世界を救うデザイン

今年5月から約1か月間開催された「世界を変えるデザイン展」は約1か月の間に、約2万人の来場者を記録、いくらかのメディアにも取り上げられ、注目を集めた。
昨今では、国際社会の中で民間企業の事業に社会的側面を重視させるべきだという声が高まっている。国連によって提唱されたGlobal CompactやMDGs、そしてMDGsの目標達成に向けて、民間企業セクターによる低所得者層市場への投資を奨励、促進させるBusiness Call to Action。このような背景の中で、日本の中でも自らの仕事を通して、社会貢献に携わりたいという方々は増えてきた。
「世界を変えるデザイン展」は低所得で暮らす人たちの生活水準の向上、彼らに自尊心に満ちた生活を提供するようにデザインされたプロダクトを展示し、各プロダクトが生まれたストーリ説明が、日本に暮らす私たちに現地の生活を想像させてくれた。
<足踏みポンプ>
International Development Enterprises(IDE)の開発した足踏みポンプは、世界人口の多くが生計手段としている農業の課題を解決している。
バングラデシュにおいても農業は主要産業の一つであるが、乾季の間、灌漑をおこなうことができない農民は農作物を育てることができない。足踏みポンプは、竹など現地で入手できる素材を利用して作られ、電力の通らない農村でも畑に水を供給することができる。12年間でバングラデシュ農家の約150万戸が足踏みポンプを購入、農民の年間収入の増加額は1億5000万ドルと大きな社会的インパクト与えた。
<ePassbook>
同じバングラデシュで、情報通信技術を利用した貧困削減に寄与するプロダクトが日本の九州大学によって研究開発された。それが「ePassbook」である。
バングラデシュでは無担保・低金利での少額融資制度が行われているが、管理を手作業で行っているため不正や計算ミスが絶えない。そこで九州大学は、ICカード式電子通帳を開発。文字が読めない人でも理解できるようにグラフィックデザインが用いられ、太陽光電池だけでなく手動充電にも対応している。
私たちは、これらの世界を変える製品がデザインされる前提条件に着目をしている。その考え方がCause Oriented(社会科代志向)という概念である。Causeとは一般的には大義、課題、要因と訳される。この言葉を中心に添え、サステナブルに貧困層の生きる世界を変えるシステムを構築する為には、これまで先進国で当然とされてきた人々のニーズやウォンツを集積しながら綿密に製品を開発するというMarketing Orientedな手法を中心と捉えるのではなく、あらゆる課題が綿密に重なり合っている事実にまずは理解を示そうと努力し、地に根付いた様々な課題を一番身近に感じている“現地の人々”を物作りの中心に添え、彼らがもっている発想を引き出していくことが先進国で活動しているデザイナーやエンジニアが一番社会的な効果を発揮でき、本質的な問題解決の連鎖を生み出すきっかけになると考える。