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21世紀のためのデザインIII、UDに関する国際会議報告 聴講報告

2004.12.20掲載

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聴講報告:Inclusive Design in Practice: a UK Experience

東芝 デザインセンター 富岡 慶


<発表概要>



写真:RCAのプレゼンテーション

Roger Coleman教授ら、Royal College of ArtのHelen Hamlyn 研究所のメンバによるグループプレゼンテーションです。Helen Hamlyn 研究所の概要をColeman氏が説明された後、Working with three design communitiesと題し、「マスターコース学生のプロジェクト」(Rama Cheerawo氏)、「企業デザイナーとの協業」(Julia Cassim氏)、「RCA卒業生との交流」(Jeremy Myerson氏)という3つの観点からInclusive Design(Universal Designとほぼ同義)の取組みを紹介されました。Helen Hamlyn 研究所は4つの社会的なトレンド、すなわち「Age」「Work」「Mobility」「Care」にフォーカスを当て、自立生活(高齢者、障害のある若年者)、オフィスの改善などを研究テーマに、社会的一体性(social inclusion)と全員参画(participation for all)を目指しているとのことです。


「マスターコース学生のプロジェクト」の紹介では、(Inclusiveデザインについて)学生がユーザーと一緒にデザインを行うこと、問題解決型デザインではなく創造的なデザインを行うことが重要とのことでした。「企業デザイナーとの協業」では、工業デザインの知識のトランスファを主な目的としており、「ユーザーフォーラム」と呼ばれるユーザーがデザインに参画するプロセスの重要性を強調していました。「RCA卒業生との交流」は、卒業生とネットワークを組むことでビジネスチャンスの拡大とInclusive Designの浸透を図っているというお話でした。企業との1年間のコラボレーションを通じ、卒業生がプロフェッショナルへの成長を支援しているとのことです。


最後にColeman氏が、「ビジネス」「教育」「研究とデザイン」という3つの観点からInclusive Designにとってのバリアとそれを克服する取組みを紹介されました。「ビジネス」という面では英国デザイン協会とコラボレーションすることでInclusive Designの普及を図っているとのことです。「教育」という面でのバリアとしては,現在Inclusive DesignがRCAにおける正式なカリキュラムとなっていないこと(?)と、Inclusive Design に関する情報とリソース不足を挙げておられました。これらを克服するために、RSA(Royal Society for the encouragement of Arts, Manufacturers and Commerce)とコラボレーションをしているとのことです。また他大学など学術的パートナーとのコラボレーションにより「研究とデザイン」の問題を解決しようとしているとのお話でした。


<所感>

IAUDがコーディネートした特別セッションとスタイル的にも内容的にも近いものでした。今回IAUDがコーディネートしたセッションが「企業におけるUDの実践」であるのに対し、本セッションは「大学におけるInclusive Design(UD)の様々な取組み」の紹介であり、その最先端を垣間見られたことは、企業でUDを実践する立場としても大変勉強になりました。ただ、聴講者の数までもがIAUD特別セッションと同様に期待よりも少なかったことは大変残念でした。


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