バナー:国際ユニヴァーサル研究講座 受講生募集中

メニュー

IAUD公開フォーラム2005開催報告

2005.11.13掲載

LINEで送る

伝統文化と暮らしのユニヴァーサルデザイン~2006年 国際UD会議に向けて~ 10月21日、京都工芸繊維大学の大学センターホールにて、「IAUD公開フォーラム2005」が開催され、一般・報道138名を含む計180名の参加がありました。フォーラムのテーマは、『伝統文化と暮らしのユニヴァーサルデザイン』。国内外の有識者の方々を講師として招き、日本や世界のUDの動向、来年度に京都で開催予定の国際UD会議の意義などについて、発表と意見交換が行われました。


【写真1】京都工芸繊維大学、大学センターホール


【写真2】会場の様子 フォーラムは、川口光男IAUD理事長の「IAUDの目指す社会」と題した挨拶で開会。続いて、京都工芸繊維大学の江島義道学長、京都市保健福祉局長の折坂義雄氏にご登壇いただき、今回のフォーラムの意義、来年度開催される「2006年国際UD会議」に向けた期待や決意などについて、お話しいただきました。


【写真3】京都工業繊維大学・江島義道学長


【写真4】京都市保健福祉局長・折坂義雄氏

特別講演 「世界のUD動向と06年国際会議への期待」

続く特別講演では、キャンベラ大学名誉教授で、インクルード2005のコーディネーターも務めたビル・グリーン教授にご登壇いただき、「世界のUD動向と06年国際会議への期待」というテーマで、興味深い話の数々を披露いただきました。 その中でビル・グリーン教授は、「インクルーシヴデザイン」について、主たるターゲットは老人でも身体障害者でもない「異なる能力を持つ人」だと指摘。「年齢」はデザインの基準とはならない点を強調し、「年齢だけで考えるのは正しくない。性別によって資質を決めるのと同じこと」と言及されました。


【写真5】ビル・グリーン氏による特別講演

続いて、このテーマを考える上での視点として、「製品のメインストリーム」について述べられ、「例えば、メガネはシックでカッコいいのに、補聴器がカッコよくないのはなぜか」と問題を提起。今後、インクルーシヴデザインを普及させていく上で、製品を主流化していくことの重要性について話されました。また、具体的な成功例として、車いすでも乗り込める小型車が「小回りが利く」と多くの消費者に受け入れられている事例を、写真のスライドを交えて紹介されました。 この他にも、デザインを考える上での「3つのレベル」に関する考察、デザインの「審美感」に関する考え方、雑踏の中でも相手の話し声が聞こえる「ヒア・ウェア(Hear Wear)」という道具やフランスの「インクルーシヴデザイン賞」の受賞製品の紹介など、UD推進において参考となる数多くの話題をご提供くださいました。


【写真6】会場の様子


パネルディスカッション「伝統文化と暮らしのUD」

休憩後に行われたパネルディスカッションでは、4名のパネリストと特別コメンテーターのビル・グリーン教授、コーディネーターの加藤公敬IAUD理事が壇上に上り、「伝統文化と暮らしのUD」というテーマで、それぞれのお立場から発表されました。


【写真7】パネルディスカッションの様子

最初に、京都市みやこユニバーサルデザイン担当部長・服部順之氏から、主に京都市の「みやこユニバーサルデザイン」とその推進条例について話があり、地下鉄や駅、公共施設など市内のあらゆる場所でUDが浸透しつつあることを、写真とともに紹介いただきました。また、これまでの京都市のUDの取組みについて説明いただき、先に制定した推進条例については「今後、具体的な目標なり、推進のための方策なりを決めていきたい」と市としての方針を述べられました。


【写真8】京都市みやこユニバーサルデザイン担当部長・服部順之氏

続いて、愛知淑徳大学教授・谷口明広氏から、現状の公共施設や乗り物などの課題について、お話がありました。谷口氏は、自らの車いす生活を基に、車いすの人が泊まれる施設や「楽しめる場所」が少ない点について述べられ、「人生の楽しみのところ、余暇の部分のUDがなかなか遂行されない」と、現状の問題点を指摘されました。ご自身のエピソード交えた谷口氏のお話は、具体的かつ大変わかりやすく、ユーモア溢れる話の数々に会場からは幾度となく笑い声があがりました。


【写真9】愛知淑徳大学教授・谷口明広氏

次に、オムロンヘルスケア株式会社の小池禎氏から、UDを考える一視点として「健康づくり」の大切さについて話がありました。小池氏は、健康づくりを進める上で、「歩く」ことの重要性と、京都という町を歩くことの楽しみについて触れ、「『歩く街京都』のスローガンを、市民生活の暮らしのなかで健康づくりに発展させていきたい」と述べられ、自社が今後担う役割について言及されました。


【写真10】オムロンヘルスケア株式会社・小池禎氏

最後に、この日の会場となった京都工芸繊維大学の久保雅義教授に、所属する研究センターで実施したUD意識調査の結果をご紹介いただきました。具体的には、「日頃生活をするうえで、どんな不安や使いづらさを感じているか」について、自動車や家電製品、公共施設などの項目ごとに結果を示したうえで、UDを推進していくためには「市民の意識改革、意識の醸成。やさしい心をもった市民風土を作らないと、いくら仕組みや物を整えても良くならない」と、教育が担う役割の重要性について述べられました。


【写真11】京都工芸繊維大学・久保雅義教授

各パネラーの発表が終了後、ビル・グリーン教授に最後のまとめをお願いし、まず、パネルディスカッションからの気付きとして、谷口氏の話を受けて、「UDを進める上でもFUN(楽しみ)」が必要、そしていかに解決するかというときにセンスが必要。これは、障害者とか高齢者とか関係なく、普通の人が求めるものと同じであるという点で、とても示唆のある言葉だった」と話されました。


【写真12】ビル・グリーン氏による講評

そして、来年の国際会議への期待として、「日本はUDを適切な技術によって製品に実現しているという点で、秀でている。そのことを通じて、国際社会に何を訴えられるか、を考えて欲しい。また、この会議が国際的な協力につながること、特に教育の面での協力を期待している。UDに関わる人たちのネットワークは世界中に広がり成熟しつつあるが、同じようなメンバーが同じようなことをいつまでも議論していてはいけないと思う。普遍性や国際性についてもっと議論し、国際社会のUDを大きく前進させたい。そしてデザインに関わる一部の人たちだけでなく、広く国際社会に向けて発信する。そういう会議にしなくてはならない」と締めくくられました。 このお話は、IAUDが目指す2006年の国際会議の方向性と合致する点が多く、関係者は皆、一様に感銘を受けました。


【写真13】手話・同時通訳

また、その後に行われた交流会にも多くの方々が参加して親交を深め、公開フォーラムは盛会のうちに幕を閉じました。


【写真14】交流会の様子

ページトップへ戻る