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【グローバルインタヴュー2016】外国人はアクセシビリティの高い表示・情報提示により日本の中で受け入れられていると感じ、快適に過ごす事ができる

2017.06.19掲載

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写真:ボー・リンネマン氏

ボー・リンネマン

クリエーティブディレクター/建築家/コントラプンクト デンマーク・東京 代表及び共同設立者:デンマーク

■インタヴュアー:北村 和明(IAUD情報交流センター長/株式会社岡村製作所)
■日時:2016年12月10日 12:00~

プロフィール



―本日は、貴重な時間をいただき、ありがとうございます。


ボー・リンネマン(以下 リンネマン):こちらこそ、このイベントに呼んでいただき光栄です。



―リンネマンさんは武蔵野美術大学で教えていらっしゃったので日本について詳しいと思いますが、日本におけるユニヴァーサルデザイン(以下UD)についての印象はどのように感じていますか?


リンネマン:ヨーロッパと比べて、日本の方がUDに関して明確な定義をしていて、これまでヨーロッパが介入できてないところも踏み込んだ形で取り組みをされていると思います。



―実際に学生に教えていて、日本の学生のUDに対する理解度はどのように考えていますか?


リンネマン:まず、学生さんの理解の前に、私自身のデザイナーとしてのUDに対する考え方ですが、UDというのはデザインそのものに対する考え方・アプローチといえると思います。
特に、一部の限られた人のためにデザインを絞り込んでいく事によって、より多くの人に提供出来るようになるという事です。このUDの考え方を全てのデザインの開発に取り入れていく方が、全体としてより良い結果が出ると私は考えています。UD=人の生活をより楽にしてあげる(簡潔にする)事、バリアを取り払うという事ですが、これはテクノロジーと人との間にあるバリアを取り除く、それから公共の場でのアクセシビリティ、バリアフリーを更に高める事を目指しているという風に考えています。つまり、これをやる事で人はどのように考え、どのように行動するか、という事を理解していくという事がUDの根本であると考えています。日本の学校の場合 (特にデザイン系の学校)、UDに関する理解が実際の授業より進んでいると感じています。日本の学生の方が、海外の学生よりUDに対して割く時間が非常に多い。名古屋のデザイン学校を昨日訪問したのですが、その際に、先生が学生に対して『社会の中で自分達がどういう風に社会全体に貢献できるのか、そういった考えを持てるようになるのか』を指導している様子を見ました。



―今回この会議に参加して、こちらの会議の印象はどうですか?


リンネマン:名古屋の全体的イメージというのはないですが、直近で聞いたものはとても素晴らしかったです。また、世界の各国から専門家の方々を一同に介する事が出来た事、そういった中で知識の共有が出来ること自体も素晴らしい事だと思うし、このような場に参加させていただける事も非常に光栄だと思っています。



―空港の設計などもされているとの事ですが、日本の空港のUDについての進み具合はどのようにお考えになりますか?
2020年の東京オリンピック・パラリンピックも控えているので、空港の施設や街の様子それ以外でも「ここをこうした方がいい」というご提案があれば...。


ボー・リンネマン

リンネマン:なかなかいい質問ですが、難しい質問でもあります。日本に住んでいるという中で、謙虚な気持ちで日本を色々と見ているので、日本は素晴らしいと思っているし、何かこちらから提言する事は具体的にはないと思います。特に、インフラ・公共施設の機能に関しては世界をリードしているのは日本だと私は考えています。

日本の場合、何か移動する際に困った事や渋滞、人がたくさんいるとかそういった煩わしさがなく、全てがスムーズに動いている。特に物の移動や交通機関に関しては問題なくスムーズに動いているという印象があります。また、アクセシビリティに関しても非常に高く評価しています。
ただ、1つ提案出来る事があるとすれば、日本は問題解決・それから事を進めるという事は優れている(機能という意味では素晴らしい)が、ただ、デンマークという国から来た人間としては、機能だけではなく見た目の美しさを重視する所もあるので、単なる機能だけではなく、人が見て魅力を感じるような、機能以外の見た目の美しさも改善出来るのではないか?と思います。
付け足すとレナードのデザインというのは全ての要素で人に優しくできていて、見た目もいいし心に訴えかける何かがある。しかし、日本は「機能的にはすごくファンクションだけど心に訴えかけてない」という事です。



―見た目の美しさというと「デザイナーが頑張ってUDの機能+スタイリングと色々と努力すべき」という風に思いますね。
あと、デザインにおける心の問題(おもてなしする、という心)というのも大切にして、外国の方がいらっしゃったら進んでご説明する等、日本でもそういう面を進めていこうと考えています。あと、IAUDとしても2020年に向けて更に心のUDを進めていこうと思っていますが、我々IAUDという組織に対して何か意見や希望があれば、最後に聞かせてほしいです。私たちだけじゃなく、色々な企業が参加しているので...。


リンネマン:コミュニケーションデザイナーとしては、やはり多言語の間でのコミュニケーションというのは重要だと思います。特に、外国人の方(日本人ではない方)が来られた時、実際に日本語の中での動き方・行動の進め方を出来る限り分かりやすく説明できるような形でコミュニケーション・メッセージを出していかないといけないと私は考えています。ですから、日本語ではない言語を使う事によって外国人の方にもメッセージを明確に伝えていく必要があります。特に私はコミュニケーションデザイナーとしてタイポグラフィーというものを開発して、円滑なコミュニケーションのサポートをしていきたいと思います。

2020年に向けて多くの人が色んな場所に訪れていると思いますが、東京の色々な街を歩いていると日本語の情報と英語の情報が並列している時に、何か違うように感じます。同じ情報が同じ視覚的気持ちで取り入れられる事をやった方がいいと思っています(例えば、ピクトグラム等)。
あとはサインの場所ですね。日本は情報が多すぎて「こっちに行ったらあっち」というサインが色々な場所にある。特に駅だと分かりづらい。人が本当にちゃんと見える位置に配置するというのがユニヴァーサルデザインですよね?

コミュニケーションの重要性を過小評価してはいけないと私は考えています。外国人が「日本の公共の場でメッセージが理解できない」、特にどの方向に何があるかについての情報が理解できない時に、「自分達は阻害されている、馴染めない」といった気持ちを持つので、そういった形でもっとアクセシビリティの高い表示・情報提示をする事によって、より日本の中で受け入れられていると感じ、快適に過ごす事ができると考えています。



―サインの改善については、これから日本も頑張っていこうというような話も聞いているので、今聞いた話の内容が実現できれば、と思います。本日は本当にありがとうございました。



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