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2013.04.10掲載
私たちは、機能性とファッション性を兼ね備えたユニヴァーサルな衣料を開発することを基本コンセプトとしています。産学連携で社会に広げることを目標としています。最終的には、目に見えるかたちで世に出したいと考えます。
UD衣料には様々な形で、取り組んでまいりました。
大学教授に講義をいただき、素材メーカーにはテキスタイル勉強会を開催していただき、最新の情報を得ながら産学一体で研究を進めてまいりました。
そして「その機能は美しいか」というテーマの基、UDジャケットの開発に取り組み、2010年秋の浜松での国際会議で第1号を発表しました。
その国際会議の数ヶ月後に東日本大震災が起こり、報道を見る中、我々は被災者が抱える衣服の問題に心を痛めました。
災害時における衣料はどうあるべきか、IAUDとしても組もうと研究を始め、最終的にUDジャケットと災害時の衣料の2つの研究の融合に至り、昨年秋の国際会議で「災害用のUDジャケット」の発表にたどり着きました。
2011年春から続けている災害時の衣料の研究と、その延長上の災害用UDジャケットの開発、さらに衣のUDとは何かをわかりやすく解説したパンフレットの作成です。
災害時衣料でとり組んだのが、情報収集です。市販されている防災用衣料品をいくつか収集、検証もしました。
しかし被災者からお話を伺うのが重要と考え、東日本大震災の被災地に赴き、陸前高田や南三陸の皆さんから避難時、避難後に直面した衣服の問題についてお話いただきました。
屋上でパイプにつかまり、津波から逃れた方、仕事場の保育所が避難所になり、極寒の中すし詰め状態で避難経験をされた方など、困難な状況の中で、貴重なお話を伺いました。
さらに2012年6月には、NPO法人プレジャーサポート協会理事長の馬場賢親氏をお招きして勉強会を行いました。この協会は、障害者・高齢者のアウトドアライフの支援や救護手当の講習を手がけています。
馬場氏も、被災地ではヘリコプターを自費でチャーターし、救助活動をするなど、震災直後から被災者の支援を熱心に続けていらっしゃいます。その経験から、救助者被救助者両方の災害衣料のあり方を教えていただきました。
この2つをまとめると、多くの共通点が浮き彫りになり、同時に我々のものづくりの方向性も見えてきました。
そして議論を重ね、結果的にUDジャケットを災害用に発展させようとの意見でまとまり「災害時用のUDジャケット」の開発に辿り着きました。
新しいUDジャケットは浜松で発表したものの特徴を活かしながら、更に防災機能をもたせたものに昇華させております。
一見形は、変わっていませんが、細かな部分で改良を加えています。
ポケットを4つから7つに増やした事で色々な防災用品を入れられます。背中のポケットは大きめで、防寒シートや肌着など大きなものでも収納できます。素材は軽量でストレッチ性に優れていて、着やすさも高いものになっています。ファスナーは上下両サイドから開くことができます。
フードの中には、ショックアブソーバーを入れられるようになっており、防災頭巾のように、頭を保護する機能があります。フードそのものも、取り外しが可能です。
さらに、再帰反射テープを、センターファスナー、肩、袖口など色々なところに着けていて、夜間でも使えるものにしています。
防火性の生地にする案もありましたが、何よりもコンパクトでジョギングにも使用できる、つまり押し入れの奥にしまわれないことを優先条件に考えました。
福岡での国際会議では、多くの方が興味をもってくださり、貴重なご意見をいただきました。最も多かったのが「これはどこで手に入るか」というものでした。車いすの少年が興味をもってくださり、またバイクに乗られる人からは、ライダースジャケットに使いたいと、まさにUD性が理解された思いでした。
まずは機能性の検証と、アンケート調査を重ねて、より完成度の高いものに発展させたいと考えております。
夏冬シーズンによってジャケットの性能は異なります。また、これは避難時のものですが避難後つまり体育館などの避難場所で長時間着られるものも方向性としてはありえます。研究を重ね、何らかの形で世の中に出したいと考えます。
もともとUDの中でも衣服のUDはわかりづらいものです。説明と啓発活動をかねてパンフレットを作ろうという意見でまとまり、作成に至りました。
内容としては人と衣服の関わり、見えづらい社会の中の衣服の問題点、衣のUDの取り組みや研究などを分かり易く解説したものになっています。
子どもから大人まで誰でも向き合えるように作りました。読んで理解するだけではなく、人と衣服との関わり方を見直し、同時にIAUDへの理解も高まればよいと考えております。
福岡での国際会議でも200部を配布することができました。小学校から大学(教育学部)まで、各学校の先生の授業のテキストに使用されています。今後は更にテーマを細分化し、続編として何部か作成したいと考えています。