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実社会に役立つUDの普及を目指して~インド初のUD国際会議UDAD2015開催報告

2015.07.09掲載

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DJ デザインアカデミーのシンガナパリ・バララム教授の紹介文

インドで初めてとなるUDに関する国際会議「Universal Design And Development (UDAD)2015」(DJ デザインアカデミー主催)が3月13日と14日にインド南部のコインバトール市で開催されました。 UDAD2015の開催の報告にあたり、DJ デザインアカデミーのシンガナパリ・バララム教授より、紹介文を頂戴しましたので掲載いたします。

写真:UDAD2015 パネルディスカッションの様子

UDAD2015 パネルディスカッションの様子


本来人間は十人十色。左利きからトランスジェンダーまで、体、心、そして性的指向も様々です。また、歳を重ねるにつれて人間の能力は変わります。生きていれば痩せたり、太ったり、妊娠したり、太鼓腹になったり、背中が曲がったり、老いたり、身体と心は常に変化します。また、臓器や五感に機能低下があると能力に差異が生じます。

写真:バララム教授

バララム教授

モダンデザインは、人間を中心に据えて周囲の物理、認識環境を形作る仕事として誕生しました。しかし、今日世界に広まっているデザインのほとんどは、「能力の異なる人々がいる」という現実を無視し、いわゆる「健常者」のみに対応するものとなっています。

現代生活の圧力により、能力の異なる人々の数は世界で着実に増えています。インドのような人口大国ではなおさらです。インドの場合、2014年では高齢者は約 1億2500万人、視覚障 害者は約6300万人、それ以外の能力の異なる人も多数います。こうした莫大な人数のニーズ は世界的な問題であり、もはやデザイナーや建築家が看過できるものではありません。

UDとは、こうした問題を解決して状況を改善し、万人に公平をもたらし、あらゆる違いをそのまま受け入れて人間社会を統合する取り組みです。よく間違われるので敢えて申し上げますが、UDは障害者のためのデザインではありません。

UDとは、多様な人々、つまり「健常」能力を持つ人々のみならず、能力の異なる人々や補助が必要な障害を持つ人々も同じく使うことができ、すべての人々に恩恵が行きわたるインクルーシヴな社会を実現するモノやサーヴィスをデザインし、問題を解決することです。

例えば、視覚障害者が英語を読める点字は障害者向けデザインですが、高齢者、視覚障害者、左利き、右利きを問わず誰でも使える簡単な杖はUDです。 ノーベル賞を受賞した偉大なインドの詩人ラビンドラナート・タゴールはいみじくも次のように言っています。「大切なのは違いを一掃することではなく、どのように違いをそのまま受け入れて融合するかである」。 インドのデザインの現状を見ると、次の3つの重要な課題があることが分かります。

第1に、インドのデザインはかなり初期段階にあること。インドがデザインのパワーとポテンシャルに目覚めたのはごく最近のことです。世界や国内へのデザインの影響という意味でも、デザイナーの輩出数でもインドはかなり遅れています。

第2に、インドは類を見ない多元的国家であるということ。文化、言語、信仰、教育に大差がある膨大な人数に、基本的生活必需品を民主的に提供する中で、「発展」という重圧に立ち向かいつつ複数の分野で戦いを強いられています。デザインは、こうしたかなり複雑な社会政治的状況の中で機能しなければなりません。

写真:学生による UD プロジェクトのパネル展示

学生によるUDプロジェクトのパネル展示

第3に、世界第2の人口大国、かつ障害者や恵まれない人が最も多いインドでは、UDはまだ雲の上のものであるということ。今すぐにも国内の建築家やデザイナー、デザインを学ぶ学生を広く啓蒙する必要に迫られています。インドでUDの正規課程があるデザインスクールや建築学部は、DJ デザインアカデミーのみです。

インドは世界有数の豊かな名所旧跡に恵まれた国ですが、高齢者や身体の不自由な人は 名所旧跡には一切行けません。学校、商店、公園、劇場、病院などほとんどのパブリックスペースも同じです。住宅に関してはなおさらです。文化が深く根づいている広大な国インドのデザイナーや建築家、プランナー、行政は、人間開発のこうした側面を完全に見落としていました。こうした事情から、発展途上国の例に漏れず、UDについて啓蒙することがインドの差し迫った問題です。上記の第2の問題はUDとの関連性です。他の多くの「多数派世界」、つまり発展途上諸国と同じく、豊かな先進諸国に適用されるUDの原則は、物理的、経済的、社会文化的背景が全く異なるインドでは通用しません。例えば、あらゆる活動がでこぼこの地面で行われる貧しい地方の家庭で、車椅子は役に立ちません。こうした側面に気づいて憂慮したインドのデザイナーや思想家の一団が、2011年にインド・UD原則(UDIP)をまとめました。

しかし、それだけでは足りないでしょう。なぜならば上記に挙げた第3の重要な問題であるUDの総合的見方があるからです。本物の「実社会に役立つUD」(UDFRW)は、物理的アクセス、生物学的機能低下や加齢、異常に対応することをはるかに超えるものです。

写真:講演を熱心に聞き入る参加者

講演を熱心に聞き入る参加者

これまで世界で開催されたデザインフォーラムでは、この問題は一切扱われてきませんでした。現在のところ、UDの定義は、物理的アクセスと人間の生物学的不自由さのみに限定されています。

これは誤りであり正さなければなりません。なぜならば、開発の真の意味は、工業の発展だけでなく、経済、社会、政治、文化の発展も組み入れた人間開発だからです。

多くの「開発途上」国の例に漏れず、インド国民は、カースト制度による差別、飢え、貧困、宗教的憎悪、読み書き能力の不足、病気といった深刻な課題に直面しています。

こうした課題は、格差によるものであり、身体的不自由さを上回る重大な課題です。単に生物学的にインクルーシヴであっても、往々にして過酷さという点ではひけをとらないこうした問題を考えなければ意味がないでしょう。

UDは人道主義の問題であるだけでなく、人口の多い貧しい国でまだ認識されていない大きなビジネスチャンスでもあります。なぜならば、UDによって消費者層が10~ 12%も増えるからです。

豊かな国と比べて、複雑かつ豊かな国とは異なる上記の問題に簡単な解決策はありませんが、今こそ解決策が生まれるような方向で思索を開始しなければなりません。こうした背景を踏まえ、DJデザインアカデミーは、ブリティッシュ・カウンシルと提携して「Universal Design And Development 2015」と題する会議を2015年3月13日と14日の2日間にわたってコインバトール市で開催しました。

インドでUDの国際会議が開催されたのは今回が初めてです。会議では最終的に、「インド・UD協定」がまとめられ、インドの国内外に配布されました。



※UDAD2015に関する報告及び協定はグローバルサイトをご覧ください。

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