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バルセロナにてユニヴァーサルデザインを語る

2006.05.10掲載

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国際ユニヴァーサルデザイン協議会
専務理事 川原啓嗣


2006年3月29から31日開催予定の「Forum de la Automática(自動機器フォーラム)」が、主催者側の都合により、2日前に突然キャンセルされ、全会議がそのまま秋に延期されるとのハプニングに見舞われたのだが、30日開催のバルセロナ市民向け会議は別会場で予定どおり実施するというので、なんとも複雑な心境のまま、バルセロナへたった。

非営利団体Design for All Foundationとバルセロナ市との共催による会議は30日に市の中心部ランブラスどおりに面したPalau de la Virreina美術館のレクチャーホールで開催された。


スペイン・カタルーニャ自治州の公用語であるカタラン語と日本語間の同時通訳に加え、ディスプレイにはカタラン語の字幕、そして手話通訳も付くなど、ユニヴァーサルデザイン(Design for All)の名のもと、ひたすら実践してきた情報保障は、もはや世界標準となったかのようだ。


Design for All Foundation代表のフランチェスク・アラガイ氏のあいさつと趣旨説明に続き、バルセロナ市長代理としてナンバー3の立場にある方に歓迎のあいさつをいただく。私の講演は、日本が超高齢社会に突入しつつある現状と、それを背景にしたIAUDの設立経緯、そして会員企業のUD商品開発への取り組みなどを中心に約1時間行い、その後約30分の質疑応答へと続いた。予想どおり、日本製品の質の高さやUDへの取り組みに対する素直な驚きと称賛が満席(100名以上)の聴衆の反応だった。競合関係にある大企業がなぜ、一致団結して問題解決にあたることが可能なのか、どうにも不思議でならないようだった。


1992年にオリンピックを開催したバルセロナはガウディやミロ、ピカソなどの、モデニスモ様式やキュービスムが自然に街に溶け込む観光都市であり、UDに配慮した都市環境整備の進む先進自治体でもあるが、スライドで紹介した都営地下鉄のホームゲート(可動柵)に人々は特に関心を持ったようで、講演後に質問攻めにあったほか、地元のラジオ局からの取材も急きょ行われるなど、大きな評価を得た感触があった。


講演の最後、10月に京都で開催する国際会議の告知を行ったが、多くのカタルーニャの人々にぜひ京都を訪問いただき、観光地におけるUDについて文化の違いを超えた熱心なディスカッションを展開してほしいと願っている。


【写真1】カンファレンスの様子。
【写真2】会場となったPalau de la Virreina美術館。FCバルセロナvs.レアル・マドリッドの試合が近いため、街中に殺気立ったサポーターがあふれていた。
【写真3】ガウディの代表作「カサ・ミラ」は集合住宅だが、内部は一般公開されており、屋上は特に圧巻。世界遺産に指定されている。
【写真4】仏アールストローム社製のトラムはプラットホームとのギャップも少なく、車イスや乳母車の乗降が容易である。
【写真5】市内バスは中央ドアに車イスや乳母車のための電動ランプボードを標準装備しており、出し入れは運転席から操作される。
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