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王立芸術大学院ヘレンハムリン研究所教授 : 英国

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ユニヴァーサルデザインは、障害者のためのデザインが出発点であったが、長年にわたり、デザインのみならず、意識啓発活動や法律制定への働きかけを目的とするようになってきた。25年前になるが、多発性硬化症を患う友人にキッチンのデザインを頼まれたことがあった。彼女の要望は車いす用のキッチンではなく、隣人がうらやむようなキッチンをということであった。そしてそのメッセージを広めることが、私の目指す重要な役割となった。


当初ユニヴァーサルデザインと言えば、アクセシビリティと構築環境に重点が置かれた。しかし時を経てこの重点が、製品やサービスのデザインも含むようにシフトし、この5年間には産業への取り込みが急速に進んできた。守秘義務契約を結んでいるため、自分が関与する仕事を公表したり、それについて話したりすることすらできない仕事があるのは皮肉なことである。


こうした商業上の機密への配慮は、成熟と影響力の表れである。しかし産業がますます熱心にユニヴァーサルデザインを取り込むにつれて、私たちは、今後ユニヴァーサルデザインをいかに発展させるべきかという新たな課題に向き合っている。基調講演では、この議論を投げかけ、将来に向けて私たち自身が定めるべき目標についていくつか考えてみたい。


製品、サービス、環境といったデザインの焦点を超えてどのようにユニヴァーサルデザインを拡大し、さまざまな課題を包含していくのか。ユニヴァーサルデザインの方法やアプローチを他のデザイン領域に伝えて活かすことができるのか。


こうした問題の核心には、社会的な力としてのデザインという考えがある。すなわち、世界をよりよい人間味溢れた場所にする力を持つデザイン、社会的目標を達成する上で産業や商業が重要な役割を果たすことができるような方法でそれを成し遂げるデザインである。



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