言わずと知れた文明堂のコマーシャルソング。小さなころから、「文明堂のカステラ」はあこがれそのものだった。大人になったら絶対に「三時のおやつは文明堂」にしたいと思っていた。
ヤン坊とマー坊のアニメーションがかわいいコマーシャル。子どもが歌う楽しいメロディを、すべて覚えている。30年近く昔なのに。
田舎から初めて上京し、新宿駅の前でヨドバシカメラを見つけたときの感動はいまだに忘れまい。コマーシャルの歌の通りだ!とはしゃいだ。
これらのコマーシャルはすべて私が小さいころに見聞きしていたものである。何気なく見ていたコマーシャル。でも実は、こんなに頭に、身体に刷り込まれていたのだ。30年近くたった今でも。そう考えると、コマーシャルが人に与える影響の大きさが分かる。
しかし、いつしか私はこのような影響を受けることがなくなった。聴力の低下とともに、テレビからの音声情報が入ってこなくなったからだ。
「2007年度までに対応可能なすべての番組に字幕をつける」という指針を総務省が出した。そのおかげで、現在はほとんどの番組に字幕が付与されるようになった。(NHKで98.2%、民放で65.8%。総務省2005年データ)現在は対象外のニュースやスポーツ番組にも、いずれ字幕がつくようになるだろう。
しかし、コマーシャルには、字幕をつけるという発想そのものがなかった。コマーシャルはその時代を反映するメディアなのに、伝わっていない人がたくさんいるのは、残念なことではないだろうか。
IAUD会員企業の、UDに対する取り組みやUD製品は、世界レベルで素晴らしいと思っている。しかし、どんなに素晴らしい製品でも、伝わってなければ意味がない。
余暇のUDPJでは、テレビ字幕研究の一環として、「CMの字幕大作戦」を企画した。CMの字幕化は、スポンサーにとっては生活者への宣伝効果が高まり、生活者にとってはコマーシャルの内容をより理解して楽しめるというメリットがある。
さまざまな阻害要因はあるが、それらの解決案を提示することでIAUD会員企業が、自社の流すCMに率先して字幕をつけていってくれたらいいなと思っている。
※「カリンとソラの手話な日常」というエッセイを連載中です。ぜひご覧ください。詳しくは以下のページをご覧ください。
筑摩書房ホームページ
http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/index.html
(文・松森 果林)
※この文章は、2007年6月15日発行のゆうまぐ[第61号]に掲載されました。
<掲載日:2007年06月14日>