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「ユニバーサルデザイン・シンポジウム2006」参加報告

2007.01.13掲載

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広報G情報サーヴィスチームリーダー 奥沢喜由

12月7日、日経デザイン主催、協力IAUD他による「ユニバーサルビジネス・シンポジウム2006」の第3回が、東京のトヨタユニバーサルデザインショウケースで開催されました。今回のテーマは「安全・安心のUD」。聴講者は約300名。以下、概要を紹介します。


シンポジウム開催の趣旨を述べる「日経デザイン」勝尾岳彦編集長

■ 基調講演


失敗に学ぶ、安全・安心のUD

東京大学教授 中尾政之氏

低速は安全なのか。
発電所のタービン破損事故があったが、これは想定外の低回転で起きた事故だ。メーカーは出力20%まではテストしていたが、現場ではわずか5%で運転された。高速で回転していれば、気流がスムーズになる設計だが、低速になると気流のよどみができ、羽根の一部に繰り返し力が加わることが原因だった。
焼き芋の販売車がエンジントラブルを起こした。数ヵ月しか使用していない車だった。時速10キロ程度でゆっくり走っているため、潤滑油が十分に行き渡らなかったことが原因だ。
類似の災害事例から学べ。
上記の例はそれぞれ発生の確率が低く、想定しづらいことだか、低回転という共通点がある。同じではないが、類似性に気づくことが大切だ。水平展開、類似展開が危険予知に有効だ。



■ 特別講演


災害時初動体制のデザイン要件

ピースウインズ・ジャパン 松田憲氏

緊急支援の際に必要な、援助物資・通信・輸送などで考慮しておかなければならない要件を、イラン・イラク・新潟中越地震など、国内外で災害緊急支援活動を行っている立場から、被災地の写真を用いて紹介された。例えば、食料は賞味期限の無い物、アレルギー物質を含まない物、通信は特別なソフトを使わない物。また、仮設住宅・トイレなどは平常時でもイヴェント会場で活用することによって、改良・コスト削減を続けることも大切だと述べられた。



■ ケーススタディ1


水まわりのユニバーサルデザイン

TOTO UD企画部 UD推進グループ 金子裕子氏

同社はUD商品をいかに提供するか、「モノづくり」「人づくり」に加えて、「お客さまとの関係づくり」の3つの視点から考えている。とりわけ、生活実態を知ることが大切と考え、お客さまの自宅を訪問して意見を聞き、試作品を研究所の住宅で使っていただくなどしている。この研究には、お子さま、大柄な方、ご高齢の方、障害のある方など500名以上が協力されている。



■ ケーススタディ2


使い手のニーズを考慮した危機管理製品の開発

初田製作所 生産本部 取締役本部長 坂本義彦氏 ほか

消火器は、緊急時に誰でもすぐに使えるように、色・形・操作方法が法律で定められている。これは、大勢の人が集まる施設での使用を前提に考えられているためである。しかし、火災発生件数は一般住宅が多く、その場には消火器が無いのが実情である。これは、消火器がどこで売っているのか知らない、大きい、重たい、デザインが部屋に似合わない等が原因と考えている。初期消火は小型のものでも十分効果があることから、軽い・持ちやすい・使いやすい、さらにインテリアにもマッチするデザインの消火器を開発した。



■ ケーススタディ3


被災後3日間を生き抜く工夫 HV車を電源として活用

UD産業創造研究会 中川 聡氏

災害時に行政と住民は何をすべきか2年間研究してきた内容を発表された。行政の支援が届くのは災害時から3日かかるため、それまでは、住民自身が対策を講じなければならない。そこで着目したのが、HV(Hybrid Vehicle)車、エンジンとバッテリーで走行する自動車だ。ガソリン満タン(40リットル)なら40時間発電でき、車内のコンセントで、エアーテントの設置、照明、水の浄化、通信機器の利用などさまざまなことができると述べられた。



第1回「食のUD」参加報告はこちら
https://www.iaud.net/activity/2387/

第2回「情報のUD」参加報告はこちら
https://www.iaud.net/activity/2393/
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