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2019.06.25
2012.04.10掲載
竹本竜司
(防衛省統合幕僚監部運用第2課長)
死者、行方不明者が2万人近い、戦後最大の災害でした。
我々は三陸沖の津波被害に関する計画はもっており、中央防災の見積りだと被害者が2000人規模の計画でした。しかし、今回はその予測を大きく上回る広域、かつ甚大な被害でした。私も3月に現場に入りましたが、被害の有無が津波で線が引かれている「オール・オア・ナッシング」の状態でした。
さらに、原子力事故が複合的に起こりました。放射線下の活動は初めての活動でした。地震・津波プラス原発事故という2つの災害にあわせて対処しました。
また、初めて10万人規模にわたる統合運用の陸海空の部隊編制をしました。
もう1つ、日米共同の「オペレーションTOMODACHI」作戦で、米軍が非常に大きな支援をしてくれました。これについては、原発全体に対するヘリ放水を行ったことを機に、米軍も我々の本気度を感じていただき、最大限の支援をしてくれたと思います。
なぜ自衛隊がこれらの災害派遣の場面で機能できたか、3点述べます。
人命救助の観点からそれぞれの役割を見ます。
自助:それぞれで支えることであり、備蓄や事前のシミュレーションにより発災直後の救助に影響します。
共助:自主防災組織、つまりそれぞれの地域コミュニティにあります。次の段階での救助に大きく影響します。
公助:自衛隊、警察、消防が逐次入り、継続的な救助活動を続けることです。時系列では、自助→共助→公助となり、これらの役割をお互いに最大限発揮できるような有機的な連携が必要となっています。
東日本大震災よりも密度の濃い被害が想定される場合、自助はより多くの人に、共助はより広い地域に、公助はより早く現場に到着することが必要だと認識しています。
「みちのくアラート2008」など地方自治体をまじえて訓練をし、米軍とは定期的に共同訓練をしていますが、それが実際には有益でした。各レベル、関係機関の参加による平素の訓練実施の積み上げが必要だと認識しました。
これらの訓練はイヴェント的な訓練です。見せるだけの訓練から、状況、被害に応じたシナリオ訓練に進化させる必要があります。
さらに、Plan(計画)、Do(実行)、See(評価)をくり返しやることによって、より実践的な訓練ができます。
今回の震災において、各指揮官と自治体は「すべては被災者のために」をスローガンにしました。被災者のニーズを聞く、瓦礫の中から思い出のものがあれば整理する。避難所では女性ならではの相談を聞くため女性隊員を編成するなど、丁寧に対応してきました。
これらの精神は国際貢献にも生きています。イラクの復興支援、南スーダンの支援なども、それらの国の人々のために隊員が実行しています。
また、今回の震災において、最後の砦として新たな自覚をしました。我々自衛官は「事に臨んでは危険を顧みず身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応えることを誓います」と宣誓をします。
また、被災者のあたたかい感謝のことばがありました。多くの児童が亡くなった大川小学校の生き残った児童からの手紙です。
「じえいたいさんへ。げん気ですか。つなみのせいで、大川小学校のわたしのおともだちが、みんなしんでしまいました。でも、じえいたいさんが、がんばってくれているのでわたしもがんばります。日本をたすけてください。いつもおうえんしています。じえいたいさんありがとう。うみより」
この手紙を隊員はコピーをして胸に持ちながら今回の震災にあたりました。皆様のあたたかい言葉や励まし、笑顔が我々の力となります。