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文字が浮遊する世界


本コラムの原稿締切り日が迫ったある日、コラムのネタに困った私は、職場の知人に相談しました。知人は視覚障害者であり、ユニヴァーサルデザインに関して何か身近な話題を提供してくれるだろうと安易に考えたからです。

その時の会話は、次のように始まりました。

私:「今度、UDにまつわるコラムを書くんだけど、何かネタになるような話はない?」
彼:「どれくらいの量を書くの?」
私:「ええと、ざっくりA4で1枚くらい」
彼:「僕にはA4の紙に書かれた文字量の感覚がないんだよね」
私:「そっか、ごめんごめん」

普段からA4の書類を見慣れている多くの人は、A4サイズの紙に書かれた文章の量的な感覚をもっています。しかしながら、視覚障害者の彼はそのような感覚をもっていませんでした。

彼いわく「(電子データの)文字情報について、文字サイズや行数という概念はなく、例えるなら空中に浮遊しながらつながっているもの」なんだそうです。彼の世界観において、文字情報はある決まった範囲(幅や領域)に収まっているものではなかったんですね。

これはほんの一例ですが、私は彼の異なる世界観に触れるたびに、目が見えないということは、単純に目の前にある風景が見えないということとは本質的に違うものだと気づかされることが少なくありません。

(文・ネタ切れ)

※この文章は、2005年11月15日発行のゆうまぐ[第30号]に掲載されました。

<掲載日:2005年11月16日>