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特集:towards2010「京都から浜松へ:ユニヴァーサルデザインをめぐる考察」3/3

2010.05.24掲載

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浜松に寄せる期待

概要を述べるための短い記事の範囲では、上に触れてきたさまざまなテーマについてこれ以上掘り下げて述べることは困難ですが、次回の会議となる「第3回国際ユニヴァーサルデザイン会議2010 in はままつ」を念頭に置いて私たちが考えるべきことの枠組みを提供するという意味では、いずれも重要なテーマばかりだと私は思っています。私がこの記事で試みたのは、浜松での会議の前、会議中、そして会議の後に議論をし、考察するべきだと自分が考えているいくつかのテーマを提示することです。ユニヴァーサルデザイン運動の大きな課題は、こうした問題に対する対応策を取り込み、ユニヴァーサルデザインを「グッドデザイン」の不可欠な要素として「ノーマライズ」していくための効果的な方法を見い出すことです。私たちは、Victor Papanekが自己中心的なデザインを批判したときに取った立場を堅持する必要があります。また、Graham Pullinの主張にも耳を傾け、先進的なデザインの最良のものが持ちうる力と創意工夫を大いに活用する必要があります。そして私たちは何よりも、良きにつけ悪しきにつけ、その大部分がデザインによって作られた作為的で「不自然な」世界に自分たちは生きているのだということを忘れないようにしなければなりません。私たちは、今や職場での喫煙が多くの国においてそうなっているように、デザイン排除に対してノーを突き付けられるよう、世論を動かすことに力を注ぐ必要があります。

日本の文化に関して私が非常にすばらしいと思っていることの一つは(実は初めて京都を訪れた時にすでにはっきりとそのことを意識したのですが)、一見ちぐはぐに見える物事をまとめて捉え、それらの間の緊張感や互いに惹き合う様子を味わう感覚を持ち合わせている点です。たとえば碁盤の上に置かれた2つの石がそうですし、建物の内側と外側もそうです。それがどのように周囲に溶け合っているかを味わうことができ、さらには芸術性の非常に高い工芸品と家庭で使う地味な品とに等しく価値を認めることができるのです。私には、西洋的な見方は対象を孤立させて捉える還元主義的なもので、物事を分離して把握する傾向があるのに対し、東洋的な見方はより融合的、全体的であるように思われます。この違いはユニヴァーサルデザインにとっても大きな影響があります。西洋的な見方でユニヴァーサルデザインに接すると、さまざまな問題、課題、あるいは要因をそれぞれ個別に取り上げる傾向が強く出ることになります。したがって、年齢と障害についても、「障害を持った人々」のように考えて、個人に悪影響を及ぼすものとして捉えることになります。そのような考え方では、年齢や障害を---ライフスパン全体を通じて---連続するものの一部と見なし、若さや能力とも共存しうる、社会集団の豊かな側面として捉える視点が欠けることになってしまいます。この短い記事の中で私が強調したかったのは、個別のユニヴァーサルデザイン製品やサービスの視点ではなく、ユニヴァーサルデザイン社会という視点で考えることの必要性、分離ではなく統合というレベルで考えることの必要性です。そして、私がこれまでに触れたすべてのテーマ、すなわちヘルスケアにおけるエヴィデンスに基づくデザイン、デザインインテグレーション、インフラと公共輸送、「高邁な」デザインとユニヴァーサルデザインの統合、国境を越えた協力、研究と知識の移転、および過去の過ちから学ぶことは、いずれもそうした必要性のさまざまな側面を表すものなのです。

以上、私の考えを述べさせていただきました。浜松で皆さまにお会いできるのを楽しみにしております。

参考資料:

1. Coleman R. (editor in chief 2009) A Collection of Keynote Addressses: proceedings ofthe 2nd International Conference on Universal Design in Kyoto 2006, IAUD, Japan.(『「第2回国際ユニヴァーサルデザイン会議2006in 京都」講演集』)

2. Clarkson P, Buckle P, Coleman R, Stubbs D, Ward J, Jarret J, Lane R & Bound J. (2003)Design for patient safety: a system-wide design-led approach to tackling patient safetyin the NHS, Department of Health Publications, London, ISBN 1-84182-765-7

3. Clarkson P, Buckle P, Coleman R, Stubbs D, Ward J, Jarret J, Lane R & Bound J. (2004)Design for patient safety: a scoping study to identify how the effective use of designcould help to reduce medical accidents, Engineering Design Centre, University of Cambridge,UK, ISBN 0-9545243-0-62

4. Papanek V. (1971) Design for the Real World, Paladin, UK 1974 edition(邦訳:『生きのびるためのデザイン』、ヴィクター・パパネック著、阿部公正訳、晶文社刊、1974 年)

5. Pullin G. (2009) Design meets Disability, MIT Press, London.

6. Jan Michl. "[Book review of] Widengren, Gunilla, ed. Tanken och handen: Konstfack 150år [The Idea and the Hand: University College of Arts, Crafts, Design and Art Educationin Stockholm is 150 years]. Stockholm: Page One Publishing 1994." Scandinavian Journalof Design History, vol. 7 : 149-154, 1997

7. Gheerawo, R & Lee Yan Ki. (2009) Enabling People: creating inclusive human-computerinteractions, proceedings UACHI 2009, Springer.

過去の繰り返し- ウェブリンクとプロジェクトの簡単な説明

http://www.hhc.rca.ac.uk/976-1327/all/1/Communication_in_transition.aspx
高齢者を対象としたNokia社とのプロジェクト。アイデアの要点:ティーンエージャーだけでなく高齢者も生活環境の激変を経験する。

http://www.hhc.rca.ac.uk/976-1334/all/1/The_sound_of_North.aspx
視覚障害者の道案内に技術を応用。新しい動画はhttp://www.vimeo.com/4783510 で参照可能。

http://www.hhc.rca.ac.uk/976-1341/all/1/Seamless_mobility.aspx
BlackBerry社のための7つの新しいサービスに関するデザインコンセプト。アイデアの要点:技術を賢く使うことで仕事と生活をシームレスに融合することが可能にする方法。

http://www.hhc.rca.ac.uk/1788-1831/all/1/TwoTone_Phone.aspx
BT社のボタンの大きな電話の発展型。アイデアの要点:デジタル時代において最も排除されている人々(すなわち70代以上の人々)にブロードバンドのメリットを享受してもらう方法。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2006/p4.html
BlackBerry社のためのもう1つのプロジェクト。(技術に合わせて家族のコミュニケーション方法を変えるのではなく、逆に)技術を家族のコミュニケーション手段として利用する方法を提案。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2005/pX4.html
溢れかえる技術とクルマのダッシュボードの構成とのバランスを取る方法。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2005/pX1.html
公共スペースでのふれあい促進に照明技術を使う方法。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2005/pX3.html
家の中のデジタルオブジェ。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2004/ra04p2.html
Orange社のためにユーザー中心の種々の医療シチュエーションを想定。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2004/ra04p9.html
ドライバー不要の低公害車を技術によって実現。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2003/jac.html
視覚障害と記憶に焦点を当てたHewlett Packard社との実験的プロジェクト。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2002/ednrich2.html
センサー技術の新しい利用法に着目したOmron社のプロジェクト。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2001/nick.html
センサー技術を使って人の移動を容易にするOmron社のプロジェクト。

http://www.hhc.rca.ac.uk/archive/hhrc/programmes/ra/2000/bryn.html
家電のデザインとインタフェースを改善するためのDyson社との共同プロジェクト。




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