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21世紀のためのデザインIII、UDに関する国際会議報告 トヨタのUD車両開発

2004.12.20掲載

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発表:トヨタのUD車両開発

トヨタ自動車 車両技術本部 金森 等
トヨタ自動車 デザイン本部 三杉研治



写真1:発表する三杉さん


<講演サマリ>

トヨタの車づくりのヴィジョンは、環境負荷をゼロにし、安全面では死傷者ゼロを目標に、楽しさと快適さを最大限にすることを目指しています。この楽しさと快適さを目指す活動の柱の一つが、トヨタのユニヴァーサルデザインです。人間工学部署は独自に「エルゴインデックス」「シーン適合度」の2つのユニヴァーサルデザインの評価指標を策定。デザイン部署はこの指標の活用とユーザ対話を繰り返し行なう方法で開発を進めました。ラウムの説明として (1) 大開口のパノラマオープンドアと助手席タンブルシートで画期的な乗降性と居住空間の拡大、(2) 各所へのアシストグリップの設定、(3) ユーザ対話に基づく機能部品類、(4) ウエルキャブ(トヨタ福祉車両)への展開例。新型ポルテのコンセプト、空間の工夫、ウエルキャブの展開について説明し、最後にトヨタUDショーケースの紹介を行いました。


<Q&A  Ms. Julia Cassim(The Helen Hamlyn research center) >


写真2:会場からの質疑に答える(左から)金森さん、三杉さん

Q)ラウムにおいてUDが売りにくさ(障害)につながっていないか? マーケティング上どれぐらい売上が伸びたか 。

A)ラウムは初代からのユニヴァーサルデザインの進化を訴求してきた車です。マーケティングでは、目標の台数は売り上げていますがUDによる売上の効果は数字としては分かりません。

ただし、トヨタの企業姿勢のイメージアップに貢献しています。それに続くポルテは生活の楽しさを訴求してきています。プリウスもハイブリットが前面に出ていますが、UDにも十分配慮したデザインを実施しています。


<感想(金森)>

今回、一般ユーザ対象の製造業が真剣にUDに取り組んでいる姿勢・成果をアピールしたことは、欧米の推進リーダーの方々に強く印象づけることができたと感じます。

なぜ日本ができているかが話題になることがありますが(10月のニューヨークのUDシンポジウムでも話題に)、私は、本音では「思いやりやもてなしなど、日本人の特徴の現れ」と思っています。でも、こんなことを言っては議論が進みませんね。

今までの日本のモノづくりのイメージは、信頼性を中心にハード面の品質の良さを特徴としてきましたが、UDはこれに「我々使い手のことを考えて作ってくれている」と感じてもらえるような、気持ちの面での信頼を付加することではないかと思っております。 欧米に向けても、こんな視点・訴求が一つの考え方ではないでしょうか。


<感想(三杉)>

Roger Coleman先生やAEのValerie Fletcherさんからも、製品、成果に対する賞賛と興味の高さをうかがうことができ、UDの考え方が日本のモノづくりの延長として一歩先に成果を出しつつあることをを感じました。

どの企業や業界でもこのムーブメントをどう花開かせ、本物としていくかで悩んでいることと思います。IAUDは企業の作ったきっかけをより本物として広めていくために、重要な役割を持つことを理解しました。 「2006」(京都での国際UD会議)という次のステップ(普及と深化)に向けて、日本が答えを出す役割を担うことになることでしょう。


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