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そこのあなた、AEDを持ってきてください!



年度末の超多忙な時期に、8時間の上級救命講習を受講した。
朝8時半、総勢25名ほどが消防署に集まり、体育館にてレクチャーが始まった。


メインの講習は、救命手当の実技だ。救命手当とは、傷病者が突然に意識障害、呼吸停止、心肺停止などの状態に陥ったときに行われる応急手当で、心肺蘇生法と止血法のことだ。それにより、救急車が到着するまでの間、命をつなぐことができる。


さて、心肺蘇生法の実技講習だが、フランス人の“レサシアンちゃん”(訓練用マネキン Resusci Anne セーヌ川で入水自殺した美少女!?)相手に、人工呼吸と心臓マッサージを行う。一連の流れは以下の通りである。

傷病者発生→肩をたたいて声をかけ、意識を調べる→【意識がない】→「意識無し!そこの方、救急車を呼んでください」→気道を確保して、「見て、聞いて、感じて」と声に出しながら呼吸を調べる→【呼吸していない】→「呼吸無し!人工呼吸開始!」→人工呼吸用のマスクを使い、ゆっくりと息を2回吹き込む→「循環のサイン確認」といいながら傷病者の様子を観察する→【呼吸も動きもない】→「循環のサイン無し!心臓マッサージ開始!」→心臓マッサージを15回行う→人工呼吸2回と心臓マッサージ 15回を4セット繰り返したら、循環のサインを確認し、救急隊員が到着するまで、繰り返し行う。救急車が到着するまで全国平均で6分というから重労働だ。
一つひとつの動作を機敏に、大きな声で確認しながら行う。実際の場面に遭遇したら、パニックになってしまうかもしれない。大声で一つひとつの確認をするのは、冷静さを取り戻す有効な手段なのだろう。


“レサシアンちゃん”は女性嫌いのようで、なかなか息を受け入れてくれない。私をはじめ、ほとんどの女性は彼女を助けられないだろう。逆に男性は、肺活量の測定さながらに息を吹き込み、“レサシアンちゃん”の肺をパンクさせそうになっている。一度や二度ではコツはつかめそうにない。誰にでもキビシイ“レサシアンちゃん”である。


さて、午前中の講習が終わり、午後はいよいよAEDを使った実習だ。AEDとは心臓の除細動装置のことで、心筋梗塞などで起きる心臓の筋肉がブルブル震える「心室細動」に電気ショックを与えることで正常なリズムに戻すための装置である。救命救急センターで患者がのけぞるアレとは違うということを、今回初めて知った。平成16年7月1日より一般使用が解禁になったのだ。


このAEDの装置は、重さ2〜3キログラムで持ち運び可能、電源を入れれば次々と音声で指示を出してくれる。機種によっては、液晶パネル表示もあり、聴覚障害があっても不自由なく使えそうだ。


コンピューターによって、傷病者の心臓のリズムを自動的に調べ、除細動が必要なら「電気ショックが必要です」と音声が流れ、充電を開始する。充電できたら「患者から離れてください」と音声で指示されるので、少し離れて見守ることになる。


実際に使ってみる。傷病者を見つけたら、意識を調べ、意識がない場合は周りの人に協力を求める。「そこの方、救急車を呼んでください。緑の服の方、AEDをお願いします!」

でも、「AEDをお願いします!」といわれて「はい!」と答えられる人がどれだけいるのだろう。AEDは知っていても、どこに行けば借りられるのか、皆目見当もつかないのではないだろうか。

前述したように平均6分で救急車が到着するとしたら、AEDを探して借りて現場に戻るのに6分かかっていたら意味がない。ましてや、携帯端末で設置場所の検索をしている時間はないのだ。


調べると、役所、地区センター、スポーツセンター、病院、小中学校に置いてあることが期待できるらしい。東京急行電鉄では、2006年6月末までに、東急線主要21駅に設置するという。(残念ながら、私の利用駅はリストには入っていない。)


今後、どんどん設置場所が増えるようだ。民間の設置も、各自治体の助成金制度が整えば、飛躍的に増えていくだろう。


「AEDをお願いします!」といわれて、誰もが「はい!」と答えられる日も遠くないかもしれない。


参考サイト:特定非営利活動法人 AED普及協会
http://www.aedjapan.com/

(文・セーヌ川の少女に口づけを)

※この文章は、2006年4月19日発行のゆうまぐ[第38号]に掲載されました。

<掲載日:2006年04月16日>