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スカンジナビアデザインと日本の技術を融合し、素晴らしい製品を創造するのが私の夢

2013.03.14掲載

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写真:オンニ・エウクハウグ氏

オンニ・エウクハウグ

ノルウェーデザイン協議会プログラムリーダー : ノルウェー

■インタヴュアー:秋谷 英紀(トヨタ紡織)
■日時:2012年10月12日 19:00~

プロフィール


―2003年にIAUDが設立され来年で10年になりますが、この10年で、日本のユニヴァーサルデザイン(以下 UD)がどのように進化したとお考えになりますか?


オンニ・エウクハウグ(以下 エウクハウグ):私自身はUDについて着手し始めたのは、2005年ですので、私がこのユニヴァーサルデザインに興味を持った事でIAUDを初めて知るに至りました。ですから、過去10年間全てについて話をする事はできませんけども、私がUDを始めてからの期間について、という事でお話をさせて頂きます。私が2005年にUDに着手し始めた当初からすでにIAUDは結果を出していらっしゃいました。というのは、すでに実際に商業化された事例があった訳です。ですから、この考え方でいいんだという良い証左になりまして、ノルウェーの方々を説得する良い材料にする事が出来ました。これが非常に良い戦略であり、確信をもたらすものであり、そして良きビジネスにもなり得るのだと説得する事が出来ました。初めて日本に参りました時にはすでに解決策を盛り込んだものが市場に販売されている状態でありました。ヨーロッパではこういうものは入手する事は出来ません。例えば好例としてはトヨタ、パナソニックその他の会社があるでしょうし、他のブランドとしてはTOTO、積水のようなところがあると思います。こういった会社の例につきましては、私のプレゼンテーションおよびUDに関する著作にも、私が目の当たりにしたものを例として挙げさせて頂いております。

ここからが私のお願いという事になりますが、日本のこうした企業の方々におかれましては、こういった自社がつくってらっしゃるソリューションを、ヨーロッパにも輸出して頂きたいというのがございます。これはヨーロッパの地域色に合わせて、少し最後の仕上げを変えるなどが必要になってくるかもしれませんが、技術的な解決策には非常に大きな可能性があると思います。ヨーロッパでも人口の高齢化が進んでおりますので、このような製品はどこでも必要とされていると思いますし、日本の企業にとっても大きなチャンスになるのではないでしょうか。



―スカンジナビアンデザインはUDの最先端だと思っておりましたが、これほど日本に注目して頂いていたのですね。


エウクハウグ:本当ですよ。非常に大きな技術系の企業というのがスカンジナビアにはない、というのが大きな要因だと思います。ですから、私どものあるものに対して、日本は補完をして下さることが出来ると思うんです。こうした北欧の国々においてはこの分野の産業の規模も小さいですし、研究開発にさけるお金もその可能性もやはり小さくなっています。ですから今日、日本で手に入るようなソリューションにたどり着くまでの道のりは必ずしもスカンジナビアの企業にとっては容易なものではないです。日本とヨーロッパの違いということになりますと、日本ではすでにUDを主導する市場があるということですね。またそうした市場に対する需要もあると思うんです。これは非常に大きな要素です。IAUDについては、130社以上の会社がUDの戦略を使ってUDの製品をつくってらっしゃいます。そしてそれを買われるお客様が実際にいらっしゃるわけです。スカンジナビアにおきましては、若干状況が異なります。こういうソリューションがあるという事に対して、注目はしています。しかし、国の法制や政府のイニシアチブが非常に大切と考え、公的機関との協力でこういった運動が進められています。UDという意味では公的な交通機関や公共のスペースや建築物、そのほかには政府主導のプロジェクトであれば、いくらか進んでいっていると思います。けれども、民間企業や産業界におけるUDによるソリューションの発展という点ではまだ大きな遅れをとっています。

ノルウェーなど北欧の国々においてはご存知のように、社会保障システムが非常に充実しています。スカンジナビアの国であれば、どこでもそうであると思います。例えば国が老人ホームにいたるところまで全て面倒を見てくれるシステムという事になっています。ただ、この政策はこれから変わらざるを得ないと思います。なぜかと申しますと、今仕事をしている人達、そして引退した人たちの間にこうしたサービスに対して支払う金額に将来的にはギャップが生じるからです。

国としてはより長く引退後の人生を自立した形で在宅で過ごして欲しいのです。老人ホームで介護し続けるというのは非常に高くつき、現在大きなプレッシャーが国にかかってきています。高齢者にはいろいろな障がいを抱えていてもいなくても、ご自宅で質の高い人生を送って頂きたけるような、何かシステムや新しいサービスが必要という事になります。それをする為に日本の新しい技術、そしてソリューションというのが必要になると思います。



―2つ目の質問です。UDに関して、アジア地域における日本の役割はどうあるべきだと感じていますか?


写真:オンニ・エウクハウグ氏エウクハウグ:私はアジアについては専門家というわけではないですが、最近香港に行きました。日本にも数回お邪魔したことがあり、今回で4回目になりますね。そんな中、日本は2つの大きな課題に直面していらっしゃると気づきました。人口の高齢化と持続可能な成長をどうやって続けていくかという事ですね。今まで見せてこられた技術の進歩、そして革新を考えますと、今から何年もの間、同じように進歩をとげていく事も可能だと思っております。特には今後、人中心のアプローチをそのままとり続けていかれればの話ですね。それは発展途上にもあると思うんです。どのような事であっても例えば地方色、もしくは地方独特の文化というのがありますので、自分の持っている技術的な解決策について地方色、地方文化というものを勘案した上で、変えていかなければならないと思います。

将来において協力する事、オープンソースでやるという事、ネットワーキングしていくという事、この方がより多くの利益をもたらすと思うんです。ですから、国境を越えて協力する、そして会社と会社の垣根を越えて協業する、すなわち、コラボするということがカギとなりえるという事です。



―東日本大震災を機に、日本やアジアに住む方々の安全・安心に対する意識が大きく変わりました。「今後起こりうる自然災害から安全に命を守る」「震災後に取り組むべき安心した日常生活の回復」は、日本にとって切実な課題です。こうした「命を守る」「安心した日常生活の回復」という観点とサスティナブルな社会実現へ向け、どのように取り組んでいくべきだとお考えでしょうか?


エウクハウグ:まず、最初に申し上げたいのは、西洋諸国、わが国においてもですね、このような災害を日本が乗り越えてこられたそのやり方については、非常に大きな感銘をうけております。人々が非常に秩序だって取り組まれたという事、そして政府も秩序を持って対応されたという事で、これについては、非常に感銘を受けていると申し上げたいと思います。

しかしながら、多くの教訓を学ばれたのではないでしょうか。どのような災害であっても、持続の可能性や安全保障への対応のやり方は重大な事です。今回この災害では、結果として非常に苦しいやり方で教訓を得られたのだと思います。こういう体験を通して、特定のソリューションやシステムが災害時には必ずしも安全ではないという事が分かったりするわけです。本日のご講演の方も、最悪のシナリオを想定しておくこと、これが重要なんだとおっしゃっておられました。ですから将来のソリューションを考えるにあたりましては、人々の多様性、あらゆるものの多様性について勘案する事、そして、環境や持続の可能性について考えていく事、こういった事を自問自答していく事が必要になると思います。

災害というのはなくならないものです。ですから、私たちがどのように、災害に対応していくのかそれが重要になってくると思います。災害後の復興については、政治的な色合いが強くなってくると思いますけども、支援をどのようにしていくのか、そしてどのような決意を持って望むのか、壊れてしまった建物の建て直しの為にあるいは再興のためにどのように資金繰りをしていくのか、これは政治的な問題になってくるのではないでしょうか。

もう一つ付け加えておきますと、例えば、新しい建物を作る時には、その地域における人口動態の変化というのを考えつつ計画をしていくべきだと思います。地域の特性に合わせた建物を建てなければならないという事です。国連のジュネーブ本部では、災害、緊急事態の時のソリューションというのは、必ずしもうまくいっていない。なぜかというと、人中心のアプローチをとっておらず、またUDに則したものでもなかったからです。



―あなたの視点には大変興味深いものがあります。とても個人的な質問ですが、あなたがユニヴァーサルデザインを2005年に始められてから7年間経過したそうですが、それ以前、あなたの専門分野は何だったのでしょうか。


エイクハウグ:私は、2005年まで企業において仕事をしておりました。まず、最初はユニリーバに勤めまして、製品の開発マーケティングに携わって参りました。同時に常にデザインに関わる仕事もしてきました。

デザインというのは、企業にとって非常に戦略的に大切で、革新するという意味でも重要なものだというのは、身を持って知って参りました。消費者製品、照明、家具といった様々な分野で、常にデザインに関わってきた理由はそこにあります。その後、ノルウェーのデザイン協議会で仕事もしました。このときはまだ企業で働いていましたので、かなり長期に渡って、両方の仕事に携わっていたのですが、この特別プログラムが立ち上がったのも、ちょうどそのような時でした。私がこの役目を拝命したのは、企業で、革新やデザインに関わってきたからだと思っています。



―大変すばらしいですね。今後さらに日本におけるUD活動に期待されることはありますか?


写真:オンニ・エウクハウグ氏エイクハウグ:一般的に申し上げると、今日本の方々が実用的なソリューションにどのように対峙していらっしゃるのか、こういった点についてインスピレーションを得る為に来ているといって良いと思います。
専門家の方々、日本の会社の方々とネットワーキングをして、持ってらっしゃる知識を私どもに移転していただくというのもございますし、考え方の意見交換をして、自分の知識をアップデートするという意味もあります。日本の市場でどんな変化がおきているのか?ということを学びにきているわけです。
日本はこの分野でのリーダーシップ、旗振り役をされていると思います。ネットワーキングをしたり、そして意見交換をするという意味では非常に良い機会になっています。日本の進歩から私たちが学べる事は非常に多いわけです。また自身の講演の時には、日本を例として話をする事も多くございます。例えば、当方で開催しました会議におきましてトヨタ、パナソニックの方、そしてIAUDの運営委員会、実行委員会の方々、川原さん(IAUD専務理事)にもお話を頂いた事もありますし、それから、七隈線のデザインをしてこられた定村俊満氏を招聘して来ていただいた事もあります。こうした事は続けていきたいと思っております。

スカンジナビアには素晴らしい技術を持ったデザイナーがおりますので、日本の技術を使いまして、スカンジナビアのデザインと融合されれば非常にすばらしい製品になると確信しておりますし、またこれは私の夢でもあります。


―ありがとうございました。



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