バナー:国際ユニヴァーサル研究講座 受講生募集中

メニュー

IAUDアウォード2017 審査講評

2018.03.16掲載

LINEで送る

IAUDアウォード2017審査委員長からのメッセージ

IAUDアウォード2017審査委員長/英国王立芸術大学院名誉教授
ロジャー・コールマン

coleman
審査委員長のコールマン氏

毎年、審査委員長を務める私は、応募作品に示される工夫や問題意識、ディテールへの配慮、そしてすべての人がアクセスして楽しめる「Society for All(みんなのための社会)」を実現するという目標に向けた前進に感銘を受け、励まされています。

大賞と金賞、銀賞など、主な賞の授与を通じて審査員は、質の高いユニヴァーサルデザインの実践やその方法、成果、そして全社的取り組みの例を、製品とサーヴィス提供の継続的改善の推進要因として称賛し、推進することを目指しています。IAUDアウォードは、使いやすさや、社会的・環境的持続可能性、包括性、知識移転というユニヴァーサルデザインの主な特質を実証し、ユニヴァーサルデザインのソリューションを提供、または提供を目指して鋭意努力するすべての応募作品に授与されます。審査委員会は特に、ユニヴァーサルデザインの基礎要件である、デザインプロセスへの利用者参加と対話の存在を明確に示すエビデンスを期待します。少数ですが、そのようなエビデンスがない場合には授与されません。

昨年、私を含む審査員一同は、ユニヴァーサルデザインを介した継続的改善が重視されているのを目にしました。これは、製品とサーヴィスを特別なニーズのある人々だけでなく、一般の人のニーズや願いも叶える、真に包括的な形で進化させようとするものです。個人の好みやライフスタイル(使いやすさのソフト面)に注目することにより、ユニヴァーサルデザインは優れたデザインを目指すための戦略であるとともに、思いやりのある「Society for All(みんなのための社会)」を単なる願いではなく、標準として実現するための方向性を示すものであると認識されつつあります。

今年は2つの大賞作品と他の複数の応募作品が、ユニヴァーサルデザインの境界を押し広げ、真に人生を変える利点を提供し、人々をプロセスに参加させ、ユニヴァーサルデザインの特性とそれが達成しうる社会的・個人的利点を引き上げました。

2003年11月のIAUD創立当初、故寬仁親王殿下は、長い歳月の間には、日本内外に大きな変化が起こり、だれもがアクセスできて思いやりのある「Society for All(みんなのための社会)」の実現に向かうと考えられていました。そして2020年、日本がオリンピックとパラリンピックを開催するとき、世界から訪れる人々は、その方向に向けた日本の進化を目の当たりにすることになります。私はこの進化の過程を初めから観察し、参加する栄誉に恵まれましたが、ここまでの進歩は、このコンペティションで主な賞を獲得した応募作品がいみじくも体現しています。しかし日本における、社会変革の推進力としてのユニヴァーサルデザインの成功と、利用者の生活の改善ぶりについては語るべきもっと大きなストーリーがあることと思います。
個々の建物や製品、サーヴィスのレベルでは、ユニヴァーサルデザインはどこまでも願いでしかありません。一つの製品やサーヴィスが人口全体のニーズを満たすなどあり得ないからです。しかし多くの建物や製品、サーヴィス、情報、人間の相互作用が合わさる環境やシステムのレベルなら、完全に包括的で普遍的な、あらゆる社会のためのデザインという目標が現実味を帯びてきます。私の意見では、日本は今、その道においてどの国よりも先を行っています。2020年のオリンピックとパラリンピックではそのストーリーを世界の舞台で語る機会がありますが、その機を絶対に逃してはなりません。日本の事例は真に人を勇気づけるからです。


IAUDアウォード2017 大賞(2件)
IAUDアウォード2017 金賞(9件)
IAUDアウォード2017 銀賞(14件)
IAUDアウォード(14件)
各賞発表に戻る

審査基準

主な審査基準は、「ユニヴァーサルデザイン(UD)の原則が取り入れられているか、またそれを達成するための優れた活動が提案または実施されているか」です。原則の支持およびそこから生まれる活動と行動を踏まえて審査しました。両要素とも全体として包括的に評価されます。また、応募要件の中で言及した審査観点も、評価プロセスにおいて重視されました。

  1. 持続可能性と普遍性:応募作品は、持続可能な共生社会の創造に適した理念と実践を提示しているか。
  2. 多様性と包摂性:応募作品は、伝統や文化、生活様式、そして人間の多様性への理解を示し、少数を排除せず明示的に包含することで、質的に豊かで幸福な暮らしの実現に寄与しているか。
  3. 安全・安心な社会:応募作品は、人権を守り、各個人の人間性を尊重する社会にふさわしい仕組みや制度、モラルの構築に寄与しているか。
  4. 自発的、かつ持続的な対話:応募作品は、企業・行政・研究機関・NPO、そして市民の間の継続的な交流および関係の構築に役立っているか。
  5. 世代を超えた知恵と技の継承:応募作品は、ユニヴァーサルデザインの普及啓発を通じて、次世代を担う人材の育成に役立っているか。



IAUDアウォード2017審査委員会

審査委員長: ロジャー・コールマン(英国王立芸術大学院名誉教授)
副委員長: 益田文和(株式会社オープンハウス代表取締役)
委員: フランセスク・アラガイ(スペイン デザインフォーオール財団代表)
同: トーマス・バーデ(ドイツ ユニヴァーサルデザイン研究所 CEO)
同: ヴァレリー・フレッチャー(米国人間中心デザイン研究所代表)
同: 荒井利春(金沢美術工芸大学名誉教授)
同: 川原啓嗣(名古屋学芸大学 大学院メディア造形研究科教授/名古屋学芸大学 メディア造形学部デザイン学科長/一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会専務理事)



IAUDアウォード2017 大賞(2件)

事業戦略部門
パナソニック株式会社が以下の作品で大賞を受賞:
パナソニックのUDコミュニケーション

パナソニックのUDコミュニケーション パンフレット表紙

パナソニックによるユニヴァーサルデザインへの長年の取り組みが、一貫性のある、アクセシビリティの高いコミュニケーションプラットフォームの形でまた一歩前進しました。ウェブサイトとパンフレット、関連資料が統合され、UDの発展と推進においてパナソニックが国内外で果たしている主導的役割を説明しおよび実証しています。

審査員はこの応募作品を、コミュニケーションプラットフォームにおけるユニヴァーサルデザインの傑出した例として、そしてその前向きで教育的なメッセージを理由に高く評価しました。日本語と英語、さらに点字や、スクリーンリーダー対応のウェブサイト資料へリンクさせる触覚性のQRコードも併せて実装されており、このようにコミュニケーションのすべての要素において固有のアクセシビリティを備える点を主な特長としています。

パナソニックのUDコミュニケーションの詳細ページ

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら


ソーシャルデザイン部門
株式会社LIXILが以下の作品で大賞を受賞:
みんなにトイレをプロジェクト

LIXIL SATO (Smart, fresh toilets)

株式会社LIXILは、開発途上国向けに革新的な低価格トイレソリューションを開発しました。このソリューションでは、スポンサーシッププログラムを通じてバングラデシュの家庭と学校に50万ユニット以上を寄贈し、単価を2ドル以下としてさらに53万ユニットを世界中で販売しました。サハラ以南アフリカでは制約に合わせて派生品も開発されました。また、現地パートナーとの協力により、製造、流通、販売、修理は分散され、現地に雇用が創出されました。

審査員は、このプロジェクトの範囲と規模、熱意、そして模範的な実施方法に深い感銘を受けました。その成果は人生を変える可能性があるどころか、開発途上国の最も貧しい地域で人命を救うイノベーションとなり、ユニヴァーサルデザインに新たな側面を加えるものです。

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら





IAUDアウォード2017 金賞(9件)


事業戦略部門
タカラトミーグループが以下の作品で金賞を受賞:
おもちゃのユニヴァーサルデザイン -- 「共遊玩具」の開発と活動推進のための仕組みづくり

写真:共遊玩具

30年にわたる「共遊玩具」の開発と推進への取り組みが感動的です。一般市場向けのおもちゃに、視覚・聴覚障害のある子どもたちに適合させて使いやすい特性を付加しています。その間にタカラトミーグループは、日本のおもちゃ業界で主導的役割を果たし、使いやすいおもちゃのデザインに関する独自の社内品質基準も確立しました。同社は今も、使いやすいおもちゃ、並びに、業界全体で使用する適切なデザイン基準の推進とキャンペーンに積極的に取り組んでいます。

審査員は、使いやすいおもちゃのデザイン推進と、ユニヴァーサルデザインの原則と実践に重心を置いたブランド価値構築で長年のコミットメントと実績を持つタカラトミーグループを高く評価しました。

タカラトミーグループの共遊玩具の詳細ページ

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら


教育部門
香川県教育委員会/小豆島町教育委員会/国立香川大学/富士通株式会社/富士通デザイン株式会社が以下の作品で金賞を受賞:
ともに学ぶプロジェクト 障がいの有無によらず共に学ぶためのICT利活用

授業の様子

教室の子どもたちを障害の有無にかかわらず一つにまとめ、共に学べるようにすることを目指した、有用かつ重要な共同研究開発プログラム。このプログラムは、日本政府の認める包括的な教育システムと機器が緊急に必要とされていることから策定されました。適切なICTモデルやソフトウェア/ハードウェアソリューションの開発に注力しています。

審査員はこの、特別なニーズと小学校を隔てる壁を打ち破ることを目指した、非常に有望な官民連携プログラムを称賛しました。見込みのあるソリューションと方法論を実証することにより、ともに学ぶプロジェクトは、教育における包括的な未来へとつづく方向性を示唆し、共に学ぶことが多様化を支えるデザインの鍵であることを再確認させてくれます。


医療福祉部門
パナソニック補聴器株式会社が以下の作品で金賞を受賞:
充電式耳かけ型補聴器 R4シリーズ

写真:充電式耳かけ型補聴器R4シリーズ

ユーザーからのフィードバックに応え、パナソニックは、入念に設計された、目立たない補聴ソリューションを開発しました。この密閉型耳掛けユニットは、マイクロホンとプロセッサー、充電池、夜間充電ケース、直感的で使いやすいコントローラーで構成され、さらにBluetooth接続とスマートフォンアプリも付属します。充電池とリモコン、スマートフォンアプリ、そして自動Bluetoothペアリング機能の組合せで使いやすさが大幅に向上しています。密閉構造と非接触充電、そして耳穴タイプのイヤホンにより、お手入れを最小限にとどめながら堅牢性を向上させました。

審査員はこの応募作品を、小型化に特有の相反する長所・短所を的確に解決する、ピンポイントのソリューションであり、それが補聴器における良いデザインのポイントであると説明しました。審査員は、この革新的な製品がパナソニックの補聴器ラインナップに加わり、同社が世界最高のブランドと同じ土俵に立つことを歓迎します。

充電式耳かけ型補聴器 R4シリーズの詳細ページ

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら


住宅・建築部門
三菱電機株式会社が以下の作品で金賞を受賞:
障がいを持った方が快適に利用できる三菱エレベータータッチパネル式乗場登録操作盤

mitsubishi_elv

視覚障害者や対麻痺患者、車いす利用者からなる主要グループとのユーザー研究に基づいてユニヴァーサルデザインを採用したエレベーター制御パネルをデザインしようとする真剣な試みです。このシステムは、ホール用タッチスクリーン操作盤をベースに、呼び出し登録機能を組み合わせており、システムの効率性を最大15%向上させます。一般的なタッチスクリーンのインターフェイスは複数の入力方法をサポートしますが、視覚障害のある人には問題がありました。このデザインでは、ユーザーグループごとに専用の操作モードを設けることで解決しています。

審査員はこれを、プロトタイプ評価と、さまざまな障害のあるユーザーグループを対象にした反復開発に基づいて革新的なアクセシビリティを実現した、大変有望で実用的なソリューションであると考えました。このデザインには使用時の確かな性能評価が必要ですが、三菱電機が研究を続ける中で掲げた目標に近づく大きな前進です。

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら


インタラクションデザイン部門
パナソニック株式会社が以下の作品で金賞を受賞:
車載用高精細ワイドディスプレイミラーレスモニターシステム

写真:車載用高精細ワイドディスプレイミラーレスモニターシステム

従来のバックミラーを、見やすいカメラ画像で置き換えようとするプロトタイプの全周ビジョンシステム。ダッシュボード上のディスプレイパネルをベースとしたこのシステムは、背後と側面の画像を組み合わせ、ドライバーの正面に直接表示します。これにより頭部と目の動きを大幅に減少させ、位置と周辺環境を全周囲的に意識しやすくなります。適切な情報を強調表示するために視線追跡装置が使われており、視認性を向上させるとともに、道路前方からの注意逸散を最小限にとどめます。

審査員はこの全周ビジョンシステムを、先進の実験的な、ドライバーの全周囲的な意識を向上させる近未来の改善策として高く評価します。その空間要素の構造には課題があるかもしれませんが、このシステムは特に高齢のドライバーに自信と操作能力をもたらし、事故を抑制する真の可能性を秘めています。

車載用高精細ワイドディスプレイミラーレスモニターシステムの詳細ページ

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら


プロダクトデザイン部門
パナソニック株式会社が以下の作品で金賞を受賞:
Panasonic レッツ・リモコンAD/ST PN-L90102、PN-L90101

pana_remocon

高齢者や障害のある人のニーズに合わせて設計された、使いやすいテレビリモコン。障害や中~高度の加齢性障害のある人が使いやすいように、すっきりとして機能的かつシンプルなフォーマットの中で多彩な機能を揃えるべく入念に配慮されています。このデザインはユーザーテストで検証済みであり、パナソニックの使いやすいリモコンラインナップを効果的に拡充しつつ、他社ブランドとの互換性も維持しています。

審査員はレッツ・リモコンを、情報と娯楽を主にテレビに頼り、拡大する重要な人口セクターのニーズに応える大変明快なソリューションとして高く評価しました。「使いやすさ」と「特別なニーズ」のデザインを組み合わせ、ユニヴァーサルデザインのソリューションを正統な様式で実現した、優れた事例といえます。

レッツ・リモコンADの詳細ページ
レッツ・リモコンSTの詳細ページ

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら


地域計画部門
公益財団法人こうべ市民福祉振興協会が以下の作品で金賞を受賞:
しあわせの村ナビゲーションアプリ"だれでもナビ"の開発

しあわせの村ナビゲーションアプリ

ニーズや能力の異なるユーザーグループに地域の案内情報を届けることは、アクセシビリティにおいて重要でありながら、過小評価されている側面です。このスマートフォン用ナビゲーションアプリは、車いす利用者や視覚障害のあるユーザーを含むすべての人に、ユーザー固有の障害を回避しつつ、適切で最短のルートを示し、個々に合わせた案内を提供します。

審査員はこの応募作品を、都市環境へのアクセスを改善し、楽しませることのできる実験的で高度に包括的なプロジェクトであると歓迎しました。現在は神戸限定のアプリですが、普遍的なアクセシビリティツールに発展する大きな可能性を秘めています。

また審査員からは、アプリをより汎用的なソリューションとして開発する際には、障害のあるユーザーが、隔離されたアクセスルートに関連づけられないように配慮されるべきであるとの懸念も示されました。

神戸市の総合福祉ゾーン『しあわせの村』


地域計画部門
King Mongkut's Institute of Technology Ladkrabang, (KMITL) Thailandが以下の作品で金賞を受賞:
Development of 'Chao Phraya for All' to Create Inclusive City

antika_kmitl

タイの主要河川チャオプラヤーの両岸に、7kmにわたる公共のアクセス可能で包括的な水辺のアメニティの創出を目指す、模範的でユーザー中心的なデザイン開発研究。35地域の住民と14の国家機関・民営団体も含め、非常に多くの利害関係者に加え、特に高齢者や障害者、低所得のエンドユーザーが意見を求められました。その結果、沿岸14kmを対象に、車いす利用者やサイクリスト、歩行者にとって水辺を大幅にアクセスしやすくし、洪水対策や、河川接続の利便性、町の歴史的景観も改善する、ユニヴァーサルデザインに基づいた6つの開発計画が作られました。

審査員はプロジェクトの高い志と、一貫した計画プロセス、そして模範的な水準で行われた利用者の参加と意見収集に感銘を受けました。特にこのプロジェクトは現地地域の人間環境の多様性と独自性の維持尊重の重視を謳っており、現地の住民と文化の多様性を反映しています。

'Chao Phraya for All'の詳細を動画で紹介しています


サーヴィスデザイン部門
富士通株式会社/富士通フロンテック株式会社/富士通デザイン株式会社が以下の作品で金賞を受賞:
FACT-V現金自動取引装置シリーズ

写真:正面

富士通は18年間にわたり(1999~2017年)、ユニヴァーサルデザインの考え方を自社のFACT-V ATM端末の反復開発に応用してきました。その間にアクセスしやすさや使いやすさを配慮し、高齢者や障害者をはじめとする利用者のニーズを深く理解するために多くの研究開発がなされました。最近の反復開発の例としては、音声ガイダンスシステムや、使いやすいスクリーンデザイン、特に車いす利用者に適したアクセスしやすい構造との組合せや、視認性と主要機能の強調表示を確保するために入念にデザインされたライティングによる補完も含まれます。

審査員は、同社のユニヴァーサルデザインの思考と実践への長期にわたるコミットメントを、傑出した模範例として高く評価しました。このコミットメントが、原則と意図の明確な表現につながり、ユニヴァーサルデザインを介したデザインの継続的改善を促しています。

FACT-V現金自動取引装置シリーズの詳細ページ

取り組みを紹介したIAUD Newsletter(PDF)はこちら





IAUDアウォード2017 銀賞(14件)


コミュニケーションデザイン部門
富士通株式会社/富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社/富士通デザイン株式会社/株式会社NTTドコモが以下の作品で銀賞を受賞:
キッズケータイ F-03J

安心・安全、そして両親の心の平安を重視したデザインで、細やかに配慮された、子どもに優しい携帯電話。6年以上の使用に耐える堅牢な構造と、シンプルで直感的なUIの組合せで、子どもをはじめてのIT機器と現代の通信に親しませ、親子のニーズに応えます。

審査員はこの応募作品を、両親のニーズと懸念を慎重に考慮して子ども向けに製作した、グッドデザインの模範例として称賛しました。対象とする利用者グループの枠を超え、真に家族中心的なデザインとなっています。


コミュニケーションデザイン部門
株式会社モリサワが以下の作品で銀賞を受賞:
Morisawa BIZ+ ~だれもが使えるUDフォント~

株式会社モリサワは慶応大学との共同研究結果に基づき、文書作成のための標準フォントとしてBiz UDを開発しました。同社はこのフォントを、Microsoft Officeに対応する3種の基本書体で無償提供しています。はじめて利用するユーザーには書体テンプレートのセットも併せて提供し、さまざまな人が利用でき、特出した読みやすさと視認性を備えた文書を作成できるようにしています。無償版のMorisawaフォントと並行して先進の購読モデルのバージョンも提供しており、多くを求める利用者のために複数のフォントタイプを含めています。

審査員は非常に重要なコミュニケーション上の課題に基本的なソリューションを提供したモリサワを祝福しました。字体の可読性を深く理解するドキュメントクリエイターは稀だからです。


コミュニケーションデザイン部門
パナソニック株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
作業現場向け骨伝導ヘッドセット

作業場、特に健常者の聴覚が奪われる騒がしい環境下で使用するヘッドホン。既存のさまざまな現場や作業場の安全機器を統合するためにデザインされたこのヘッドホンは、軽量で防水性があり、清掃も簡単です。耳栓や防塵マスクと併用できる点も重要です。工業・製造会社との協議、現地でのプロトタイプ評価、および反復テストにより、デザインの目的への適合性を確認しています。

審査員はこの応募作品を、テキストの予測変換のような、当初は障害者のニーズに応えるために生み出されたデザインやテクノロジーが、世の主流の中で役割を与えられ、取り込まれていく好例として高く評価しました。


教育部門
広島都市学園大学/敬愛大学が以下の作品で銀賞を受賞:
共生・多様性の視点に立った家庭科における減災教育プログラムの開発

広島都市学園大学で開発されたユニヴァーサルデザイン研究カリキュラムの有益な拡張であり、その有効性に関するケーススタディのエビデンスに基づき、2014年にIAUDアウォードを受賞しました。この新たなモジュールでは、可能性のある災害シナリオの影響を想定して抑制すること、特に被災者の生存と具体的なニーズを重視しています。

審査員は、自然災害があれば1人の例外もなく障害を負うということを私たちが経験し、学んできた事実を強調し、被災した状況で人々が直面する課題と問題を深く理解することで、積極的かつクリエイティブにソリューションを探すよう生徒たちを促すアプローチを歓迎しました。


教育部門
富士通デザイン株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
スクールタブレット

教育の場で個人用IT機器の利用が増えましたが、教室との統合を妨げる機能面、実用面の問題点が明らかになっています。富士通は、現場観察調査と、教室でのタブレットPC利用で確認された問題点の評価を経て、この新製品に数々のデザイン改善策を盛り込みました。その結果、耐久性と機能性が向上し、使いやすさや新機能の水準も上がり、学校環境とカリキュラムによく組み込まれるようになりました。

審査員はこの応募作品を、ユニヴァーサルデザインの使いやすさを実証するものとして高く評価しました。このタブレットは堅牢で「カッコイイ」、生徒にとって魅力的なガジェットとして提示されたのです。


住宅・建築部門
錦城護謨株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
屋内空間のアクセシビリティ向上に寄与する誘導マット

従来の「点字ブロック」システムの問題としては、特に車いす利用者と高齢者に関するものが知られています。錦城護謨のソフトマットはシンプルでエレガント、屋内利用用に簡単に設置できるソリューションであり、暫定および恒久的な措置としても適合します。デザインの主な特長は突起のある表面で、視覚障害のある利用者に十分な案内を提供しながら、他の利用者とっての問題も最小化します。

審査員は、旧来の不完全なソリューションから生じた問題に、真に包括的なソリューションを提示した錦城護謨を祝福しました。きっと大きく貢献することでしょう。


住宅設備部門
株式会社ニチベイが以下の作品で銀賞を受賞:
簡単操作のバリアフリー折れ戸「プッシルドア」

高いアクセシビリティを備えた開閉しやすい折れ戸で、中央の継ぎ目に指をはさまない工夫があり、敷居を省略しているため、特に狭い空間では実質的にバリアフリーで入れます。2つのシリーズがさまざまなスタイルとカラーで用意されており、住宅や介護施設、病院、事業用途に使いやすいソリューションとなっています。

審査員はこの応募作品をユニヴァーサルデザインの優れた事例として高く評価しましたが、追加確認用にユーザーテストのエビデンスがあれば歓迎したことでしょう。


パッケージデザイン部門
アサヒビール株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
感性工学を用いた高齢者ニーズ対応の小容量サイズ缶開け易さ向上

ユーザーフィードバックと、高齢化する市場の現実への優れた対応。デザインソリューション自体は独創的ではありませんが、組合せで製品改善を実現しています。レバーのリエンジニアリングで小型缶(135ml)も大型缶と同等以上に開けやすくなり、他の改善策により使いやすさも向上しました。厚さを抑えたことで製品コスト削減につながり、環境に優しい製品となっています。

審査員は、小さくとも効果的な数々の改善を施し、ユーザーと高齢者に優しいデザインを実現したこの応募作品を称えました。


パッケージデザイン部門
アサヒビール株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
「環境」と「人」にやさしい飲料用6缶パックの開発について

過剰包装とその環境への影響について社会的関心が高まる中、市場の現実は人口の高齢化ととともに変化しています。アサヒビールは、顧客からのネガティブなフィードバックに対応することでデザインを進化させる思慮深いプログラムによって、この2つの問題に取り組んできました。デザイン的・工学的改善を組み合わせ、6パックの開けやすさと強度を向上させる一方で、原料と重量を削減しています。その結果、環境にもユーザーにも優しい容器パッケージが誕生しました。

審査員は、この応募作品はデザインの進歩の好例であり、その市場規模から影響力を持つと考えています。


プロダクトデザイン部門
パナソニック株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
家庭用紙パック式掃除機 / Panasonic MC-JP800G/SJP800G シリーズ

パナソニックのユニヴァーサルデザイン(UD)ポリシーの堅持により、この超軽量で使いやすい掃除機を実現。重量削減とデザイン改善により、高齢者にも障害者にも優しく、充実した機能を備え、操作するユーザーへの負荷が感心するほど低い掃除機になりました。この考え抜かれた製品の進化の過程では、デザインとエンジニアリングのあらゆる側面が細やかに配慮されています。

審査員はこの応募作品を、製品の継続的改善と進化におけるUDの見本として称えました。唯一懸念されるのは、パナソニックのUDポリシーの適用が、審査員がUDの基本と見なしている利用者の意見を代替している可能性がある点です。


プロダクトデザイン部門
パナソニック株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
ロボット掃除機「RULO(ルーロ)」/ Panasonic MC-RS800 シリーズ

旧型のパナソニック製ロボット掃除機の洗練された進化形であり、特に障害者や時間のないユーザーに高い効率性とフィードバック、利便性を提供します。ユーザー調査では、掃除の効率性に関する旧デザインの特定の機能について、問題点と懸念が示されていました。それらについては今回の設計反復で、特に空間認識とAI学習機能の組合せで徹底的に対応されていました。

審査員は、特に障害者や時間のないユーザーに使いやすさと効率性をもたらしたそのデザインの進化を重視しました。


プロダクトデザイン部門
株式会社東芝/東芝ライフスタイル株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
コードレスクリーナーVC-NX1/NXS1

ユーザー研究をユニバーサルデザインプロセスの中心とする東芝は、基本的な住居の掃除に関するユーザーの優先順位を確立するために綿密な研究を行いました。この研究が、取扱いと運動性の向上を促す、さまざまなデザイン改善策につながりました。主な特長としては、コードレスのデザイン、自走式ダストキャニスター、握りやすいハンドルなどが挙げられ、これらにより高水準のユーザビリティが実現されています。

審査員はこの製品を、ユーザー研究に裏付けられたユニヴァーサルデザインを効果的に実証するものと見なしています。


公共空間部門
篠原電機株式会社が以下の作品で銀賞を受賞:
多くの方が安全・安心に道路横断するための歩行者信号機用補助装置

この製品で篠原電機は、高齢者や障害者が道路をより安全・簡単に横断できる、既存の信号機への付加装置を提供しています。適切な光と音声による信号が交差点の両側にある低い柱から出され、高い位置からの信号の視聴が困難な人に補助情報を提供します。設置後のフィードバックでは、横断関連の事故件数が大幅に減少したことが示されました。

審査員はこの応募作品を、安全のためのユニヴァーサルデザインの重要な事例として高く評価しました。道路の横断は健常者にとっても生死にかかわる問題です。弱者のニーズをよく理解したことで、このデザインは事故削減に成功していることが既に証明されています。


地域計画部門
DIRTWORKS LANDSCAPE ARCHITECTURE, PC が以下の作品で銀賞を受賞:
The Els for Autism Sensory Arts Garden: An Inclusive Space for Discovery and Enrichment

綿密にデザインされた感覚の庭園は、特に自閉症治療プログラムの拡張に適しています。ごく最近完成したプロジェクトであり(2017年11月)、成否を適切に判断するにはまだ早いのですが、デザインの中心にある品質と配慮が良い兆しを感じさせます。特にこの屋外空間を、従来型の感覚庭園の枠を大きく超えて、治療的環境に仕立てようとする、非常に綿密でありながら包括的な配慮がなされています。

審査員はこの作品が刺激的なイニシアティブになりうると感じました。自閉症中心のプロジェクトであるため包括性は確かに限られますが、フォーカスト・セラピーにおける革新的なイニシアティブとして、現状の提供物の間にある重大なギャップを埋め始めています。





IAUDアウォード2017 大賞(2件)
IAUDアウォード2017 金賞(9件)
IAUDアウォード2017 銀賞(14件)
IAUDアウォード(14件)
各賞発表に戻る

関連記事

ページトップへ戻る