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病院の会計待ちのいすに思うこと



2006年12月、ほぼ10年ぶりに都立大塚病院を訪ねた。1990年から96年ごろにかけて父親が3度入院し、通っていたのだった。19時にドクターにアポイントをとっていたので、用事が済んだころにはすっかり病院は静まりかえっていた。ぐるりと見回すと、待合スペースのいすが目に入ってきた。「そうそう…」


1990年に父が最初に入院したとき、都立大塚病院の施設はバリアフリー・UDの視点から語ることがたくさんあり、私は得意げに家族にその解説をしていた。エントランスの誘導音、サイン計画、トイレの洗浄便座。会計前の広い待合スペースには高さや形の異なるいすが並べられていて、自分の身体の状態に合ったいすを選んで座ることができる。


一方、各診療科の中待合や、面会の受付でバッジをもらうシステムなど、昔ながらのものもあったし、思い返せばトイレのジェットタオルもついていなかった。


さて、2007年に私自身が病気をして、3ヵ月にわたり通っていた川崎市立川崎病院は、比較的最近建てられたようだ。中待合は相変わらずあった。外には受付番号を示すディスプレイが置かれているが、ドクターがマイクを使って名前を呼び出している。いよいよ自分が呼ばれるときは、音声だけの案内だ。それでも、トイレに自動水栓やジェットタオルはついているし、全体的にはいろいろと進んでいる感じがした。


会計前の広い待合スペースには、UDが施されたいすが整然と並んでいた。低めの座面、長いす式ではなく、一人ずつひじ掛けで区切られた3から4席分が一体になっている。座面の布の色はピンクで、ひじ掛け部分は手当たりのよい木製だ。座り心地もよく、立ち上がるときにひじ掛けに頼っている人を多く見かけた。しかし、ふと気付くと、体格のよい人が手すりで区切られたいすに身体をもてあまして立っていた。シニアカーを押していた年配の女性はシニアカーの置き場に困り、赤ん坊と子ども連れの祖母と母は荷物の置き場に困っていた。


大塚病院で、多様なデザインのいすが並んでいたことを思い出す。長いすの方がいい場合もあるよなぁ。ユニヴァーサルデザインと個人適応は、いつになっても課題なのだろう。


(文・確定申告する蔵。)

※この文章は、2008年1月30日発行のゆうまぐ[第74号]に掲載されました。

<掲載日:2008年01月30日>