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「ワクワクする楽しいUDを」齋藤 惠治 理事(ソニー)


「UDの眼」で毎回理事企業の皆さんのすばらしい取組みを読むにつけ、ソニーはUDについてあまり自慢できる取組みがないこともあり、自分の番が回ってきたら何を書けばよいのか、ずっと悩みの種でした。

さて、ソニーといえばAV機器やPC、ゲーム機といったコンシューマー向け商品のイメージが強いのですが、放送業務用機器の世界において、非常に大きな地位を占めていることはあまり知られていません。世界中のほとんどの放送局でソニー製のビデオカメラやデジタルVTRが使われ、テレビ番組が制作されています。

かつて私は、こうした放送業務用機器のデザインを担当していました。ユーザーは放送局のカメラマンやビデオエンジニアというその道のプロ、使い勝手に対しては大変厳しい要求を持つ人たちです。細かいツマミひとつの形やスイッチの配置など、細部に至るまで究極的な使いやすさが求められます。

私たちデザイナーも、現場のカメラマンの声を聞き、実際に使われている状況を観察しながら、デザインの作り込みを行ってきました。業務用機器は、「プロの道具」ですので、徹底的にユーザーニーズを検証することが重要です。



写真:ジョージ・ルーカス監督がスターウォーズ・エピソード2の撮影にも使用したソニーのHD24Pシステム「シネアルタ」カムコーダー

それでは、使い勝手だけが良ければそれで良いかというと、そうでもありません。使っている姿の美しさや新しさといった、プロの方々の感性の部分も大変重要で、そのためにもデザイナーの果たす役割は大変重要です。この考え方はUDの開発と全く同じなのではないかと思います。UDの対象が日常生活に欠かせない「道具」であるうちは、不便を解消する、つまりマイナスをゼロに近づけることがミッションです。ユーザーニーズを検証してそれに基づいたデザインを行うことが最大の解決策になります。

一方でUDの対象範囲は今後確実に広がっていきます。私たちIAUDの会員が様々な業種、業界から集まっていることが、そういう流れを表していると思います。これからUDの対象範囲が広がっていくと、コンシューマー向けの製品では、「道具」としての価値だけでなく、「所有する喜び」とか「使う楽しみ」の価値に対する、UDとしてのアプローチが必要になってくるはずです。「道具」としての便利さ、使いやすさの向上に加えて、「使う楽しさ」とか「ワクワク感」を作り出していくUDも必要になってくるのではないかと思います。

ユーザーの方々が、元々それぞれのメーカーに対して抱いていらっしゃる期待があります(我々はそれを約束価値と呼んでいます)。ソニーに期待されている価値を創造することが、我々デザイナーの役割ですので、さらに魅力的な道具を創出できるように、今後とも頑張っていきたいと思います。UDについても、すでにかなり先をいっている皆さんをキャッチアップするだけでなく、これまでと違う切口から「ソニーらしいUD」を作り出すことに挑戦していきたいと思いますので、ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

<掲載日:2004年11月30日>