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現在、インドのデザイナーの多くはUDについての経済的、社会的、心理的な問題についてほとんど理解していません。彼らはUDを障害者のためのデザインや高齢者のためのデザインなどと混同したり、UDを高価なデザインであると見なすなど全く誤った考えをもっています。本当のところUDは高価でも複雑でもありません。デザインしたり企画するにあたっては多様性へのちょっとした配慮が必要なだけです。次に掲げるような小さな、費用のかからないアイデアが、我々の生活に世界に通じる質を作り出すのに大いに役立つでしょう。
UDを取り入れたデザインには次の要素が求められます。
どの業界でも株主に対する責任として利益が最優先されます。これを受け入れることでUDが必ずしも利他主義とはならないと申しあげておきます。UDは次の理由からグッドビジネスです。第一に、人口の多様性が巨大化しまた増大しているため、UDはグッドビジネスとなります。財界指導者C.K.プラハラッド(C.K. Prahalad)が述べているようにピラミッドの底辺に幸運があるとするなら、私に言わせればピラミッドの側面にも幸運があります。どの経済的階級にもある一定の割合で違いをもつ人がおり、また緊急にデザインを必要とする人がいます。この分野はとても巨大で急成長しており経済性あるマーケットです。
第二に、社会が真価を認める場合にのみビジネスが成り立ちます。UDはそのような社会的に認められた真価をもたらします。
第三に雇用の人材です。違いや障害は、革新的に用いられれば強みとなりえます。伝説的なクリケット選手チャンドラセカール(Chandrasekhar)は、ポリオに冒された四肢により“普通の”クリケット選手より優れたレッグスピン選手になりました。
結論として再度申しあげたいことは、UDの目的は人々の多様性に対応した製品を創っていくだけではなく、人間の多様性に対する我々の姿勢を変えることであり、また多様性を統合させ褒め称えることです。
多様性(障害を持つ人や高齢者を含む)というのは他の誰かの問題ではなく、我々自身の問題です。我々は皆、生命のいずれかのステージにおいて、高齢となり、病気となり、制約を体験していきます。我々自身が年とともに異なっていきます。今日の社会におけるもっとも大きな不幸は、“違い”というものの良さを認め、“他者”を受け入れる能力が欠けていることによるものです。我々は皆これを社会の一部としてとらえ、特にデザインを職業とする人たちの責務として取り組まねばなりません。なぜなら、白色の光を放つ生命は総ての異なった色から成り立っているからです。
※本論文は2008年7月18日Jamasetji Tata Trustが主催し国立デザイン協会で開催されたセミナーでの基調講演の一部です。