バナー:国際ユニヴァーサル研究講座 受講生募集中

メニュー

IAUD特別公開セミナー開催報告(5)

2005.03.28掲載

LINEで送る

パトリシア・ムーア氏講演 「UD・世界の潮流と課題」(要約)


3. デザイナーの役割

いくつになってもその人の人生を幸せで、豊かで、クオリティーの高い、十分に満たされたものにするのはデザイナーの役割なのです。例えば、80歳、90歳になった人たちが絵を描いている、音楽を楽しんでいる。家族と愛しながら暮らしているのは本当にうれしいことです。あの人はいくつなどという数字なんて関係ないのです。デザインさえ良ければ年など関係ないのです。

高齢化や高齢者とは、ある意味で医療の定義に過ぎず、それでは高齢者(elderly)は、病める人で自立した生活ができない人だということになってしまいます。単に年をとった人とは違うのです。むしろ、年長者や長老(elder)と呼ぶべきなのです。長老とは、その社会の尊敬すべき年長者です。部族の長老は酋長でした。若い人達が、ものを尋ねに行く、わからないことを教えてもらう、知識を授けてもらうために訪ねていた人たちこそ、年長者であり長老だったのです。日本でも、年長者や長老を尊敬すべきだということが忘れられてしまっているのではないでしょうか。長く生きて、その社会における重要な役割を果たしてきたことが、若い人達に忘れられてしまっています。アメリカでも同じで、大きな社会問題になっています。若い人達が、長老を無視しています。世界中どこでもそうです。長老は、社会の豊かな資源とみられないで政治的な欠陥だと思われています。それを正さなければなりません。生から死までの人の一生涯を通して、幸せに暮らせる場を提供するのがデザイナーの役割なのです。


企業の利益につながる商品を作るということをはるかに超越して、デザインは現在、そして未来の消費者のニーズに応え、その人たちの生活の質を向上させています。そして、そうすることで企業もまた生き残ることができるのです。今日のビジネス環境において、成功する企業とは、すべての人を等しい人間として扱い、すべての人のためにデザインを行う企業です。



写真5:サインに応じるパトリシア・ムーア氏

アイルランドのダブリン大学、トリニティカレッジで講演した際に、次のような祈りを捧げました。最後に皆さんにもお伝えしたいと存じます。


「あたたかさは愛情であり、その愛情によって人は包まれます。善をあなたの友とし、また真実を友としなさい。そして絶えずそれを行うことを約束し、何をする時もそれを役立てなさい。家族を大切にし、また健康を尊び、人の命を大事にし、そして幸せと喜びを十二分に感じて暮らしなさい。」


(要約文責:川原啓嗣)


3月28日特別公開セミナー報告トップページ
講演要約
1. 「あの人たち」のためのデザイン
2. デザインが可能にするもの
3. デザイナーの役割
ページトップへ戻る