UDとの本格的な出会いは、様々な人が利用する社会システムの一つである、ATM(金融機関で利用する現金自動機)の開発に参画したことでした。10年くらい前に、ある金融機関から、視覚障害者の学校の前にある支店に、障害者専用のATMを設置したいとの依頼がありました。コストの関係から標準タイプのATMの改善で対応することになり、「カード入口」などに点字テープを貼付けました。そこの学校の生徒さんに「緑色が目立ち、場がわかりやすい」とのアドバイスをいただき、テープを濃緑色にしましたが、緑のテープをベタベタ貼った奇妙なATMになってしまいました。

次の機種は、障害者のリハビリテーション施設の前にある支店に設置する専用ATMでした。様々な障害のあるお客様に配慮した設計であることが要求され、標準タイプのATMに何らかの工夫を施すことにしました。開発に先んじてお客様にしっかり聞く工程を入れ、視覚障害のお客様のための入力方式として、使用に違和感がなく連想しやすいとのコメントをいただき、電話機の受話器(ハンドセット)の数字キー入力方式を採用しました。しかし、標準仕様/デザインをベースに改良を行ったため、ハンドセットと取手を装置前面に取付けただけの、間に合わせの装置になってしまい、Gマークに応募してみましたが、見事に落選。まさに「とって付けたようなデザイン」との酷評をいただきました。
現機種の開発にあたっては、さらに徹底的にお客様のことをしっかり理解することを最優先に進め、さらに、事業部長とのコミュニケーションを密にし、開発コンセプトの共有、方針の早期決定、予算確保など、デザインに順風が吹くように一貫性のあるアプローチを展開しました。そうすることで、結果的にお客様起点の原点に戻ることができ、提案に説得力を持たせることもできました。この経験は、住民票発行機など行政の電子化(e-JAPAN)に代表される公共機関向けビジネスに大いに貢献しています。
![]() 写真2:数字キー入力方式を採用したハンドセット |
![]() 写真3:誰でも見やすい画面 |
このような活動を通じ、UDがお客様起点のデザインに通じることの確信がもて、現在のUD活動に繋がっていると思っています。ちなみに、現機種は、お客様の多様性への対応を標準にし、美しい表情に仕上げることができました。Gマークの1998年度「医療・福祉部門」金賞をいただきました。
<掲載日:2004年12月15日>