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21世紀のためのデザインIII、UDに関する国際会議報告 クリチーバ都市計画視察

2004.12.20掲載

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クリチーバ都市計画視察

東陶機器 戸村哲次郎
日立製作所 久保田太栄
日産自動車 上田太郎


クリチーバ市はブラジル南部、パラナ州の州都にあたる人口160万人の都市で、明確な都市計画に基づいて建設された環境都市としても有名です。12月7日、このクリチーバ市の都市計画に関する視察を行いました。



写真1:都市交通公社総裁ご挨拶(写真右)

まず私たちは、都市交通公社(URBS)を訪問し、公社総裁 Sergio Galante Tocchio(セルジオ ガランテ トッチオ)氏のご挨拶をいただき、続いて都市計画の紹介ビデオ、そして輸送部門の責任者Luiz Fila(ルイス フィーラ)氏より詳細な説明をいただきました。

フィーラ氏によると、人口増加に伴い1970年代に始まった本都市計画は、「市民の要求に応えていくことを第一に考え、技術がそれを実現していく」という一貫した人間中心都市を目指してきたのだそうです。しかも交通だけではなく、土地利用や商業計画、リサイクルなどもシステムとして一緒に考えてきたことが大きな特徴です。例えば、市内の幹線道路の整備は土地利用と共に計画され、幹線道路は中央のバス専用レーンを挟んで両側に一般車用の一方通行レーンが伸びています。高層建築はこの幹線道路を中心にのみ建設可とするなど、厳格な規制が設けられ、公共設備と商業施設、住宅を結ぶ新たなる交通の利便性とビジネスのパイプラインを生み出しているのです。


写真2:市内道路の一般車レーンとバス専用レーン 写真3:クリチーバの土地整備風景(テレビ塔展望台より)

クリチーバは独自のこのシステムをサスティナブルな都市計画として、今や近郊の25の都市と連携を持ち、現在は1日2万3000便、220万人の乗客を運ぶバス交通システムを運用しているそうです。バスステーションへは市内のどの場所からも徒歩でたどり着け、自動ドアシステムとカードによる乗車プリペイド方式を導入、スムーズな移動と待ち時間の減少を実現しています。高齢者や障害者は無料でバスを利用できます。

私たちは実際に市内のチューブ型のバスステーションとバスの試乗を体験してきました。ステーションの入口は、車いす使用者が利用できるよう歩行者と同じ入口に昇降機が整備され、先払い形式の改札システムも十分な広さを確保していました。

一方、メインの国際会議に先立ち10日間コースに参加した半数のツアー参加者は、広大でスケールの大きなブラジルの大自然を満喫でき、時間にとらわれず、常に陽気なラテンアメリカの中心であるブラジル人の源流を感じ取れたことと思います。


写真4:チューブ型バスステーション 写真5:チューブ改札入口の車いす昇降機

チューブ内にベンチはありませんが、ちょい掛けできる円柱状のバーが設置されていました。この日、試乗しようとしたバスがたまたまトラブルで遅れ、バスは満員状態でしたが、誰も文句を言う人は見当たらず、電動車いす使用者や幼児連れのお客も普通に乗車していていました。スムーズなシステムができると、人の心も穏やかになれるのかも知れません。6色からなる運行種類を表すカラフルなバスは、見た目にも楽しく、また分かりやすいのが大変印象的でした。


写真6:チューブ内の様子(バーに腰掛けて待つ客) 写真7:バスの乗降風景(足元は自動搬出ステップ)


写真8:空港の分別ごみ箱

また、衛生環境面では、不衛生からスラムでの子どもの死亡率が異常に高くなった課題に対し、ごみを分別収集する市民に対価を払い、教育や家庭に向けた指導を行うなどスラム化を防止し、今では市民の95%が分別収集に参画しています。確かにスラム街でごみの分別収集をする光景や資源回収車が多数、見受けられました。クリチーバ空港には、分別として、かわいらしく色分けされたごみ箱もありました。

発達する都市の中で、人の生活を第一に考えた交通システムと綿密な環境計画が、人々の生活の満足を生み出していく事実を私たちは実感し、とても有意義な視察となりました。


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