多様なユーザーとともに道具や環境の新たな原型を創造する

高齢者や障害のある人、多様な人々が安心して暮らせる社会を実現していくには、高齢者問題とか障害者問題といった対象化する視点からはバランスのとれた創造的な答えを見いだすのは困難となる。それを人間の問題、もしくは私たちの問題としてとらえた時に責任ある創造的な活動が生まれる。人間は誰もが変化し続けていく存在であり、地域には多様な人々が共生しているという事実、そこに向かい合う中から豊かな発想が生まれる。残念なことに、従来のデザインは高齢者や障害のあるユーザーがデザインのプロセスに参加する機会がないままに行われてきていた。したがって、多くのデザイナーはユーザー参加型デザインの創造的なパワーに気がついていない。高齢者や障害のあるユーザーのセンシティビティーとデザイナーのセンシティビティーが融合したときに、従来のデザイン概念を超えた新たなデザインの原型が創出される。
高度に情報化やシステム化が発達した現代社会において、デザイナーに求められるものは「作り手と使い手」といったプリミティブな人間関係の現場から時代の問題に向かい合いフレッシュな創造力を発揮することである。
高齢者や障害のあるユーザー参加による道具の開発、地場産業の育成、企業での開発プロジェクト、公共建築の設計、デザイン教育などを画像で紹介しながら、ユーザー参加型デザインの意味や、その創造力や可能性を確認し、それをいかにしたら日常的なもの社会的なものとしていくことができるか考えたい。