「読む」環境を向上させるタイポグラフィーとは

いま私達の生活は、プリンターやスクリーンから溢れ出てくる膨大な文字情報に囲まれ、外に出れば交通標識や告知板に囲まれています。さらに、激増する海外との交流/交信で「知らない文字」まで含めて、ほとんど意識せずに「読む」ことを強制されているかのようです。当然ながら、表音/表意文字やピクトグラムなどの可読性や視認性を向上し、出版物の無駄を省き、環境の保護や改善にまで繋げることは、文字/文書のデザイン目標として意識されます。しかも、ネットワークの国際化に対応し、今後ますます要求される多言語処理も含めた広義なタイポグラフィーの技術革新は、高度なデジタル化によって促進されています。しかしながら、フォントのデザインや電子ブックのレイアウトには、伝統を育んだ先人の書体制作や造本技術の知識と技巧を基本にした手作業による微妙な調整を加えることによって、さらに経済的で且つ大きな効果が達成できるとも言えます。ユニバーサル・デザインの見地から、この問題に取組むために、これまでに経験した実例を示しながら、検討したいと思います。