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日本の自由・平等・友愛の考えをグローバルに広めて欲しい

2013.03.14掲載

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写真:フランセスク・アラガイ氏

フランセスク・アラガイ

デザインフォーオール財団代表 : スペイン

■インタヴュアー:秋谷 英紀(トヨタ紡織)
■日時:2012年10月12日 18:00~

プロフィール


―2003年にIAUDが設立され来年で10年になりますが、この10年で、日本のユニヴァーサルデザイン(以下 UD)がどのように進化したとお考えになりますか?


フランセスク・アラガイ(以下 アラガイ):非常に素晴らしい成果をあげていらっしゃる。驚くべき進歩を遂げていらっしゃると思います。私は日本の取り組みについてニューヨークで開かれました2000年の会議で知るに至りました。日本の国は有形のモノのみならず、概念についても大きな進歩を遂げていらっしゃったと思います。



―2つ目の質問です。UDに関して、アジア地域における日本の役割はどうあるべきだと感じていますか?


アラガイ:全体的にみれば、商業的な関係というのは地理的な近さからアジアの国々への影響が強いと思われます。しかし、日本の影響はグローバルに及ぼすことが可能だと思っております。昔から協力をしていく事で途上国との関係を緊密にしていらっしゃったというのがあるかと思います。この時にユニヴァーサルデザインの戦略というもの使ってこられたでしょうし、その事も影響の強さに関係があるのではないかと思います。

日本の方々は、アジアの方々をよくご存知だと思います。また、日本は共感に溢れた社会であると私は思っております。ですから、アジアの国々に対して、この共感という考え方を広められてはいかがかと思います。



―共感というものを広げていけるほど、今はもう日本は成熟していますか?そのタイミングにあると思いますか。


アラガイ:そう思います。この世界には資本主義が溢れており、この中でヨーロッパと日本に共通するところと致しましては、文化に対する考え方、そして人間性というのがあると思います。もし我々が幸運であれば、こうした価値観が、世界の他の地域の方々に影響を及ぼすのではないかと思っています。そしてお互いこの地球にあるもの全て、そして人の尊厳というのを尊重していく、こういう事において、日本はアジア地域において大きな役割を果たせるのではないかと考えています。



―東日本大震災を機に、日本やアジアに住む方々の安全・安心に対する意識が大きく変わりました。「今後起こりうる自然災害から安全に命を守る」「震災後に取り組むべき、安心した日常生活の回復」 は日本にとって切実な課題です。こうした「命を守る」「安心した日常生活の回復」という観点とサスティナブルな社会実現へ向け、どのように取り組んでいくべきだとお考えでしょうか?


アラガイ:そうですね、非常に重大なコメントという事になりますので、その前にいくつか申し上げておきたいと思います。日本を襲ったような災害の中では、人は非常に弱いものです。ですから、自然の力は強大であり、人間は脆弱なものであるという事を私たちは常に心に留めなければなりません。

2つ目でありますけども、こういう危機的な状況下にありまして、日本の方は気付かれたのではないかと思います。最も弱い人たちが最も守られなければならない人達だという事に。

そして3つ目ですけども、最近気付き始めた事なんですが、日本という国が能力を持っていらっしゃるという事ですね。復興というのも非常に迅速に進んでいらっしゃいますし、災害の後に気付いた事や学んだ事を活かして製品を開発する会社というもの最近目にし始めたというように思います。日々の日常生活の中では、通常の使用法というのがあるんだけども、それに追加して災害時には別の使用法ができる、そういう事が可能になるような製品、そして災害に直面する人を救助できるような製品、こういうものを目にし始めています。

また、明日私の発表の中で申し上げるつもりですけども、日本の方は他の海外の国々と違うところを持っていらっしゃるという事です。フランス語にもそういう言い方があるようですけども、リベルテ、エガリテ、フラタニテという言葉があります。リベルテというのは自由ですね。そして、エガリテというのは平等、そしてフラタニテというのは友愛という意味です。この日本で気付かれた事と思いますけども、災害は私たち全ての人間を同じ立場におきます。ですからこれで、平等が経験されたという事ですね。なぜかというと全員が同様に非常にひどい状況を経験しなければならないからです。

フラタニテ=友愛にのっとってのみ自由を回復できます。私が思うに、このような大きな災害を乗り越えられた後、他の国の人々であれば、あのように人々が互いを思いやり、過ごしていかれる事はなかったのではないかと思います。略奪も暴力も暴動もなかった。そういう意味で日本は素晴らしい国だと思っております。



―今おっしゃった日本のどのような部分にフォーカスすれば、サスティナブルな社会実現につながると思われますか。具体的にアイデアは何かありますでしょうか。


写真:フランセスク・アラガイ氏アラガイそうですね。地理的に考えますと、日本というのは、例えば原油等の天然資源には恵まれない国であります。今や原子力発電所というのが事故を起こしまして、安全ではないから原子力をなくしたい、という方向に向きつつあるように思われます。しかし、この日本という国はですね、エネルギーがなくて何を生産できるんでしょうか。例えばですね、もしかすると、太陽光発電あるいは風力発電という事をお考えなのかもしれないですけども、こうした所から発電できる電力量というのは、非常に限られています。ですから、これを考えますと、2つしか選択肢はありません。1つは、海外からエネルギー源を輸入されるか、あるいは、原子力をそのままお使いになるかです。近年において、日本は今までよりもずっと、ご自身の考え方あるいは日本で生まれた考え方の輸出国になられたと思います。こういう考えの輸出というのは、例えば製品をつくったり現材料を輸出するという事と比べますと、非常にエネルギー消費が少ないものであります。ですから、日本にとっての良い戦略としては、日本でデザインを行って、エネルギーが豊富な他の国で生産して頂く。たくさんのエネルギーを使わないで考えを輸出していかれることも、1つの方法ではないかと思います。



―いいアイデアですね。確かにどのようにしてエネルギーを得るかは難しい問題です。


アラガイそうですね。ヨーロッパはノルウェーを例外としまして、エネルギー源、天然資源というのには、恵まれていない大陸であります。ですから、私どもとしても、アルジェリア、ロシア、アラブ諸国、から輸入しています。そして生産については、大部分を中国で生産しています。ですから、これからの課題としてはですね、生産量を減らして、生み出される付加価値を高くするということではないでしょうか。例えばトヨタの様にですね、このバルセロナにいらっしゃれば、タクシーがほとんどハイブリッドカーである事をご覧になって、驚かれると思います。タクシーの運転手に話を聞きますと、論理は明快です。1ヶ月で160から180ユーロ、ハイブリッドを乗ることで節約する事が出来ると。そしてもう少し耐久性をよくしてもらえば、もっとその節約額というのは増えていきます。ですから、これからの戦略としては、車という意味で言えば、車体全部を買い替えるというのではなく、悪くなった部分だけ交換するというような考え方もあるのではないでしょうか。

例えば、ヨーロッパにおいてはですね、列車の車両というのは、30年、イタリアでは40年、平均で使われています。新車に替えて15年くらい時間が経つと大きなリニューアルメンテというのを行います。そこから、更に15年とか20年間、この列車の寿命が延びるわけです。ですから、これからの戦略としては、リサイクルする事ではなくて、このように寿命を延ばすというのがあると思います。



―今後さらに日本におけるUD活動に期待されることはありますか?


アラガイ現在IAUDの方とこの話をしている最中です。イギリスのヘレンハムリンデザインセンターやノルウェーのデザイン協議会、アメリカのパサデナにあるアートセンター・カレッジ・オブ・デザインともこのコミュニティを1つのものにする議定書のようなものをつくれないかという考えを今検討中であります。考えを行動に移すための手段としてそういう事を考えているわけです。世界中で環境についてなどいろいろな宣言がなされており、こういったものは次々調印されています。しかし、私共は、日に日に向上をしていく必要があるんです。ですから、より多くの方々を巻き込んでいくために、ツールが必要なんじゃないかという風に思っています。様々な方々に関与をしてもらう事を容易にしていくためのツール、UDを広げていく為のツールが必要なんじゃないかと思っております。

日本のユニヴァーサルデザインについての、推進役というのは日本企業で、リーダー役をしてらっしゃると思います。ですので、このような日本企業におかれましては、ユニヴァーサルデザインの推進者として、グローバルに行動していただきたい。そしてこの考え自体を他の会社も取り込んでいけるように、関与させていかなければならないという風に考えています。


―ありがとうございました。



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