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メディアのUDプロジェクト

2014.04.10掲載

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田渕 健一 副主査

活動テーマ「メディアにおける色」

田渕 健一 副主査

私たちは2008年度から2012年度まで、「メディアにおける色」をテーマに活動してきました。
色に関して日々起こっている不便や危険という現状を踏まえ、
●「多くの人に伝わるイメージ配色の研究」として、カラーUD配色イメージ・スケール
●「多くの人に伝わるグラデーションの研究」として、カラーUDグラデーション
に取り組んできました。
カラーUDグラデーションの詳細は、IAUDホームページをご覧ください。

https://www.iaud.net/activity/2871/



取組み~色のカラーユニヴァーサルデザインを広げる二つの研究テーマ

新テーマ「書体(文字)」


UD書体の特長

2013年度から「書体(文字)」を新テーマとして活動しています。
「UD書体」とは、できるだけ多くの人が「見やすく・読みやすい」を実現するために配慮した書体です。
現在、複数のフォントメーカーがUD書体を販売しています。しかし、各UD書体の特長や効果的な使い方に関して、メディアの作り手であるデザイナーにとって理解しづらい状況があります。また、UD書体を使えばUDに配慮したメディアが作れる、というメディア制作の発注者も見受けられます。
このような経緯から、「書体」を新テーマとして設定しました。



書体における問題意識・課題の抽出


プロジェクトを推進するにあたっての仮説

まずは今後の方向性を模索するために、書体に関する問題意識や課題を洗い出し、ワークショップを開催しました。
初めに、メディアにおける書体の課題に関して仮説を設定しました。インターネットやパソコンなどデジタル化の普及により誰もが自由に多くの書体を選択し、大きさを調整することが可能になりました。
そのような環境を鑑み、私たちは書体自体の見やすさ、読みやすさの評価でなく、見にくさ、読みにくさが起こらないための提言を目指すこととしました。



仮説を検討するためのヒアリング


仮説を検討するためのヒアリング

仮説を検討するために、書体にかかわるステークホルダーを4つ想定しました。

  • メディアの送り手として「メディア制作の発注者」、「メディアを作るデザイナー」
  • メディアの送り手を支える「フォントベンダー」
  • メディアの受け手である「生活者」
2013年度はその中でも、「フォントベンダー」「デザイナー」へのヒアリングを実施しました。その要旨をお伝えします。



ヒアリング(1)株式会社モリサワ 姫井様、阿野様

  • 病気・事故・加齢などで視機能に障害を受けたロービジョン者や、加齢によって近い距離でのピント調節が困難な方を対象とし、フォントの機能の1、可読性、2、可視性(視認性)、3、誘目性(注目性)、4、印象性のうち、1、2、の観点から「読書効率」と「文字の判別のしやすさ」の2点で比較研究を実施しました。
  • UD書体も適正サイズでの使用を推奨しています。それぞれの書体で適したサイズが必要で、小さくてもUD書体を使えばわかりやすいとは限りません。
  • UD書体の有効性に関しては、視機能に障害や困難がある方に、一定サイズを確保した上でUD書体を使用すると、UD書体でない書体と比較して判別しやすい。



ヒアリング(2)株式会社イワタ 水野様

  • 書体を分析・評価する上で、以下の4つの指標を用いました。
    1. 視認性「見やすさ」について、悪条件における文字個々の耐性
    2. 判読性:他の書体との「見分けやすさ」について
    3. 可読性「読みやすさ」について、長文を読むスピードやリズム
    4. デザイン性:美しさ、使うシーンへの適応性について
  • すべての指標を満たす事は困難であり、UD書体は、視認性と判読性に注力して開発しました。
  • UD書体の課題については、UD書体が何にでも使えるという誤解があり、イワタUDフォントは、横組みで短文(約10文字以内)に使うことを想定しており、文章には不適。
  • 書体だけ変更することは危険。見やすくするためには、サイズ、行間と字間、書体が大切であり、適切な組み方、レイアウトが必要。



ヒアリング(3)グラフィックデザイナー 永原様

  • 文字のユーザビリティについて、ユーザビリティの指標は3つ考えられ、視認性 見やすさと、可読性 読みやすさと、判別性 間違えにくさ、となります。
    UD書体のような「判別性」に配慮した書体でも「視認性」か「可読性」のいずれかに特化します。
  • 書体の選定は、どのメディアで、どういう風に伝えたいかによって、書体選定・組み方・行間に配慮し、使い分けることが重要です。
  • 仕事でUD書体の使用経験はあるが、常に主にUD書体を使うわけではありません。絶対に読み間違ってはいけない箇所に、担保としてUD書体を使うことを検討しています。



ヒアリングからの気づき

  1. 伝えるメディア、伝えたい意図によって書体は選定される。UD書体を使えば、必ず見やすさが確保されるとは限らない。
  2. UD書体の特長を踏まえて使用することで、視機能に障害・困難を持つ方に対して判別しやすくなる。正しくUD書体を使うことで、「読みにくさ、見にくさ」が軽減できる可能性がある。
  3. 視認性、判読性の向上は、UD書体の使用と同時に「文字サイズ・文字間・行間」等が重要である。
私たちは社会に対して、メディア表現における情報保障への配慮を提唱することを目標に、今後も積極的な活動を展開していきます。


衣のUDPJ

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