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人種、文化、経済等の違いでUDの意味や利用法は変わってくる

2015.09.05掲載

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写真:リカルド・ゴメス氏

リカルド・ゴメス

サンフラシスコ州立大学教授: 米国

■インタヴュアー:北村 和明(IAUD情報交流センター長/株式会社岡村製作所)
■日時:2014年11月13日 12:00~

プロフィール


―現在のUDを取り巻く状況と日本のUDについての印象をお聞かせください。


リカルド・ゴメス:まず、UDは 1991年に始まって今に至っており、これまで多くの人が様々な意見を表明し、成長と共に多様な発展をしてきました。UDに関する傾向としては、高齢者にももっと対応していこうという流れがあると思います。用語の使い方について言えば、私はUDとインクルーシヴデザインを同じ意味で使っています。
UDという言葉はアメリカや日本でよく使われ、インクルーシヴ デザインはイギリスなどヨーロッパで使われることが多いと思います。デザインフォーオールという言い方もよくされております。

国としてもデザインフォーオールという考え方があり、支える土台となっているのが国連の規定です。それをベースに皆が均等な機会を持てるように、という考え方です。

UDという言葉が使われ始めた当初は、西洋の工業化の進んだ国々で作られ、確立し、実践されましたが、やがて発展途上国でも採り入れられ、使われるようになりました。2000年にロードアイランド州プロビデンスでUDに関する国際会議があり、発展途上国からUDに関して発言する機会が増えたのはその時からです。今回の「第5回国際UD会議 2014 in 福島&東京」では、ショーン・ドナヒュー氏がウガンダにおけるUDの発展についてお話しされました。 西洋と発展途上国とでは視点や状況が異なるため、各国の条件に応じてUDの意味合いや解釈には違いがあります。

写真:リカルド・ゴメス氏

工業化が高度に進んだ西洋諸国の価値観や理想など多くの要素の中には、発展途上国ではインフラや工業国の経済特有の状況が欠如しているため実現できないものもあります。従って、私たちは今、UDの概念について再評価すべき段階、あるいはUDの意味とその利用法をよりインクルーシヴかつ多様なやり方で再考すべき段階に来ていると考えています。今申し上げたことについて、例を挙げたいと思います。今回の国際会議の発表でもお話ししましたが、オリンピックとパラリンピックは区別されている面があります。この2つのダイナミックな世界的スポーツ大会を、一緒にブランディングする努力が必要だと思います。このようにUDが発展するにあたり、ある段階ではUDは全てがインクルーシヴなもの、誰もが共通の価値を分かち合えるようなものになる必要があると思います。しかし、その中で、性別、経済領域、人種、文化等の違いによりニーズが分かれることもあると思います。

日本ではUDに関して素晴らしい例が示されています。IAUDの成功と、それが長年の間にいかに大きく進歩してきたかを見れば分かります。テクノロジーを採り入れ、非常に近代的で、消費者目線を中心に据えていますね。ユニークで、日本の文化、経済、社会の状況を反映しています。しかし、ここ日本で示されているのと同じものをウガンダで応用、活用しようとしても、必ずしも適切ではない場合があります。なぜかと言いますと、経済状況と所得水準が違うからです。今日の発表で紹介された方法でウガンダでのリソース配分を行えば、結局人口のほんの一部しかUDのメリットを享受できないでしょう。

とりあえず、経済領域、経済そのもの、そして人口比も異なります。日本では65歳以上の人口が25歳以下の人口を上回っていますが、ウガンダでは状況が逆だと思います。このように、環境の違いがたくさんあります。最終的にはリソースをどう配分するかも変える必要があるでしょう。ウガンダなどの場合、UDは特に子どもや若者への医療と健康サーヴィスの提供について考えたものになると思いますが、日本のUDの場合は、特に高齢者の支援の方法と高齢者の健康について考えなければなりません。このように、ウガンダと日本を比べると違いがあります。ですからその適用は状況によって特徴が異なるのです。

最後の分析として、UDというものにはフィルターが必要ではないかと思います。例えば人種、文化、経済などがフィルターになると思いますが、これは日本で適応する際にも使用しなければならないものです。UDの7つの原則について触れましたが、その7原則を利用する際にはこうしたフィルターをかけることが重要になると思います。日本とウガンダは違いますし、高度に工業化が進んだ社会と低所得の農業社会の間でも違いがあるでしょう。
UDはパレットのようなものだと思います。このパレットはいろいろなレベルで提供されます。つまりフィルターをかけることによって、UDを効果的で誰もがその実践を担えるようなものに変える必要があるというわけです。

まとめとして、冒頭でUDとインクルーシヴデザインという用語を同じ意味で使用していると申し上げましたが、インクルーシヴデザインには経済領域という概念が備わっていると思います。UDが考案されたときと比べると、インクルーシヴデザインには、UDについて元々考えられていた範囲を超える枠組みが含まれているように思うのです。例えばジェンダー、文化的問題、社会などさまざまな状況に応じて、変化する物事が異なります。
ですからUDとインクルーシヴデザインの原則は人に押し付けるものではなく、対象となるユーザーとユーザー固有の集合的ニーズ、社会における多元的福祉に焦点を当てた協同作業として確立し、展開すべきだと思います。



―ありがとうございました。



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