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21世紀のためのデザインIII、UDに関する国際会議報告 沖電気におけるUDの実践の紹介

2004.12.20掲載

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発表:沖電気におけるUDの実践の紹介

沖コンサルティングソリューションズ 細野直恒(工博)



写真:発表する細野さん


<講演サマリ>

沖電気では、ユニヴァーサルデザイン(UD)とは障害者の視点から眺めたアクセシビリティと一般ユーザから眺めたユーザビリティの双方を含めたデザインとして捉えています。この考え方は、ロン・メイスのUD7原則とも全面的に一致します。また、現在ISOのガイド71をもとにしたJIS化が進んでおり、2004年の春に制定されました。

ユニヴァーサルデザインは、基本はQOL(Quality of Life)の概念から派生しており、その後90年代後半にヨーロッパのユーザビリティグループが、「製品」「開発プロセス」「組織・人」という3つの構成要素を提案しました。

講演では、沖電気の順番が一番初めだったので、これらの概要を説明するとともに、後半は特に「組織・人」の部分を中心に、電子会議室を活用したグループウェアの例とSOHOを中心とした特例子会社による障害者雇用の実例を紹介しました。


<Q&A>

顧客のUDに関する要求をどのようにしたら反映できるのか、という質問がありました。回答として、顧客満足度(CS: Customer Satisfaction)を上げるため、開発プロセスの中にユーザ中心設計の考え方を取り入れ、プロセスのステップ毎にUDの考え方をデザインレビューやユーザビリティテストの形で反映させるやり方を紹介しました。

終了後や会議の晩餐会などで、参加者の数人の方々から「発表のスライドを貰いたい」と声を掛けられました。QOLを発端とする構成とストーリーづけが良かったようです。


<感想>

ブラジルは、最低所得層の収入が月3000円くらいで、犯罪も多発しています。会議の中で、無責任(irresponsibility)が話題になりました。責任を持たない人々や部分に対しては、UDは適用しても意味が無いという議論です。少し乱暴な言い方かも知れませんが、私も宣(むべ)なるかなと思いました。UDを徹底すると言っても、ある程度余裕が無いとできない話かも知れません。これらはCSRの行き方にも多いに関係することと思います。

以上のようなわけで、日本の活動は各国に大変評価されていました。現在、中国の急進が著しいですが、UDの部分に関してはまだ対応する余裕が無いと思います。したがって日本にとっての立場を明確にして推進することが、世界的な見地からも役立ち、大切かもしれないなと思った次第です。

会議の晩餐会などで各国の関係者と話すと、日本の発表は好評で色々なコメントがありました。特に次の日のセッションで、ロジャー・コールマン教授(Roger Coleman; Royal College of Art, The Helen Hamlyn research centre)によると、日本の場合はただ単に、製品がUD対応というだけでは無く、開発プロセスや組織・人にまで踏み込んで議論を進めているのが素晴らしく、また若い人たちが高齢者問題などに真剣に取り組んでいるのも感心したとの言葉をいただきました。

UDは建築物と情報の両面がありますが、今回の会議では全体的には建築寄りでありました。また課題として、共通項としてのUDに対して個別の対応をどうするかという議論もしたかったのですが、時間の関係で十分にできなかったのは残念でした。このあたりは、ハーバードでCASTのデビット・ローズ教授(David Rose, Harverd university)が、教育におけるデジタル教材に関して、双方をうまく両立させた例示がありました。


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