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IAUDアウォード2014 審査講評

2014.11.12掲載

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審査観点

主な審査基準は、「ユニヴァーサルデザイン(UD)の理念が提示されているか、またそれを達成するための優れた活動が提案または実施されているか」です。UD理念の提示や具体的なアイデアの提案、そして活動の実践等を踏まえて、総合的に審査・評価しました。また、提出された資料も審査の対象として重視しました。
なお、審査観点は以下のとおりです。

  1. サステイナブルとユニヴァーサル~持続可能な共生社会創造のための理念と実践
  2. 多様性と包摂性~伝統、文化、生活様式、そして人間の多様性を理解し、少数を排除せず、積極的に包含することで、質的に豊かで幸福な暮らしを実現する
  3. 安全・安心な社会~人権を守り人間性を尊重した社会の仕組み、制度、モラルの構築
  4. 自発的、かつ持続的な対話~企業・行政・研究機関・NPO、そして生活者間の継続的な交流、及び関係の構築
  5. 世代を超えた知恵と技の継承~ユニヴァーサルデザインの普及啓発により次世代を担う人材を育成する



IAUDアウォード2014審査委員会

審査委員長:ロジャー・コールマン(英国王立芸術大学院名誉教授)
副委員長:益田文和(東京造形大学教授)
審査委員:フランセスク・アラガイ(スペイン デザインフォーオール財団代表)
同:ヴァレリー・フレッチャー(米国人間中心デザイン研究所所長)
同:荒井利春(金沢美術工芸大学名誉教授)
同:川原啓嗣(名古屋学芸大学教授/IAUD 専務理事)



IAUDアウォード2014審査委員長からのメッセージ

IAUDアウォード2014審査委員長/英国王立芸術大学院名誉教授
ロジャー・コールマン


審査委員長のコールマン氏

このたび、再びIAUDアウォード審査委員会委員長として、ユニヴァーサルデザイン(UD)の新しい方向性を示す素晴らしい取り組みや感動的な製品の審査をする機会に恵まれました。

ここ数年、UDに対する理解が深まるとともにデザイン実務の本流へのUDの理念の組み入れに大きな前進が見られました。これは特に日本で顕著で、多くの企業や地方自治体がIAUDの旗の下に結集、協力し、UD社会の実現という目標に向かって大きく前進しています。

IAUD評議員会の創立者の一人であり顧問でもある戸田氏が、福岡で開催された前回会議で行った忘れられない講演で述べられたように、UDは「障害の有無にかかわらずすべての人のために安全で安心な環境を創出することを目指す社会を実現すること」です。この言葉は、13年前のIAUD創立時に寬仁親王殿下もこのようなことを意図され、思い描かれていたのだということを思い出させてくれます。

日本では、UDはゆうに10年の歴史を超え、自信と力をつけ、活動にも一段と変化が見られており、他国に先駆け間違いなく支流から主流の流れとなっています。そして、目指すゴールの幅を広げ、当初の想定よりもはるかに広い分野に対する応用が既に始まっているのです。

2011年3月に発生した壊滅的な東日本大震災と津波に対し、デザイン界に創意に富んだ反応が生まれ、UDに対する理解は「障壁を取り除き、開かれた社会を実現する」という目標を超えて広がりました。最大の強みであるデザインの過程において、できる限り幅広いユーザーと関わることを基本的価値観とするUDは、極めて幅広い社会の課題や問題に対する革新的かつ効果的な解決手法と見られることが増えています。

今年応募のあったIAUDアウォードのいくつかの優秀作品の例に見られるように、この広い理解は日本の大手企業の経営理念、デザインに対する取り組み、ブランド戦略にますます根づいています。

それはこの「第5回国際ユニヴァーサルデザイン会議2014 in 福島&東京」の目指す目標を支持するものであり、アイデアと知識の共有、そしてデザインとデザイナーの社会的責任に私たちの意識を集中させるものです。活気に満ちたやりがいのあるディスカッションが待っています。

海外からの参加者を代表して、「第5回国際ユニヴァーサルデザイン会議2014 in 福島&東京」にご出席の皆様に心から歓迎の意を表します。旧交を温め、新しい出会い、そしてご一緒に過ごす素晴らしい時間を楽しみにしております。


IAUDアウォード受賞の講評はこちら



IAUDアウォード2014 大賞

2014年の大賞は、長年にわたってユニヴァーサルデザインに力を注ぎ、事業戦略、デザイン、消費者への提案に完全に根付かせている3社が共同受賞しました。三社のアプローチはそれぞれ異なりますが、比較的短い間にユニヴァーサルデザインが日本で並はずれた成熟度に達したことを示しています。



公共空間部門
イオングループの施設づくりユニヴァーサルデザインの取り組み
イオンリテール株式会社

イオングループは20年以上にわたり、あらゆる年齢と能力の顧客のショッピング体験を向上させるために、ユニヴァーサルデザインを取り入れた小売り施設を創出してきました。これは、顧客によく気を配り、顧客の意見を求め、広範囲にわたるデザインとサーヴィスの改善で答えることによって成し遂げられています。このプロセスは、バリアフリーの取り組みによってイオン店舗へのアクセシビリティを改善することから始まり、利用しやすさ、顧客との相談、店舗の地域社会への融合へと進んで行きました。具体的な取り組みには、よく考えられ分散して配置されたトイレ施設、看板・サインの大幅な改善、適切な駐車設備への細心の配慮等があり、すべてがアクセスのしやすさを大いに高めています。最近では、託児所、遊び場、レクリエーションエリア等、健康的な生活スタイルを促し、高齢者や地域社会に重点を置いた設計にも注意が向けられています。

審査員は顧客満足とフィードバックの水準の高さに注目し、イオンの販売店舗が地域のスーパーマーケットとして重要な役割を演じていることから、この成果は特に重要であると感じました。 審査員はまた、地域社会に明確な重点が置かれていること、そしてバリアフリーの取り組みから利用しやすさ、顧客との相談・関与、人口構造の変化と高齢者のニーズの認識に至るまでの一貫した前進に感銘を受け、20年にわたるUDへのコミットメントと実行を模範的であると考えました。


事業戦略部門
UD視点による現場作業性改善
三菱電機株式会社

人口の高齢化と、その生産労働力への影響に対応して、三菱電機は労働者の心身への不合理な負荷をなくすことを目指す広範な改善を行いました。これは、ユニヴァーサルデザインのアプローチを職場と職務の設計に採用して、生産タスクを実行・理解しやすくすることで達成されました。その結果、三菱電機はより高い年齢の、幅広い能力の労働者を雇用することができます。

現在、職場の設計者はユーザー観察と相談を専門とし、問題を特定して改善するための共同設計アプローチを強めています。ユニヴァーサルデザイン手法を用いることで、三菱電機は安全性と労働者の満足度、生産性を高めると同時に、人的ミスを大きく減らしています。工具の性能と使いやすさの向上、正しい姿勢と安全な作業の奨励、ユーザーフレンドリーで魅力的な職場と環境の創造には、特に注意が向けられています。可視性、読みやすさ、理解しやすい操作・マニュアル・手順は特に重視され、製品は組み立てと取扱いがしやすいように設計されています。

職場と職務の設計へのユニヴァーサルデザインの適用は、現代製造業での性能・生産性要求と、高齢化する労働力の現実および障害者の就労意欲とを両立させることから、革新的かつ重要であると、審査員は考えました。また、これらの取り組みが労働者にユニヴァーサルデザインの意義とメリットを意識させ、職場と職務の設計へのユーザー中心のアプローチのメリットを経営陣が享受できたことに感銘を受けました。


事業戦略部門
ユニヴァーサルデザイン定量評価手法の開発および社内認定評価制度の構築
パナソニック株式会社

003年にパナソニックは、全社的なユニヴァーサルデザイン手法に向けて長く実り多い道を歩き始めました。ロン・メイスと同僚が米国で立案した「ユニヴァーサルデザインの7原則」から始めて、全社的品質管理の精神に基づき、パナソニックは、「正しいことを行っているかどうかをどのようにして知るか」「『使いやすさ』をどのように測るか」「成果をどのように測るか」など、いくつかの重要な問いを立て、それに体系的に答える試みを開始したのです。

目標は、あらゆる年齢と能力のユーザーの生活の質を高めることであり、結果として得られたのは、製品開発の段階から発売後の販促活動に至るまでの進化し統合されたユニヴァーサルデザインのプロセスです。重要な点は、広範な利用者相談・関与による「検証」、徹底的な調査と人間工学手法による広範なデータ収集に基づく、使いやすさと中核的要因の「数値化」、約束通りの製品とするための開発中・開発後の「評価」、そして消費者がUD製品のメリットをよりよく理解し、期待を高めるために行うUDの「プロモーション」です。

審査員は、このプロセスと認定評価制度の徹底性、ユニヴァーサルデザインに対する同社の長期的なコミットメント、この手法がパナソニック製品の設計、開発、マーケティングにおいて中心的な位置を占めていることに、特に感銘を受けました。また、UD原則が会社の製品全体にわたって具体化されていること、IAUDアウォードへの毎年の応募の質の高さが、この取り組みが成功していることの証拠であると考えます。





IAUDアウォード2014 金賞


未来世代部門
特別支援スマホアプリ 特別な支援を必要とする子どもたちの生活と学習をサポート
富士通株式会社/富士通デザイン株式会社/国立大学法人香川大学 教育学部

富士通はこのスマートフォンアプリを香川大学教育学部坂井研究室と共同で開発しました。開発の目標は、コミュニケーションに困難があり、言語の発達が遅れて、読み書きと計算に問題のある子供たちのニーズに答えることでした。ICTは障害者の自立と社会参加に大きな役割を果たしますが、とりわけICTを利用した生活・学習支援アプリケーションの開発と普及によって、富士通は誰でも参加できるICT社会をもたらすことにコミットしています。

このデザインは、広範な利用者、とりわけ子供たちの調査と協力に基づいて行われ、香川大学教育学部に付属する特別支援学校・学級で観察し試験することによって検証されました。その結果、それまで苦労していた子供たちの文章能力が向上し、広範な感情や気持ちを表現する能力が高まりました。重要なことですが、この感情表現支援ツールは、特別支援学級だけでなく、普通教育でも役立つことがわかりました。

審査員は、しっかりと焦点を合わせた研究、産学の研究者の緊密な連携、最終製品の効果に感銘を受けました。これはユニヴァーサルデザインというよりも支援技術の成果ではありますが、将来の主力製品への応用の可能性を特に期待しています。


医療福祉部門
点滴スタンド『ディーボ』
株式会社岡村製作所

病院等の医療機関での観察と看護師へのインタビューにより、岡村製作所のデザイナーたちは看護師と患者の両方に使いやすい点滴スタンドへの重要な見識を得て、看護師にとって使いやすいデザインは多くの場合患者に安全と安心感をもたらすことを確認しました。その結果、看護師と患者両方にとっての使いやすさが、新しい点滴スタンド「ディーボ」のデザインの中心に据えられ、これまでの点滴スタンドにはなかった看護師と患者に優しい機能がいくつも取り入れられています。

ほこりがたまりやすい溝やくぼみがなく、ポールの表面は汚れを防ぐ特別のコーティングがなされています。清潔、安定性、使いやすさ、優しい外観が優先され、外来患者に安心感を与えます。このスタンドはスタッフが調整しやすく、患者の注意がメカニズムからそらされるので、意図しない高さの変化が避けられます。輸液用チューブの管理には細心の注意がはらわれ、手術から回復中の患者のための適切なハンドルがついています。

審査員は、利用者に優しい細部設計と外観の総合、製品の背後にある膨大なユーザー調査と観察、スタッフと患者両方の使いやすさを高める特徴の統合に感銘を受けました。


非常時配慮デザイン部門
非常時に電源としても使用できるハイブリッド電源掃除機
パナソニック株式会社

掃除機のプラグをコンセントに挿したり抜いたりするのが面倒だとユーザーが思っていることを明らかにした調査から、パナソニックの製品開発者は、電源に射し込んでもコードレスとしても使えるハイブリッド掃除機の可能性を見てとりました。これは、革新的な高効率バッテリーと、小型軽量モーターを組み入れることで実現しました。パワフルで効率的、かつ持ち運びしやすい製品は、その他の革新的な特徴と共に、完璧な掃除機のソリューションであり、コンセントにたびたびプラグを抜き差しする必要がありません。

バッテリーは掃除機に入れたままでも、バッテリーパックを取り外してでも充電できます。そのため、このバッテリーにはUSBポートがあり、非常用電源としても使用できます。バッテリー容量約100,000mWhは、60時間の電話通話に十分で、緊急時や長時間の停電でも安心です。

審査員は、強力な性能を持ちながら小型で持ち運びやすい製品に、とりわけこの非常に革新的な設計がユーザー調査とパナソニックのユニヴァーサルデザイン手法に根差していることに感銘を受けました。最近のバッテリー技術の発展によって実現した機能性は、緊急電源としての利用を可能にしており、大きな利点であると考えました。


ソーシャルデザイン部門
みんなの使いやすさラボ(略称 みんラボ:高齢者による使いやすさ検証センター)
筑波大学 みんなの使いやすさラボ(みんラボ)

筑波大学は、加齢と使いやすさへの行動研究アプローチを採用し、JST-RISTEX(高齢社会プロジェクト)の助成金を得て2011年10月に「みんラボ」を設置しました。「みんラボ」は、高齢化社会の中で製品とサービスの品質を向上させるために高齢ユーザーの参照グループ構築に着目するという点で、1986年にバーナード・アイザックス教授が英国バーミンガム大学で始めた1,000人の高齢者への取組みとも共通性が見られます。

当初は「高齢社会のために,いかに使いやすさを実証し,使いやすいモノづくりを実現するか」に重点が置かれていましたが、その後、メーカーや研究者と協力できる参照・専門家コミュニティへと拡大されました。登録した参加協力者のデータベースは増え続け、個人プロフィール、所有・使用された品目の詳細、ユーザー反応データ、その他筑波大学の認知工学、社会文化的学習心理学、ヒューマンインタフェイス研究等における使いやすさの試験研究に関係する情報等、200以上の項目にわたっています。

審査員は、この取り組みが加齢に関する研究と使いやすさ試験研究において、高齢者を研究対象として扱うのではなく、パートナーとして積極的に参加を得たことを称賛しました。審査員は、筑波に蓄積されてゆくデータベースが、このような要因の、そして加齢に伴う能力の変化についての重要な長期的研究の可能性を開くと考えました。


住宅設備部門
トイレブース「ウェイブレット」(アークスライド方式扉の研究開発とその応用展開)
株式会社岡村製作所

スペースが限られているため、トイレの大半はドアが内側に開きます。これはユーザーにとって不便なうえ、大きなデメリットがあります。引き戸や外開きのドアには多くのスペースが必要なため、現実的ではありません。この問題を解決するため、岡村製作所のデザイナーたちは、利用者の体のまわりを回転し、出入りの動線を妨げない、革新的な曲面ドアを開発しました。ドアを閉めると、曲面ドアはトイレの空間を広く快適にします。

<pトイレへのアクセスを改善することで、このアーチ型スライドドアシステムは様々な年齢と能力の人々に役立ち、トイレ施設設計の柔軟性を拡大し、また和式トイレの洋式トイレへの改造費用を節約できます。緊急開放機能は、公共の建物での利用に特に適しています。

審査員は、岡村製作所の革新的かつ利用者中心のアプローチと、トイレ以外での多様な応用の可能性が特殊ではなくユニヴァーサルなソリューションとしていることを高く評価しました。事故防止や操作音など、細部への注意も称賛されました。


プロダクトデザイン部門
The シャワー
パナソニック株式会社

「Theシャワー」は、伝統的な浴槽よりもシャワーを好む人々のために、体を温める方法と入浴への新しいアプローチを組み合わせたパナソニックの取り組みです。若年成人と40~60歳の人々の間で根付いている、とりわけ夏は入浴にシャワーだけを使う傾向からアイデアを得て、パナソニックは1996年以来製造してきた座るタイプのシャワーを見直しました。その結果生まれた「Theシャワー」は、入浴の難しい人や忙しい人のために、立ってでも座ってでも使えるシャワーと、気持ちがよく使いやすい入浴を1つにしたユニヴァーサルデザインの製品です。お湯を広い範囲に分散させる構造体をもつ「Theシャワー」は、きめ細かなお湯の散布で体全体を包み込み、これまでは浴槽だけに可能だった体を温める効果を実現しました。

審査員は、パナソニックの製品開発者が最近の傾向データを基にして、これまで成功してきた、しかし基本的に「介助」機器であったものを再考して、真にユニヴァーサルで包摂的なデザインを実現したことに、特に感銘を受けました。注意深く適用された人間工学的デザインと詳細なエンジニアリングが相まって、「Theシャワー」をまったく現代的な製品にしています。





IAUDアウォード2014 銀賞


公共空間部門
成田国際空港デジタルサイネージ 検索端末
成田国際空港株式会社/三菱電機株式会社

大きな交通ハブである成田国際空港には、非常に広範な年齢と能力の人々が世界中から集まります。明確な標識とアクセスしやすい情報は、旅行者の理解と建物内の移動を助け、目的地への人々の流れをスムーズにするために欠かせません。成田国際空港と三菱電機は協力して、ユニヴァーサルデザイン原則に基づく適切な情報システムを構築しました。第1と第2ターミナルに設置された11面のタッチスクリーンガイドは見つけやすく、現在、日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語で利用できます。

審査員は、直感的なユーザーインターフェース、位置、スクリーンの高さとアクセスのしやすさ、フォントと色の選択を称賛しましたが、ユーザーテストの詳細があれば、さらによかったと思います。


公共空間部門
「AN EXPANDING HORIZON – GARDENS FOR EVERYONE」(地平を広げよう―みんなの庭)
DIRTWORKS LANDSCAPE ARCHITECTURE, PC

エリザベスとノナ・エヴァンズの元気回復庭園(Restorative Garden)は、植物が生活にもたらす力をあらゆる年齢、背景、能力の人々が享受できるように助けるというクリーブランド植物園の目標を反映しています。多様な植物の中での静かな休息、社交、積極的な活動の場所となっており、能力に関わらず利用できるように特別に設計されています。これは、様々な訪問者との話し合いや協力によって実現され、植物は園芸療法に重点を置いて選ばれています。

設計の重点は主として「特別の」人々に置かれているものの、美しく静かで安らかな庭園の多くの特徴がデザイン・フォー・オールの要素を持ち、特別の人々のニーズを、ユニヴァーサルに魅力的なセッティングの中に思慮深く統合した例であると、審査員は感じました。


交通部門
「Improvement Technique for Universal Design of Urban Railway Station」(都市鉄道駅のユニヴァーサルデザイン改善手法)
KOREA RAILROAD Corp. (韓国鉄道公社)

韓国鉄道公社は、既存駅の改装・改善と新駅建設の両方でユニヴァーサルデザインを実施する確実な手法を開発しました。4段階のプログラムを中心とする手法は、実態の調査・分析から始まり、UDガイドラインの制定、実施、検証へと進みます。ユニヴァーサルデザインは、交通システムの設計開発への全体的なアプローチの一環として、安全性強化・教育と同調して進められます。

審査員は韓国鉄道公社のコミットメントと統合的アプローチに、またユニヴァーサルデザインの中核的要素としての安全に焦点をあてていることに感銘を受けましたが、世界の先例から学んだこと、実施スケジュール、成功基準についてさらに詳細な説明があればもっとよかったと思います。


コミュニケーションデザイン部門
ゲームで学べる手話辞典
ソフトバンクモバイル株式会社

「ゲームで学べる手話辞典」は、ソフトバンクモバイル株式会社が開発したスマートフォン用学習アプリです。手話通訳者の体の動きを捉えて、360度3Dアニメーションで直感的かつ正確に手話を学ぶ楽しみを提供します。これは手話使用者だけでなく、手話に関心のある人、日常生活で聴覚障害者と交流する機会のある人による利用も視野に入れて開発されたアプリです。

審査員は、東京都聴覚障害者連盟が推薦しているように、「ライブ」で捉えた熟練手話使用者の動きをアニメーションの基礎とし、手話を学びたい人々を励まし引きつけるゲームの利用を称賛しました。


医療福祉部門
離床アシストベッド『リショーネ』
パナソニック株式会社

日本では日常生活で介助を必要とする高齢者の数が増え続けています。これを背景に、また介護と支援での自立に重点をおいて、パナソニックはベッドから車いすへの移動を容易にするベッド「リショーネ」を開発しました。「リショーネ」の一部は分離して電動リクライニング車椅子になるので、介護者の体への負担なくベッドから車いすに移動できます。介護者一人の介助によってベッドから車いすへと簡単かつ安全に移動することもできます。

審査員は、開発と試験へのユーザーの関与が特に重視され、安全と使いやすさに細心の注意が払われた結果、介護者の体への負担が従来の三分の一へと軽減されたことを称賛しました。


住宅設備部門
アラウーノ(アームレスト付き)
パナソニック株式会社

高齢者は、適切な位置にある肘掛の助けなしに、特にトイレで座ったり立ったりするのが難しいものです。パナソニックデザインの革新的なトイレ「アラウーノ」は、長く幅広いひじ掛けを、付け加えるのではなく製品と一体化することで、これに答えました。このひじ掛けの導入によって、トイレで座ったり立ったりする時のユーザーの脚と腰への負担が軽減されました。他の特徴や、トイレを清潔に保ち匂いも防ぐ素材の選択によって、日常の掃除も素早く簡単にできます。

審査員は、「アラウーノ」を細部への細心の注意とユニヴァーサルデザインの徹底的な理解のよい見本であるとしています。


プロダクトデザイン部門
蒸気レスIHジャー炊飯器
三菱電機ホーム機器株式会社 家電製品技術部

三菱電機ホーム機器株式会社は、ユニヴァーサルデザイン原則に従い、ユーザーとの相談に重点をおいて、製品を継続的に改善しています。そのプロセスの好例が、炊飯器による子供の火傷の全国統計に対応して2009年に導入された「蒸気レス炊飯器」です。2011年と2012年には安全特性がさらに加えられ、2014年版は、音声案内、大型バックライトLCDスクリーン、UDフォント等、使いやすさを増す機能を取り入れました。

審査員は、安全性と使いやすさの組み合わせに、ユニヴァーサルデザイン実現の優れた例を見て、UD原則の適用による三菱電機の継続的改善へのコミットメントを称賛しました。


ソーシャルデザイン部門
目の不自由な方々向け、お札識別アプリ「言う吉くん」の開発
独立行政法人国立印刷局

視覚障害者からのフィードバックが、紙幣の識別は大きな問題であることを示唆しています。将来の紙幣をもっと視覚障害者に識別しやすくする構想はあるものの、日本では解決策が直ちに必要であることは明らかでした。そこで国立印刷局は無料iPhoneアプリをリリースしました。

「言う吉くん」は内蔵カメラで紙幣を識別し、画像と音でユーザーに紙幣の種類を告げます。このアプリの開発には全国の視覚障害者団体が協力し、開発過程で視覚障害者のニーズと要望が考慮されるようモニタリングと調査が行われました。

審査員は、この取り組みが当面の問題に対処すると同時に、より完全で長期的な解決が検討されていることを称賛しました。





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