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「Include 2005」国際会議への参加報告

2005.07.28掲載

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国際委員会 委員長 小山登(トヨタ自動車)


4月5日から8日まで、英国ロンドンで開催された国際会議「Include 2005」に、IAUDとして参加する機会を得ました。


この会議への参加については、2004年12月に開催されたリオのUD国際会議でのIAUDセッションが大変話題性が高く好評であったことを受け、当協議会のメインコンサルタントで同会議主催者でもあるRoyal College of Art(英国王立芸術大学)にあるHelen Hamlyn Research Centreのロジャー・コールマン氏から要請されたもので、国際委員会として前回のセッションを取りまとめる形で参加することとなりました。


国際委員会としては、この会議への参加に際していくつかのねらいがありました。 一つ目は、「Inclusive Design」に関する国際会議ということで、日米で主に使われている「Universal Design」に対し、欧州(特に英国)で使われている「Inclusive Design」についての意味合いをつかむこと。二つ目は、欧州におけるUDの動向を探ること。そして三つ目は、ブラジル・リオでの国際会議に引続き、UD国際会議の運営等を学ぶことでした。



写真1:メイン会場の様子

会議は Royal College of Art の施設で行われ、5日夕方の「Opening Plenary」で始まり、6日朝のIAUDの「Breakfast Briefing」を皮切りに、各会場にて熱のこもった発表が展開され、8日の「Closing Plenary」に至るまで、大変有意義な会議参加となりました。特に、学校関係者やデザイン事務所が中心の発表などが多く、企業関係者が中心の日本の会議と違い、どことなく研究的・学究的な雰囲気があり、新鮮に感じました。


一つ目の目的である「Inclusive Design」の意味合いについては、会議内容や主要な方々との懇談から以下のようなことが分かりました。これも今回の会議参加における大きな収穫でした。


写真2:IAUDセッションでの発表風景

日米では「Universal Design」(UD)という言葉が多く使われていますが、欧州では英国を中心に「Inclusive Design」という言葉が使われています。定義を直訳すると「デザイナーやメーカーが、彼らの製品やサービスがより多くの潜在的なユーザーのニーズに的確に対処することを保障するプロセス」ということになります。もう少し分かりやすく言うと、障害者や高齢者に限らず人々は体形や趣向など、おのずと違うもので、「ユニヴァーサル」イコール「万人」という言葉に抵抗感を感じていて、一つのデザインをすべての人々に合わせること自体難しく理想形に近いということです。それよりも、より多くの人々を包括(Inclusive)する魅力的なものづくりに向けた試みが始まっており、それが「Inclusive Design」であるということです。


なお、主催者の一人であるジュリア・カセム氏へのAXIS誌のインタビュー記事を引用すれば「インクルーシブデザインは、特定の人々をターゲットにしながらも、他のマーケットをも魅了し、包括する可能性を秘めたデザイン開発のプロセスを意味する」となります。また、この「Inclusive Design」を実現しようとする人々を支援する国際的プログラムを「Include」 と言います。

どちらも行き着く先は同じとしても、華々しく理想を掲げて取り組む米国に対し、精神論的に地道に取り組む英国スピリットを感じます。


二つ目の目的である欧州におけるUDの動向については、3月3日の活動・成果報告会で紹介した「Adaptive Environments」のヴァレリー・フレッチャー氏のコメントにもあった米国の状況と同様、具体的な製品にまでUDを落とし込んでいる事例は少なく、その点では、日本の方が一歩進んでいるように感じました。一方でUDに関する研究が進んできており、政策や整備計画、あるいはデザイン教育の標準カリキュラム等の分野に、幅広く取り入れることを考えていて、EU委員会と多くの国々がこの研究に投資しているとのことです。



写真3:IAUDセッション後の質疑応答

最後に、三つ目の目的である会議の運営等に関して学んだことは、今回この会議で初めて試みられた新しいイヴェントが、会議参加者に話題を提供し、多くの参加者を集めていたことでした。
それは、「24 Hour Inclusive Design Challenge」というイヴェントで、5チーム(各チームには一人障害者を含む)が挑戦し、24時間で「Inclusive Design」の提案を発表するというもの。この様なイヴェントは、2006年に開催を予定しているIAUD京都国際会議の参考になる内容であり、ぜひこれに類する話題性のある内容を提供すべきだと考えています。


以上のように、今回の国際会議「Include 2005」への参加は多くの収穫を得ることができ、また多くの方々と交流することもできました。国際委員会の大きな使命の一つである国際ネットワークづくりに貢献できたような気がします。これからも、当委員会として国際会議やイヴェントに積極的に参画していきたいと考えています。

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