アプリです。
Vippsは、人々の日常生活にぴったりの非常に説得力のある決済アプリケーションです。機能的で用途が広く、使いやすいので、複雑な説明を理解するのに時間を費やしたくないユーザーには、とてもうれしいアプリケーションです。直接のユーザー調査や事前のユーザーとの連携については触れられていませんでしたが、開発者はユーザーからのフィードバックに基づいて、機能性を改善するために懸命に取り組んできました。こういった流れは、デジタル時代によくあるケースのようです。まず始めてみて、ユーザーからの様々な指摘を待つということでしょう。
このブランド“FÜR UNS” によって、ヘファタ・ディアコニーは助けを必要としているすべての人々を社会に受け入れ、統合するという考えを伝えたいと考えています。そのため、彼らは平等の考え方を共有する人なら誰でも利用できる商品やサービスを開発・販売しています。
障害者の社会的統合と質の高い雇用についての考えを促進し、人々の関心を引くいいアイデアと方法です。
すぐに認識できるロゴと確立されたブランディングは、すべての人のためのデザインだという前向きなメッセージを伝えています。ドイツの主流スーパーマーケットでの“FÜR UNS”の地位を確立させ、ユニヴァーサルデザインのメッセージを強く伝え、障害のある社員にも障害のない社員にもやりがいを与えている、とても賢い取り組みです。
ノート罫線の形状の煩わしさにより視覚的ストレス(目の不快感や苦痛)を受ける人がいます。そういったストレスを軽減したいという思いからこのプロジェクトは始まりました。そして、視覚的ストレスの少ない「ほぼ日ノオト」新罫線(特許取得済)の作成に成功しました。
ささいなことも大切です。良いデザインが、小さな変化から生まれることがあります。この特許取得済のほぼ日ノオトは、参加型リサーチによって裏付けられたシンプルなアイデアに基づく、機能的で美しいデザインです。このノートのデザインの効果が主張通りであれば、失読症や精神的ストレスに対処し、識字能力を向上させるのに役立つ可能性があると思います。
「エルシ」は、子供たちがみんな一緒に遊べるようにデザインされたブランコです。その細い本体にグループ化されたシートが複数のロープに吊り下げられており、さまざまな能力の子供たちが一緒に押したり引いたりすることができるようになっています。このように一緒に遊ぶことは、競争ではなく、協力、理解、共感を促します。フレキシブルな座面は、体重と体型に合わせて調節することができます。
様々な能力の子供たちに、みんなで一緒に遊ぶこととそのマナーの大切さを促進させることができる興味深い遊具です。遊び場の遊具に対する優れたユニヴァーサルデザインアプローチです。特定の障害を持つ子供のニーズに対する対応や、開発の段階でのユーザー関与が確認できたら、もっとよかったと思います。
虎ノ門駅は、循環エリアやプラットホームが狭いため、慢性的な混雑の場所として知られていました。大規模な官民協働により、地下道への接続に加え、プラットホームの拡幅、そして駅前にゆとりあるユニヴァーサルな駅前公共空間を実現させました。
混雑の問題の解決と共有スペースおよび商業施設の改善をするための、素晴らしいデザイン戦略を備えた大規模改修プロジェクトです。地下鉄の駅と公共スペースが、驚くほどシームレスに統合されていますが、ユーザーとの協議の形跡がなかったことと、色のコントラストと看板の読みやすさの点で特定のユーザーグループへの配慮が欠けていたことが少し残念でした。
この2ドア冷蔵庫は、キッチンや調理作業スペースが十分に確保できない20代の単身者をターゲットとした製品です。冷蔵庫の上を作業スペースとして活用することができ、より楽に楽しく調理できるよう工夫されています。電子レンジなどの家電を置いたり、冷蔵庫から取り出した食材や飲料を一時置きしたりすることができます。
20代をターゲットにした、よく配慮され使いやすい機能を備えた三菱の有能な家電製品です。人口密度の高い都市部では、特に若い世代や一人暮らしの世代にとって、最小限の居住空間でのデザイン性がとても重要になってきています。この点で、この冷蔵庫はターゲットを絞った使いやすさの良い例と言えますが、ユニヴァーサルデザインの要素が製品自体にもっと盛り込めたらなお良かったでしょう。
トイレスペースのデザインについては、ここ数年で大きく進化しましたが、今まで十分な注意が払われなかった部分もありました。例えば、狭いトイレスペースには、衛生用品専用のごみ箱がありません。この問題を解決するために、使いやすくてストレスのない、壁に埋め込むタイプのsmart box が提案されました。この女性に優しい製品は、個人の住居やアパートから高層オフィスビルまで、幅広い用途の現代のトイレに適しています。明確なニーズを満たすためのシンプルで美しいアイデアです。
女性の衛生用品の廃棄方法をとりまく問題を取り上げ、既存のソリューションの改善および拡張を試みた興味深いプロジェクトです。審査員からは、人間工学的な側面、配置や清掃、および使いやすさの点に関するユーザー調査がなされたのかどうか知りたいとの声がありましたので、その点が説明されているとなお良かったと考えます。
STは、官僚的な事務作業を減らし、パーソナライズを最大化することにより、リハビリテーションプロセスをデジタル管理するための組織向けソフトウェアです。MYWAYUP アプリケーションは、それぞれのサーヴィスユーザーとの継続的なインタラクティブな関係を容易にし、リハビリテーションプロセスに対するサポート、独立性、および個人の責任を向上させています。
サーヴィスプロバイダーとユーザーとの間のインタラクティブな関係に基づく、このデジタル管理ツールは、リハビリプロセスにおける個人の管理効率とパーソナライズ化を向上させるためのスマートテクノロジーの巧妙な活用例です。このシステムは、独立性とより迅速な社会復帰へのサポートをすることができますが、ユーザーにとってのインタフェースと可視化などのユーザビリティが明確ではありませんでした。開発段階におけるユーザー関与、ユーザー評価や検証などの情報があったら、なお良かったでしょう。
アシストガイドは、発達障害や知的障害のある方々を支援するためのモバイルアプリケーションです。このアプリケーションは、「やること」と「やりかた」を段階ごとに分けて視覚化することにより、彼らの抱える日常生活の困難や課題を解決するサポートをします。口頭や書面による説明が理解しくい場合、視覚化することはとても役に立ちます。
このアプリケーションの意図は、とても意味深いです。障害を持つ人々の日常生活での自立と包摂を目的としており、多様なユーザーにとっても価値のあるアプリケーションになる可能性があります。まだ開発段階のようですが、多様なユーザーと連携し、包摂的なデザインプロセスを踏めば、とても有用なツールになるでしょう。
このプロジェクトでは、無毒で、環境に優しく、褪色しない酸化物である人工オパールをベースとした持続可能な代替顔料の実用化を提案しています。人工オパールの微細構造の中で光線が干渉することで様々な色を作り出すことができます。従来の顔料に代わるこの代替品を通じて、より持続可能で安全な社会の実現を目指しています。
とてもすばらしいアイデアです。既存の顔料に代わるものとしてかなりの可能性を秘めているので、様々な分野で持続可能な未来への道を示してくれるでしょう。とても独創的で素晴らしい科学的データで裏付けられていますが、ユニヴァーサルデザインとの関連性はあまり明確ではありません。
3Dスキャンで計測されたデータを元に作られた襟足ベースと頭部ベースを分離できる、ユーザーにとって使いやすいウィッグデザインです。
薄毛に悩む人々の真のニーズに対処し、パーソナライゼーションの可能性を秘めた高性能な製品です。この問題に対しての実行可能な解決策を提供することは確かに重要ですが、ユニヴァーサルデザインとの関係は明確ではありません。
ホスピタリティロッジは、モジュール式の建物という枠を超え、独立した建物で家のスペースを拡張することで新たな可能性を提供しています。ユニヴァーサルデザインであることに加えて、ホスピタリティロッジは、幅広い活動と多様なユーザーに対応できます。 また、差別や偏見による恥辱を感じさせない装飾や介護者のアクセスなど、心理的な要因も考慮されています。
様々な補助的用途を提供することにより、家族の近くで独立して生活をしている障害者のニーズに応えるというだけではなく、それを越えた幅広いコンセプトになっています。斬新なアイデアではありませんが、より多くのユーザー調査と、空間のレイアウト、設備関係、資材の検討、冷暖房設備など、設計の詳細を見直すことでより良いものになるでしょう。
スリーリバーズのシャツは、片手でボタンを留めることができるので、片麻痺の人でも自分で服を着ることができます。その時に合わせたスマートな、またはカジュアルな服装に身を包んで外出し、社会復帰できます。
片麻痺という稀な状態に対する賢いアイデアですが、一時的な他の不自由さにも対応するアイデアかもしれません。ユニヴァーサルデザインの考え方は、このプロジェクトでも説明されているように、日常生活の中で、シンプルに、上手に扱えるようにすることで、自立した生活を可能にするものです。
タマロンハウスは、受刑者が働きながら訓練を受ける職業訓練所です。スパ、マッサージセンター、レストラン、そして受刑者の生活に関する展示スペースで構成されています。この活動により、受刑者を社会に復帰させながら、「収監せずに更生させる」という考え方に対する一般市民の理解を広めることができます。
審査員は、このプロジェクトを建築学部の学生による社会的正義に取り組むすばらしいプロジェクトだと評価しています。見過ごされがちな人々に対して、このように配慮することを高く評価しています。異文化であることを考えると、大学という場所で開発された社会復帰プログラムは、タイの受刑者の状況にとって非常に重要です。しかしながら、審査員の中には、ユニヴァーサルデザインという枠組みで考えると、このプロジェクトは、さまざまな身体的、感覚的または脳の障害を持つ人々に対する配慮が欠けていることを指摘する意見がありました。
SMA(脊髄性筋萎縮症)Ⅰ型の子供は首の座りが弱く、食事を与える際のご両親の負担が大きいと考えられます。そこで、首の回旋を補助するチャイルドシートを提案しました。これを使用することにより、ご両親が子供に食事を与えるときの負担が軽減され、親子で過ごす時間が増えました。また、子供が自力で首を動かすことで治療の効果が確認しやすくなり、治療のモチベーションアップに繋がると考えられます。
これはユニヴァーサルデザインの範疇ではないかもしれませんが、支援技術(アシスティブテクノロジー)の分野の実際の課題を取り扱っており、リハビリをしている人とデザインを学ぶ学生との印象的で学際的なプロジェクトです。問題を特定するためにご両親に協力して頂くという素晴らしい設計プロセスと、特定のユーザーの要件にフォーカスを当てたことで、この支援機器は高機能なものになりました。ユーザーフレンドリーな外観の要素にもうすこし力を注いだら、最終製品を視覚的に改善できたでしょう。
認知症に苦しむ高齢者の方の数は年々増えています。その患者数の多さから、認知症は私たちにとって身近な病気といえます。このプロジェクトでは、その症状と日常生活に与える影響についてリサーチしました。そして、認知症の患者さんが共通して抱える問題のひとつである入浴について、安全で快適な入浴環境を確保するためのデザインを提案しています。
見事に整理され、一貫性のあるプロジェクトです。重要なことについてのかなりの配慮と精通度の高さが見受けられます。レイアウトやよく考えられた休憩スペースなど様々な要素を取り入れた将来性のあるアイデアがとてもよく反映されています。将来性のあるアイデアですが、さらなる開発と代表的なユーザーによるテストをすると良いでしょう。
捻挫による足首の靱帯損傷を防ぐ目的で、毎日身につけたくなる足首サポーターを提案しています。硬い生地を心材として使い、靴紐のような編み上げ方式で固定することで、現存するストラップタイプのサポーターよりも薄手でデザイン性が高く簡単に着脱ができるようにしました。
このプロジェクトはよくあるニーズを取り上げ、よく考えられていると評価しています。素材をうまく使ったこのシンプルな包帯のような使い方は、幅広いユーザーに美的アピールできる斬新な試みで、そういった意味ではユニヴァーサルデザインです。包摂的デザインプロセスと簡単なユーザーテストとそのフィードバックを実施していたら、開発の段階で役立ち、さらなる発展につながったでしょう。
この製品は、片手しか使えない方や病気などが原因で手の動きが不自由な方々のために提案された、簡単にペットボトルで水やソフトドリンクの給水を行うことができる自助具です。
これはユーモアを交えて提示された学生の共同プロジェクトのいい例です。魅力的なアイデアであり、なかなか解決できない共通の問題に対する素晴らしい解決策です。類似品は存在しますが、この製品はそれとは異なり、おそらくより人間的なのかもしれません。最終的に家で使ってもらえる、手ごろな価格の魅力的な製品を考え出すためには、実用性と受容性を確立させるために、さらなるリサーチと潜在的ユーザーとのプロトタイプづくりを行うのが良いでしょう。
歯磨きは、日常生活に欠かせない行為ですが、調査の結果、自閉症児とその両親にとって、この歯磨きがとてもストレスの多い作業であることがわかりました。このデザインは、自閉症児の歯磨きへの不信感を軽減し、歯磨きを楽しめるようにすることで、その結果、親の負担も軽減することを目的としています。
この学生プロジェクトは、よく知られた課題に対して、創造的で楽しい方法で取り組み、自閉症児の典型的な嗜好である触覚的な喜びや快適さを取り入れています。最終的に機能面や美的特徴をより改善するためには、ユーザーリサーチとユーザーテストを実施するとよいでしょう。
歩く楽しさを再発見させてくれる杖のデザイン提案です。学生グループは、仕事、レジャー、護身、そして仲間と過ごす時間にも役立つ道具、つまり持ち主の個性、興味、価値、特別なニーズを表現するステッキを創作し、現代の考え方で作り直しました。
美しく提示された、とても創造的なアイデアの興味深い学生プロジェクトです。ユニヴァーサルデザインの観点から、とてもありふれた日常の物を扱うことの重要性を示しています。素材感、創造性、デザインを応用することで、ユニヴァーサルデザインの根幹であるスティグマ(差別や偏見による恥辱)を回避することができます。ユーザー協議やユーザーテスト、検証の結果が確認できたら、もっと良かったでしょう。
このプロジェクトは、脳卒中による片麻痺の患者を取り巻く様々な問題に着目しています。脳卒中は、日本人の4人に1人が生涯の中で発症するといわれています。症状の多様性と患者と家族の関わり方に着目し、発症後のリハビリや日常生活において喜びにつながるリハビリツールをデザインしています。
片麻痺についてよく勉強し、実行されたプロジェクトです。遊び心のあるデザインソリューションとユニヴァーサルデザインの世界への導入としては成功ですが、デザインプロセスへのユーザーの関与が不足しているために、最終的にユニヴァーサルデザインの新境地を開くことはできませんでした。
IAUD国際デザイン賞2021 大賞(2件)
IAUD国際デザイン賞2021 金賞(9件)
IAUD国際デザイン賞2021 銀賞(18件)
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IAUD国際デザイン賞2021 学生デザインチャレンジ優秀賞(1件)
IAUD国際デザイン賞2021 学生デザインチャレンジ賞(7件)
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2024.02.29
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